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魔力使いの日常  作者: バロック
第一章 少女と氷と別の世界
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第十七話 心配、そしてお願い

前回の中途半端なところからの続きです。

時間がなかったため、勢いだけで書き進めてしまったところが多々あるため雑かもしれませんが、とりあえずどうぞ。

 理由はわからないけど、どうも俺達のことを探していたみたいだ。


「あ、ああ、俺ならここにいる」


 そう返事をしてシェラさんの見える位置まで移動すると、玄関にいたシェラさんは俺を見てホッとしたような顔をした後、こっちに近付いてきた。


「ユウリ、無事みたいね。トウカはどうしたの?」

「天枷なら、奥の部屋にいるけど」

「そう、そのユウリの様子だとトウカも大丈夫そうね。はあ、二人共無事でよかったわ」

「えっと、シェラさん。俺達のことを探してたみたいだけど、どうして探してたんだ?」

「ん?ああ、少し前にケイナが私のところに来てね。二人が危ないから助けてって言われたから、それでね」


 そうか、それでここにケイナがいなかったのか。わざわざ助けを呼びにいってくれたなんて、後でお礼を言っておかないと。


「けど、二人で何とかできたみたいだし、私が来る必要はなかったかしらね。それにしてもユウリ、ディープウォルフを倒すなんてなかなかやるわね」


 ディープウォルフって、もしかしなくてもこのウォルフの名前だよな。普通のウォルフとは姿が違うからそうじゃないかとは思ってたけど、やっぱり違う種類のウォルフだったのか。

 というか。


「あ、いや。それが、そいつは俺が倒したってわけじゃないんだ」

「うん?それって、どういうこと?」


 倒れているウォルフを見て勘違いしているみたいだったので訂正すると、シェラさんは不思議そうな顔をしてそう言い首を傾げた。


「えーっと、何というか、俺が目を開けた時にはもうそうなってたというか。悪い、気付いた時にはもう死んでたから、俺にもどうしてコイツがやられたのかはわからないんだ」

「ふーん、そういうこと。となると、どうしてこのウォルフは死んだのかしら?ちょっと気になるしその辺りのことを調べたいところだけど……その前に、ユウリの怪我の手当てをしないといけないわね」


 俺の言葉を聞いて、興味がある様子で倒れているウォルフを見ていたシェラさんが、言いながら急に視線を俺の傷口に向け、痛々しげな表情を浮かべた。


「……ごめんシェラさん。手当て、頼んでもいいかな?」


 体当たりされて傷が悪化したというのもあって結構辛くなってきたところだったので、申し訳なく思いながらもそのシェラさんの言葉に甘えて俺は傷の手当てを頼む。


「わかったわ。じゃあ、私は手当てする準備をしておくから、ユウリはトウカのところに行ってきなさい。きっと今頃、ユウリは大丈夫かなって部屋で心配してるわよ」

「そう、だな。わかった、そうするよ」


 確かに、思い返してみればさっき俺を止めようとした時、心配そうな顔してたもんな。

 もし逆の立場だったら俺だって絶対心配してただろうし……うん、早く顔を見せに行こう。

 シェラさんが来たからもう安全だってことも報せないといけないしな。

 俺はシェラさんの言葉に頷いてからその場から動き出し、そう考えて足早に天枷のいる部屋に向かう。

 そして、部屋の扉を開け中に入ると、ベッドに座っていた天枷が俺を見るなり立ち上がり、俺の名前を呼びながら駆け寄ってきた。


「双海!」

「ウォルフが何とかなったから報せに来た。シェラさんも来てくれたし、これでもう安全だ」

「そう。……その傷、さっきより酷くなってる」

「えっ、と、それは、ウォルフを倒そうとした時に結構激しく動いたから、それで傷口が開いちゃったみたいでな」


 ウォルフにやられたって言うのもかっこ悪いと思いあまり言いたくなかったっていうのもあったが、それ以上に正直に言って天枷に心配させたくなかったので咄嗟に嘘を吐いた。が、しかし。


