六日目~異変~
昼間の学校のグラウンド、ふと気がつくとそこに立っていたのは…一ノ瀬
周りを見渡すと人気は全くないのに気づく
「これって…結城が言ってたヤツか?」
一ノ瀬は以前結城の言っていた、妙な夢を思い出した
海部と塚本と一緒に戦った夢を、そしてその夢は見ている全員の夢であるということを
(…ってことは、俺も海部さんと会うってことか?)
そう思うと少しだけ気分が沈んだ
先日会ったとき、逃げるように自分から走り去っていったのを思い出したのだ
「…はぁ…俺は…嫌われてんだろうなぁ…」
深くため息を吐いて、一ノ瀬はもう一度あたりを見渡す
誰も居ない、誰も見当たらない、不気味なほど静かな場所に居心地の悪さを覚えていた
「ってもな…これからどうなるかよくわかんねーし…もっと結城から色々聞き出せばよかった」
と誰も居ないのに軽い調子になって言ってみるが、相手が居ないことが妙に寂しかった
「…せめて誰か一人でも探すか…」
そう呟いて、彼は部活のもう一人の男子の住むマンションに向かうことにした
男子の名前は、鳴滝 京(なるたき きょう)といった
彼は少し海部と似ていて、悲観的で意志の弱い性格をしていた
なので、一ノ瀬はどこか苦手意識を抱いていたが、それでもそれなりに大切な友人の一人には変わりなかった
学校から鳴滝の家までは30分ほどかかるので少し面倒くさいとも思ったが
それだけの時間があれば、何かが起こるだろうと期待していた
…が
その期待も虚しく、鳴滝の住む家まで何事もなくたどり着いてしまった
「もうちょっと何とか起きないのか?結城の言ってた黒い魔物もいねぇし、少しつまんね~な…」
そう言って腕を頭の後ろに回し彼の住む番号の部屋まで行こうとした、そのとき
一ノ瀬の後ろにあった家の塀が突然崩れ落ち、土煙が激しく立ち込めた
一ノ瀬は慌てて後ろを振り返ると、そこには
なぜか右手に槍を握り、尻餅をついた形になっている鳴滝と
そして…壁を壊したと思われる斧を握った…海部
「京くん!?なんでここにってゆーか海部さんもなんでだ!?」
「海部さんがいきなり俺に斬りかかってきて…」
槍を杖のように支えにして、鳴滝は立ち上がる
「海部さん!どうしたんだ!」
一ノ瀬は海部に叫ぶが、相手は何も返さずただ斧を鳴滝に向かって振り下ろそうとするだけだった
鳴滝は必死で避けえるので精一杯なのか、反撃できずにいる
「そうだ、悠斗!!」
そう言って鳴滝は一ノ瀬に何かを投げ渡す
一ノ瀬が、抱きかかえるように受け取りそれを見るそれは指まで包む鉄製の鉄甲
「僕は槍ある、悠斗はそれを使え!」
斧の一撃をどうにかかわしながら鳴滝は必死に言う
「…仕方ないか…」
流石にどこか罪悪感を感じないでもないそして、海部が本当に突然切りかかったのかも定かではない
だが、今相手は否定せず、鳴滝を攻撃しているのなら…
と仕方なくそれを手につけて、テレビの見様見真似で構える
鉄製であるはずだが不思議と重さを感じないのに戸惑いを覚えた
「…軽いな…」
そう呟くと、海部は一ノ瀬にも攻撃しようと斧を振りかぶる
一ノ瀬は慌ててそれを咄嗟に避けて、海部を見る
相手はひたすらに無表情に周りに攻撃をしていただけだった
「っ…くそっ!!」
一ノ瀬は相手が再び斧を振り下ろした隙にその顔を殴りつける
「…っぐぅ…」
壁に叩きつけられたら海部は苦しげに声を出す立ち上がり、再び斧を持ち上げる
海部は何も言わず暫く動かずにいたが、一ノ瀬の方を睨みつけるように見ると、そのままどこか別の場所に歩き出していった
「海部さん…」
一ノ瀬がそう呟くと、視界は黒く染まって消えた