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魔力使いの日常  作者: バロック
第一章 少女と氷と別の世界
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第十八話 世間話?

ほぼ雑談回その2。

 室内のいたるところから、色々な人の騒いでいる声が聞こえてくる。

 あるところからはお酒の飲み比べでもしているらしく、酔っ払っている人達の騒ぐ声。

 別のところからは雑談……というか、そこまで詳しく聞こえているわけではないからちゃんとした内容まではわからないけど、何かに対しての愚痴の言い合い。

 他にも、大なり小なりの違いはあるが室内にいるほとんどの人が騒いでいる中、俺はカウンターの方に座ってそんな様子を眺めていた。

 陽が落ちて外が暗くなった今、俺がいるスライブの店の食堂部分ではとある理由から村の人達による宴会が行われていて、俺はその宴会に巻き込まれていた。

 こうなった理由については、天枷と一緒にシェラさんのところに戻ったところまで遡る。

 俺と天枷が部屋から出てシェラさんのところに戻ると、俺の予想に反してシェラさんは怒っていなかったのだが、その代わりというわけではないが傷の手当をする道具を切らしているという問題が発生していた。

 けど、だからといって、傷の具合を考えると手当てをしないというわけにもいかなかった……というか、天枷とシェラさんが手当てしないというのを許してくれなかったので、急遽、またスライブの店に行くことになった。

 なんでも、シェラさんの話しではスライブの店には自警団や村の人が大きな怪我をした時のために手当てするための道具や薬などが置いてあるとのことだ。

 そんなわけで、俺達はスライブの店に向かったわけなのだが、到着して店の中に入るとスライブはこの村の人と思われる恐らく三十半ばくらいの男性とカウンターで話しをしていて、その話しの内容がウォルフの群れから村を守ったお祝いにここで宴会をしたいからここを使わせてくれというような内容だった。

 それを聞いて、俺がシェラさんにウォルフの群れって朝に村に向かってきてたやつのことかと聞くと、シェラさんは首を横に振り、実は少し前にそれとは別のウォルフの群れが村に入り込もうとしてきたのよ、と言った。

 それがどのタイミングだったのかなんとなく予想がつき、もしかしてウォルフの群れが村に入り込もうとしてきたのってあのカーンって音が鳴った後、シェラさんが俺達と別れた時くらいかと聞くと、シェラさんはそうよと言い今度は頷いた。

 なるほどな。あの時、あの音が聞こえてきた後、シェラさんとケイナの様子が変わったのが少し気になってたんだけど、それが理由か。

 多分、今日みたいな緊急時にはあの音を鳴らして村の人に危険を報せるってことになってるんだろうな。

 と、あの時のことがわかり俺が一人納得していると、話がついたらしくスライブと話していた男性が振り返り、シェラさんに「じゃあなシェラ、また後でな」と、俺と天枷に「坊主と嬢ちゃんがシェラのとこで厄介になってるっていう二人か。お前らもまた後でな」と別々に言って立ち去って行った。

 男性が言ったまた後でとはどういう意味なのか気にはなったが、シェラさんと天枷がスライブのところに行ってしまったので聞くのを諦め、俺もスライブの近くまで移動する。

 それから、俺とシェラさんはスライブに傷の手当をする道具を使わせてほしいということと、そうなった経緯を話し道具を使う許可を得たのだが、その後何故か話しがさっき男性が話してた宴会の話しに変わり、そして、気付いた時には宴会をする理由に関係ない俺と天枷の参加が決定してしまっていた。

 後でってそういうことかと存外すぐに男性の言葉の意味がわかり、あの人の中では俺と天枷も宴会に参加することになってたんだろうなと考えて内心で苦笑しながらスライブに言って手当てする道具を持ってきてもらい、それから手当てしてもらったりなんだりとあって時間が経ち宴会が始まり。

 そして、今に戻ってくるわけだが……それにしても、俺と天枷、それにシェラさんやスライブを抜いても七、八人程度の人数でやる宴会だと思ってたのに、まさかこんなに村の人が宴会に参加してるとはね。

 中だけじゃなくて、外にもまだ人がいるみたいだし、もしかしたら村の住人のほとんどがここに集まってるんじゃないのか?


