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魔力使いの日常  作者: バロック
第一章 少女と氷と別の世界
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プロローグ

 ふわぁ、と欠伸をしながら夕日に染まる坂道をのんびりと歩く。

 結構急な坂道だが、もう何度も通っているのでさすがに上るのが憂鬱になるってことはない。いわゆる慣れってやつだ。まあ、それでも面倒だとは思うけどね。

 俺の家はこの坂を上った先の住宅地にある。

 なので、いくら面倒だと思っても絶対にこの坂を通らないといけないわけで、十数年もここで暮していれば嫌でも慣れる。

 当然バスもあるけど、そんな毎回乗るほどのお金は俺にはない。

 それに、慣れてるからかもしれないけどお金をかけてまでバスに乗ろうとも思わないしな。


「にしても、わざわざ駅前まで行ったのに店が休みとはね。完全に無駄足だったなぁ」


 欲しい本があって駅前の本屋まで行ってきたのだが、事情により店をお休みしますという張り紙が貼ってあり店が開いてなかったのだ。

 なら他の本屋に行けばいいじゃないかと思うかもしれないが、そもそも本屋自体がこの町に二つしかなく。俺が行ったほうとは別の本屋は参考書やら何やらと真面目な感じの本しかないのでお目当ての本は置いてないのだ。

 で、当てが外れた俺はトボトボとこうして歩いているわけだ。

 坂道を七割ほど上ったところで、横のほうに広場が見えてきた。

 あの広場には展望テラスがあり。そこからは景色がよく見え、特に夕陽が綺麗に見えることから結構有名だったりする。だから、普段ならそこそこ人がいるんだけど……。


「あれ?誰もいないな」


 通りがかりに広場を覗くと、そこには人の姿はなくひっそりとしていた。

 この時間に人がいないところは初めて見た気がするな。珍しいこともあるもんだ。

 なんて考えながら、人がいないここの風景が珍しくて少しの間ボーっと広場を眺める。



 後から考えると、ここが俺の人生のターニングポイントだったんじゃないかなと思う。



「そろそろ行くか」


 ある程度満足した俺は、改めて家に向かって歩き出した。


 ―――その時だった。


「何……これ!?」


 広場の方から焦ったような女の子の声が聞こえてきた。

 何だろうと顔を広場のほうに向けると。


「なっ……」


 ほんの数秒前までひっそりとしていた広場の展望テラスから、異様なまでの強い力で白い光が発せられていた。

 その尋常じゃない光景を見て驚き一瞬フリーズし、すぐに女の子の声がしたことを思い出す。

 絶対に何かヤバイことが起こってるよな、あれ。……けど、だからって放ってはおけないよな。

 俺は光が発せられているところへと急いで走り出す。

 光の元には、さっきの声の主と思われる女の子がいた。先まで俺がいた場所からは丁度いい感じに木に隠れて見えない位置だ。

 その女の子を中心に見たことのない文字と模様が描かれた綺麗な光の円が地面に浮かびあがっている。

 あれって、魔法陣……ってやつだよな?マンガとかではよく見るけど……現実でこんなの、俺は夢でも見てるのか?

 俺が軽く現実逃避をしかけた次の瞬間、円から発せられている光が一段と強くなった。


「くそっ、どうにでもなれ!」


 直感的にこれはマズイと思った俺は反射的に女の子に向かって飛びかかる。


「えっ!?」


 そこで初めて女の子が俺の存在に気がついたらしく、驚いた顔をしてこっちを見たのが見えたところで前が見えなくなるほど光が強くなり。



 そこで、俺の意識は何かに呑みこまれるように一瞬で途絶えた。


ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

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