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真夜中の三佳ちゃん

作者: ぐっちゃん・・・ではなく姉
掲載日:2013/10/26

今は、金曜日、真夜中の1時15分。

そのころ、志田先生こと、志田友広はマイカーで家路に着こうとしていた。

なぜこのような時間に車を走らせていたのかというと、彼の勤めている中学校では、学年末テストが終わったばかりなのだ。そのため、彼は生徒279名分のテスト用紙の採点を、今週の水曜日までに終えなければならなかったのだ。

「帰ったらまた採点をしなくては・・・・」

友広がそうブツブツ言っていた時だった。道路の隅に、背が低く、セーラー服姿の三つ編みの女子がぼうっと立っていた。

彼女は明らかに友広の勤める中学校の生徒ではなかった。だが彼は、車を止めて彼女に話しかけた。

「君。どうしてこんな時間にこんなところにいるのかね。おうちの方が心配しているに違いない・・・・そうだ。おじさんが君の家まで送ってあげよう。」

すると女子は何も言わずに友広の車のドアを開け、車内に乗った。

「ようし。じゃあ、どこまでだい?」

女子は蚊の鳴くような声で言った。

「亜麻町まで・・・」

「へへ、じゃあおじさんの家の近くだな。」

そう言うと、友広は車を再度、走らせた。

しばらくの間、なんともいえない沈黙が走った。しばらくして、友広は彼女に話しかけた。

「名前はなんていうんだい?」

「三佳です・・・」

彼女の名を聞いた瞬間、友広は考えた。

(はて・・・?『三佳』ってどこかで聞いた名前だなあ・・・・)

それから三佳のセーラー服と鞄が泥で汚れているのにも気がついた。友広は気になって聞いてみた。

「なあ、三佳ちゃん。どうしてそんなに服が汚れているの?」

すると、慌てた様子で三佳は応えた。

「ええ、少し転んでしまって・・・・」

「ふうん・・・」

そうしてしばらくして亜麻町に入った。すると三佳が、

「あ、ここで降ろしてください。」

そこは墓場の前だった。

「あ、うん。」

友広は、墓場の前だなんて何だが気味が悪いと思いながらも、車のドアを開け三佳を降ろした。

そしてそのまま、友広は自宅へと車を走らせた。


 次の日。友広はまた中学校へ行き、職員室に入った。

隣の机には、国語担当の星島先生こと、星島みよ子が289名分のテストを採点していた。友広は、彼女に昨日の出来事をそっくりそのまま、話した。だが、その時だった。

「えっ、志田先生。『三佳』ですって!?」

今まで集中していたみよ子が突拍子も無い声で叫んだ。それにつられて、他の教師も友広の顔を見つめ、固まったままだった。しばらくして教師の一人が友広にたずねた。

「あのう、その『三佳』っていう子、セーラー服に三つ編みじゃなかったですか?」

「ああ、そうだったけど・・・?」

さらに職員室内はザワザワ。この騒ぎを亀野校長こと、亀野神吉も聞きつけた。

「君たち、何事かね?」

教師の一人が、神吉に話した。神吉までもが、顔を引きつらせた。そして校長室に走り戻り、自分の趣味の新聞スクラップ切り取りコレクションの一冊を引っ張り出してきた。そして一生懸命に何かを探し始めた。そうして・・・・

「あったぞ、志田先生、もしかして三佳ちゃんってこの子のことじゃないかい?」

神吉はある新聞記事に掲載されている写真を指差した。

「はい、紛れもなくそうです。」

友広はさらっと答えたが、その記事の年月をふと見た瞬間、キィーンと心臓が凍りついた。

なぜなら、彼が昨夜みた三佳と写真の三佳は同一なのに、書かれた記事は『昭和34年』だったのですから!!

「嘘だろ・・・・?今は平成24年だぞ・・・・・?」

さらに驚くのはまだ早い。神吉はその記事を読み始めた。

「彼女は背が低くて気弱なのを理由に学年の皆から度重なる酷いいじめに逢い、苦痛の末先祖の墓の前で手首を切り自殺しました・・・・」

職員室全体が、ゴーストタウンのように静まりかえった。

「ととっととと、という事は志田先生は亡霊を車に乗せたってこと!?」

教師の中でも一番怖がりな野嫌先生こと、野嫌ライオンはガタガタ、ブルブル震えている。

友広は白目のままだった。

(あの子の服が汚れていたのも、いじめっ子に体を蹴られたからだろうか・・・・)