「おいユウリ、こんなところに一人で何やってんだ?」


 と、俺がぼんやりとそんなことを考えていると不意に背後から声を掛けられ振り返ってみると、最後に見た時と違って昨日見たエプロン姿をしているスライブがカウンターの向こう側に立って怪訝そうな顔で俺のことを見ていた。


「ああ、スライブか。何って、まあ何もしてないというか、ボーっとしてる」

「なんだそりゃ、せっかくの宴会なんだからお前も楽しんだほうがいいぜ?」

「って言われても、この村での知り合いはスライブ達しかいないし、それにほら、見たところ俺と同じくらいの歳の人っていないみたいだからどこかに混ざる気にもなれなくて」


 さすがに歳が一回り近く以上離れてそうな大人達の輪に混ざって一緒に騒ぐのは厳しいものがあるし、……それに、ほとんどが酔っぱらいのあの輪の中には正直入りたくない。


「ああ、言われてみりゃそうだな。なら、トウカと一緒に楽しめばいいんじゃないか……と思ったけど姿が見えないな。トウカはどうしたんだ?」

「天枷なら、さっき水を飲むって言ってここから離れた時にケイナに声をかけられて奥の方に行ったよ。多分、何か話でもしてるんじゃないかと思うけど」

「ふーん、そうなのか。一体何の話しをしてんだろうな。……とまあ、それはともかく、せっかくだしトウカのやつがいない今のうちにお前に聞きたいことがあるんだが」


 うん?聞きたいこと?