「嘘。私が部屋に入ってから少し経って、双海の呻き声と何かにぶつかったような音が聞こえた。だから、何かがあったのはわかってる。……双海、本当は何があったのか、出来れば教えてほしい」


 すぐに嘘だとばれてしまい、俺は少し気まずく思って頬を掻いた後、観念してさっきのウォルフにやられた時のことを話した。


「――――そう、何があったのかはわかった」

「嘘ついて悪い。本当のこと言ったら、余計に心配にさせると思って」

「別にいい。……けど、双海が死んだりしなくて本当によかった……本当に」


 普段通りの無表情で、しかし、心から安心したように、天枷が言葉を漏らす。

 ……そうか。俺が思ってた以上に、天枷は俺のことを心配してくれてたのか。


「……ごめん天枷、心配かけて」

「それも別にいい。でも、一つ約束して」

「約束?」


 疑問に思い聞き返すと、天枷はそうと言いながら頷き。


「双海が私に言ったように、双海も、これからは無茶なことはしないようにして……お願い」


 どこか心配そうな語調でそう言った。


「それは……悪いけど、約束できない」

「なぜ?」

「……出来れば起こってほしくないけど、もしまたああいうことが起こった時、無茶をしないとどうしようもない状況になったらどうしても無茶をしてしまうと思うからだ」


 というか確実にする、だろうな。だから、その約束はできない。

 それならそれで、そのことを隠してとりあえず約束だけすればいいのかもしれない。でも、真剣な様子の天枷に対してそんなことはしたくなかったし、理由を聞かれた以上、理由を隠したくもなかった。


「そう。……どうしても約束できない?」

「ああ」

「絶対に?」

「絶対にだ」


 そう二回聞いてきた天枷は、今ので何度聞いても俺が答えを変える気がないのを悟ったのか軽くため息をついた後、「なら」と呟くような声で言い。


「なら、絶対とは言わない。でもせめて、出来るだけでいい、無茶なことはしないって約束して」

「……それでいいなら、わかった。なるべく無茶なことはしないって約束する」


 続けて天枷が言った言葉が切実に感じられて、俺はその言葉に同意し約束した。


「よかった、約束してくれて」


 そんな俺の言葉を聞いて、天枷はそう言いながら安心が混ざったような笑みを僅かに浮かべたが、すぐに表情を元の無表情に戻すと少し不満そうな声で言葉を続ける。


「でも、それはそれとして、やっぱり双海は頑固だった」

「うっ、あんなやり取りをした後じゃ否定できない」


 うーん、さっきはそんなことないと思ったんだけどなぁ。

 実は俺って意外と頑固だったのか?


「…………」


 なんて考えだしたところで、天枷が俺のことをじーっと、どこか不満そうな目で見つめていることに気が付く。


「え、えっと、天枷?」

「…………」

「……はあ、わかった、認めるよ。天枷の言う通り、俺も頑固なところがあったみたいだ」


 声をかけても無言のまま不満そうな目で見つめてくる天枷に、俺は何となく不満そうにしている理由を察し、ため息をついてからそう言うと。


「うん、よろしい」


 天枷は首を縦に振り、満足気にそう言った。

 ふむ、そんな風には見えなかったけど、この様子を見た感じだと案外天枷は負けず嫌いだったりするのかもしれない。

 と、ここでハッとあることを思い出す。


「って、そうだ。そういえば居間でシェラさんが待ってるんだった。えっと、そういうわけだから天枷、一旦話はここまでにしてとりあえず居間に移動しないか?」

「ん、わかった」


 しまったな。色々と天枷と話してるうちに、シェラさんのことすっかり忘れちゃってたよ。

 天枷との話し、思ったより時間かけちゃったからなぁ。俺の手当てをするために待っててくれてるのに結構待たせちゃったし、シェラさん、怒ってるかもしれないな。

 そう考えて、シェラさんが怒ってないように祈りながら、俺は頷いた天枷と一緒にシェラさんの元へと向かったのだった。


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