そうしてそのまま、彼は気絶した。

気がつくと、友広は保健室のベッドに寝ていた。保健教師、石野先生こと、石野サツキが友広に話しかけた。

「志田先生ー、やっと起きましたねー。」

友広は周りを見回した。ベッドの周りにたくさんの造花が飾ってある。

「と・・・ここは学校の保健室か?」

「そうですよー。志田先生ったら、職員室の前で気絶したままだったのですからー。」

「え・・・・・?」

時計を見ると午後1時14分。

「確か昨夜、三佳ちゃんを乗せたのも大体こんな時間だったなあ・・・・」

友広がそう呟いた、まさにその時だった。ぴちゃん、ぽちゃん、としずくの音が。

「??????」

サツキと友広は顔を見合わせた。そしてそのしずくの音は次第に大きくなっていく。二人は何か嫌な予感を感じた。

だがしばらくすると、その音は止まった。

「ほ!!」

だが・・・今度はドンドンドンと力強く保健室のドアを叩く音が・・・・

「ひいっ!!」

ついサツキは保健室のドアの鍵を掛けてしまった。だが音の主はドアを突き破り、保健室に入ってきた。

「あ、あ・・・・三佳ちゃん・・・・」

友広は口をあんぐり。

時計を見ると1時15分。ちょうど昨夜、友広が三佳の亡霊を乗せた時刻だった。

だが彼女は友広をちょっと見るとすぐにそっぽを向いた。そしてサツキをギッと睨み、恨めしそうに言った。

「恨んでやる、恨んでやる・・・・・」

「えー、いったい何のことー?知らないわよー。」

それに対してサツキは否定した。

「とぼけるな!!!」

今度は急に口調が変わり、二人をびっくりさせた。

「どどどっどど、どうしよう!!」

友広は誰かを呼ぼうと保健室のドアを開けようとしたが鍵を開けた。が、開かない。

窓の外を見ると、今までクラブをしていた野球部、サッカー部、テニス部の部員、顧問が一人もいなくなっていた。

「み・・・みんな消えた・・・まさか・・・?」

三佳の亡霊はどこからか石油の缶を引っ張り出してきていて、サツキに怒鳴った。

「あの時の事を謝らないと、この石油に火をつけて学校中を燃やしてやる!!お前なんか死んじまえ!!クズ!!」

「だからー!!いったい何のことよー!!」

サツキまでキレ気味に。友広は昨日とは態度の違う三佳に戸惑いながらも二人の間に割り込み、優しく三佳の亡霊に話しかけた。

「三佳ちゃん、『あの時』ってどの時なの?説明してごらん。」

すると三佳は急に冷静な態度をとり、友広に話しかけた。

「今から何年か前、それは昭和34年3月2日。私はいつものようにクラスの皆に酷くいじめられたの。そしてそのいじめのボスが・・・」

言いながら、サツキを指差した。

「えええっ!?」

友広は優しいはずの保健教師が元いじめのリーダーという事が信じられず、それは本当なのかという事を三佳の亡霊に聞いた。

「ええ。彼女の優しい性格というのは仮面に過ぎないわ。ある時、私が当時幼稚園児だった弟を迎えに行ったか帰り、彼女とその子分が私達に石を投げてきたの。そしてサツキが投げた石が弟の目を直撃したの。

医者に診てもらったんだけど医者は『この子は一生目が見えなくなるよ』とはっきり言ったわ。

今は彼は生きてるけど、今でも目は見えないわ。

もう私、我慢できなくなって、あの日の夜中の1時15分。私は遺書を書いたわ。

『私をいじめた皆さんへ

私はもう耐えられません。私は遠い国へ行きます。さようなら  月島三佳』

そうして私は先祖の墓の前で手首を切って自殺したの・・・・。」

友広が振り向くと、サツキはガチガチと歯を鳴らしていた。

「つ・・・月島三佳・・・・」

「思い出した?さあ、どうする。」

「こ、怖えぇ・・・」

友広まで共感するように。しばらくしてサツキは三佳の亡霊に言った。

「じゃ、じゃあ私―。あなたのお墓参りに行くわー。これで十分―!?」

「いいえ」

三佳の亡霊は横に首を振った。そして、言った。

「私をいじめた同級生を集めて、私の墓を参ってちょうだい。」

あまりにも無茶な注文に、友広は三佳の亡霊に話した。

「三佳ちゃん。石野先生も反省しているんだ。だから許してあげても・・・」

「あなたは黙ってて」

「すいません」

しばらく考えたサツキは言った。

「分かったわー。しばらく待ってちょうだいー。」

そう言った時、三佳の亡霊はフッと姿を消した。

「い、今のは・・・・?」

友広は未だ、震えたままだった。

そうして、再度窓の外をみると、クラブをしている生徒、顧問が元通りいた。

「ふうっ」

あれから1ヶ月。友広はあの日の出来事を忘れてしまっていたが、サツキはしっかりと覚えていた。

もちろん、サツキは昔のいじめの子分を引き連れ、墓参りに行った。サツキは心の中で言った。

(月島三佳、もうみんな、お前をいじめる事はない。だからもう、苦しみのない遠い国で優雅に暮らすんだよ。)

これ以来、三佳の亡霊は出なくなったということだった。         

THE END


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