「それって、天枷がいる時じゃ駄目なことなのか?」

「いや、駄目ってことはないんだが、ちょっとばかり聞き辛くてな」


 俺の疑問に、スライブはばつの悪そうな顔をしながらそう答えると、少し言い辛そうにしながらその質問をしてきた。


「えっと、なんつーか、俺ってトウカの気に食わないこととか、なんかやっちまったか?」

「…………あーっと、悪い、質問の意味がよくわからないんだけど」

「いやな。トウカと話してる時につねに無表情の冷たい目で見られるから、知らないうちに何かやっちまったんじゃないかと思って」


 あぁ、なるほど、そういうことか。

 すぐに気が付いたとはいえ、俺も最初はあの目をみて怒らせたんじゃないかって勘違いしたし、スライブが勘違いするのもわかるな。


「別に何もやってないと思うぞ。あの天枷の表情とか目は普段からみたいだし、多分、スライブの勘違いだと思う」

「そうか。まあ、ならいいんだが」

「というか、今まで気になってたならそれぐらい天枷本人に聞けばよかったのに」


 と俺が言うと、スライブは頭に手を当てながら苦笑し。


「いやー、俺さ。トウカみたいな大人しいっつーか、クールな感じのやつが苦手でな。だから、さっきも言った通り本人には聞き辛かったんだよ」

「そうなのか?こうやって店を開いてるくらいだし、人付き合いは得意そうだと思ってたんだけど」

「なんか知らないけど、ああいう感じの性格のやつだけは昔から特別苦手なんだよ。それ以外なら特に問題ないんだけどな」

「ふーん」


 まあ、そういうことなら確かに聞き辛いかもな。


「あ、そうだ。俺からも一つ、スライブに聞きたいことがあるんだけどいいかな?」


 ふと、少し気になったことがあったのを思い出して、そうスライブに問い掛けてみる。


「あん?いいけど、ユウリが俺に聞くようなことってーと……もしかして、ケイナについてのことか?」

「え?いや、違うけど」

「じゃあ、まさかとは思うがシェラのことか?」

「それも違う。そもそも、そういうことを聞きたいわけじゃないからな」


 まったく、どうして女の子のことを聞きたいんだと思ったんだよ、スライブは。まるで俺の友達の一人みたいな反応だったぞ。

 なんか、今のを見た感じだと、もしアイツがスライブと会ったら気が合いそうだな。


「なんだ、違うのか。それじゃあ、聞きたいことって一体何なんだ?」

「うんまあ、大したことじゃないんだけど、なんで村の人がこんなにこの宴会に参加してるんだ?」

「あー、もしかして、お前が住んでたのって村じゃなくて町なのか?」

「え?えーっと、うん、そうなるかな」

「なるほど、服装を見た時からそんな気はしてたけど、やっぱそうだったのか。村で暮らしてるやつは普通お前やトウカみたいな珍しい格好なんてしないからな」


 あ、やっぱり、俺と天枷の格好ってこの世界の人から見ると珍しいんだな。となると、この先ほかの村や町に行った時に物珍しそうな目で見られるかもしれないのか……。

 うわ、それはちょっといやだな。


「けどま、それなら不思議に思うのも当然だな。村のやつらがこんなにいる理由だけどな、簡単に言えばこんな時ぐらいしか騒げないからなんだよ」


 こんな時ぐらいしか騒げないって、どういう意味だ?

 いまいち言葉の意味がわからず不思議に思っていると、表情に出ていたらしくスライブは俺の顔を見て今度は微苦笑を浮かべると言葉を続けた。


「色んな店がある町とは違って、基本的にどの村にも騒げるような店がないからな。普段騒げない分こういう時にこうやってみんな一気に騒ぐってことさ」

「あ、そういうことか」


 ほかの村がどうなのかは知らないけど、確かにこの村にはスライブの店以外に騒げそうなところってなかったな。そのスライブの店にしたって、食堂兼宿屋だから普段は騒いだりするような店じゃないだろうし。うん、納得だ。


「お二人共、何の話しをしているんですか?」

「ん?おう、戻ってきたのか、ケイナ」


 会話の切りがよくなったところで、いつの間にか広間に戻ってきて近くまできていたケイナにタイミングよく声をかけられ、俺とスライブはほぼ同時に声のした方に首を動かし、それからスライブが言葉を返す。

 ……ってあれ?一緒にいたはずの天枷がいないな。どうしたんだろう?


「ユウリが暇そうにしてたからちょっと世間話をな」

「あ、それって、私がトウカさんを連れて行ってしまったからですよね。ごめんなさい、ユウリさん」

「え、いや、そんなこと、別に謝るようなことじゃないって。えっとそれより、姿が見えないけど天枷は一緒じゃないのか?」

「あ、はい。トウカさんでしたら話が終わった後、少し外で休んでくると言って裏口から出ていきました」

「そうなのか。よし、それじゃあ俺も、ちょっと外に行って休んでくるよ」


 天枷が外に出たと聞いてすぐ、俺も外に行くことに決めてそう言いながら立ち上がる。

 さっき一緒にいた時の様子を見る限りでは大丈夫そうだったけど、あんなことがあった後だから少し様子が気になるし、それに、天枷と二人で話したいことがあったから丁度よかった。


「おう、そうか。裏口なら、二階に行く階段の近くにある扉の先にあるからな」

「わかった。じゃあ、ちょっと行ってくる」


 ケイナとスライブの二人に言い残して俺は広間から離れ、言われた通りに通路を進んで裏口から外に出た。

 それから、多分あんまり遠くには行ってないはずと考えて辺りを見回してみると、ここから少し行った先にあるちょっとした原っぱに隣接した軽斜面に、少しだけ顔を空に向け座っている天枷の姿を見つけた。


この話に関しては忙しかったとかではなく、単純に次の話に繋げるためにどうするかなかなか浮かばなかったために投稿が遅くなりました。

結果、自分的に今までで一番納得がいかない内容に……。

とはいえ、今の私ではちょっとこれ以上はどうすることも出来ないので仕方なくこのまま投稿することにしました。

もしこの話に関して言いたいことなどがある場合は活動報告のほうでお願いします。



それと、後二、三話で第一章は終わりの予定なので、ここまで見てくださった方はとりあえずそこまででも付き合っていただけると嬉しいです。

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