七日目~会議~
一ノ瀬と鳴滝が海部に襲われた翌日、一ノ瀬は放課後部活を切り上げた後
結城と塚本を部室に残していた、テーブルを挟んで塚本と結城は隣あって座り、一ノ瀬は向かい側に居る
「…で、何の用事?」
結城がまず一之瀬にそう切り出すと、相手はイスを揺らしながら言う
「…俺も夢見た。多分お前の言ってたみたいな、互いの意識がどうこうってやつ」
結城は少し嫌な予感を感じたが念の為相手の話を聞くことにした、まだ決まってはいない
まだ、それほどダルい状況じゃないと祈っていた
「そこで、海部さんが京くんに切りかかってて、俺は海部さんに聞いたんだけど何も答えなくて」
「…海部さん」
塚本は心配そうに呟くが、結城は深くため息を吐く
あぁ、思っていた通りの面倒くさい状況だと
「で、俺そこで海部さんおもっきし殴っちまったんだよな…」
「いや、別にいいんじゃないの?アッチの方から仕掛けてきたんだしさ」
一ノ瀬が少し気が引けたように言うが、結城は相手をフォローしたいのか海部を落としめたいのかよく分からない風に言う
「でもさ、前夢の中であったときは全然そんなそぶりなかったじゃんか…」
「ってなったら、海部さんが本格的に俺のこと嫌ってるだけだろ?」
一ノ瀬は軽い調子で言う
事実嫌われているとして、彼は相手の勝手だから構わないと考えていた
「…で、どうすんの?私的にはどうせ夢の中だけだし放置した方がいいと思うけど」
結城は冗談半分で笑みを浮かべながら言う
「いや、夢の現実の境界つかなくなるとかありえるんじゃないか?」
「海部さん、夢とかはっきり覚えてるもんね」
塚本は、海部が普段から夢をよく見て、それを話してくれるのを思い出した
海部の夢はいつもどこか突拍子で、よく分からないものが多かったが
「はぁ…でも、どうにかするってどうすんの?…まぁ、宮内がどうせ黒幕なんだろうけど」
「あぁ、ありえるな、宮内なら普通に人騙すとかやりそうだし」
「それこそそういうこと言ったら怒られちゃうんじゃない?」
「うわーやばいわー俺殺されるな」
そうやって二人の言葉に少し大げさにリアクションをするが、ふっと息を一息つくと
「…じゃないんだ、マジメに話しないとな…」
そういって急に真剣な顔になって二人に向かう
「とりあえず、お前らとなら話してくれそうだからさ…夢だろうが現実だろうが会って話できないか?」
「というわけで織枝、頼んだ!」
「え、えぇ?なんで!?」
結城は塚本の肩に手を置いてふってきたため塚本は驚く
結城は頭を下げたあと塚本に向かって言う
「悠斗くんが嫌われてるならさ、私も似たような考えかただし多分嫌われてるって…
それに、前古本屋で出会ったときも私も逃げられたみたいなもんだし
あと前のときも織枝が居たから大人しくしてた可能性もあるわけだし」
「結構責任重大だよね、それ…」
「大丈夫!織枝なら出来る!」
なんだか結城に丸投げされたような気分にはなったものの、相手の言い分も否定できない部分は若干ある
少し考えた後
「いいけど…もし海部さんが私にも何かしたら守ってくれるならね」
「それはする、出来る限り全力でやる!」
相手がはっきりそう言うので塚本は「それじゃあ…」と承諾する
「ありがとう、でも危なくなったら織枝も逃げてよ?」
「わかってる!」
相手の言葉にそう答えると、一ノ瀬が解散を切り出したのでその日は別れた
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「…海部さんの説得か…」
帰宅途中そのことを考えると、塚本はほんの少し肩が重くなった
彼女の周囲にも、海部のように抱え込んでしまう人間を他にも何度か見たことがあった
その姿は少々痛々しくも見えて悲しくなることがあった
「私なんか頼ってくれるのかな…」
そう、ポツリと呟く
あの手の人間はそうそう簡単に自分の本音を明かさない、それこそ気心の知れた相手くらいにしか
「普段は、涼香ちゃんとの方が仲いいのに…」
彼女の目にはそう見えていた、仕事も、普段からメールをするのも、結城の方が海部は好いているように見えるのだ
…あくまで見えるだけという可能性もあるが
「…でもまぁ、やるしかないよね」
と、一人で気合を入れて家に向かわせる足を速めた