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「誰か」の理想郷  作者: ナキタカ
番外編
43/46

【番外編】休日~お化け屋敷(きっかけ編)~


※休日編の注意

本編との時間軸はまったく考えていないのでつっこまないでください

また本編でも無いくせに前後編に普通にわかれます


というわけで幽霊の日に少しだけ便乗してみました…


「なぁ、肝試しかなんかしないか?」


部室、二年生が揃っているときに、一ノ瀬は急にそう言い出す


彼らの間で、このような提案はさして珍しいことではない

かつて帰り道に突然カラオケに行こうと言い出してそのまま行った事もある


「いいよいいよ~面白そうだし!」


宮内は好奇心からか、いつになく楽しそうに進んで返す


「ボクも別に…日付さえあえば」


鳴滝は机に広げていた参考書から少し顔を上げて普段どおりに言う


「ん…ちょっと怖いけど楽しそうだし」


塚本はどこか怖いと思う気持ちもあったのだがここはノるべきだろうと承諾する


「大丈夫大丈夫、そんな怖いことないって、あの二人居るし」


と宮内は塚本に指を刺して拒否気味の残りの二人…海部と結城を指差す


「絶対嫌、無理」

「お前に拒否権無いから」

「なにそれ酷くない?」

「じゃあ一人だけ行かないでおくか?一人ぼっちで!」


結城は普段どおりの言いあいを一ノ瀬と繰り広げており

海部は俯いて何も言わない、おそらくアレは全力で嫌がっているのだろう


「海部さんも嫌みたいじゃんか!」

「わ、わわ、わ、私は…み、み、皆が行くなら」

「顔青いまま言っても説得力無いけど!?」


結城が話を振るのに、海部は言葉に詰まりながらも無理やりの承諾をしようとする


「海部さん、悪魔とかこういうの好きそうだよね?苦手なの?」


塚本が海部に尋ねるのに、海部は俯いたまま言う


「…悪魔とか、妖怪とかってさ、種類とかあって生きてる感じがするだろ?

 でも幽霊は無理、触れられない、何するかわからない、無理、怖い」

「そんなに変わらなくない?」

「大違いだって!」


海部は少し涙声になりながら言う


「…ん~、じゃあお化け屋敷ならいいだろ?

 本物じゃないし、最悪途中で抜けられるし、あ、結城は途中離脱禁止な」

「それ全員に適用しようよ!」


一ノ瀬が言うのに、他の全員…海部もどこか渋々ながら…頷く

が、最後の一言に結城は食って掛かる


「なんだよ、嫌なら来なくていいって言ってるだろ?」

「…そう言われても…面白そうだから行くに決まってるじゃんか!」


結城がそういってどこか乗り気で承諾する

海部は少しだけ味方が居なくなって目線をどこかにやると宮内に肩を叩かれる


「ほら、弱点の克服って大事だと思うよ?」

「お前次夢であったら切り刻む」


親指を立てて宮内が言うのに海部はどこか本気のトーンで言う


「…まぁ、とりあえず全員行くって事で、今週末な

 場所とか時間とかはまたメールするし」


と一ノ瀬が言うと、それからそれぞれで話をしだす

結城が一人、お茶をとりに行こうとすると一ノ瀬が声をかける


「あ、本気で嫌だとしたら来なくていいからな」

|(そういうこと言ったら断り辛いだろうが馬鹿!!)


と、彼の相変わらずの最終的なフォローについ心の中で突っ込んでいるのだった


――――――――――――――――――――――――――


―某アミューズメントパーク―


「んじゃ…全員居るな!

 じゃあくじ引きで二人組み決めようぜ!」


週末、お化け屋敷の前に集まったのは全員

結城はどこかそわそわと落ち着きがなく、海部は少し脅かせば今にも崩れ去ってしまいそうだ


「なんで三人じゃないの?6人なのに?」

「ん~人少ないほうが怖いから」

「怖く無いようにしてくださ…まぁいいや…」


海部は疑問に思って声を上げたが、それ以上抗議するのも無駄だと思ったのか言うのをやめる

一ノ瀬は喋っていた他の部員に声をかける


「じゃあ、一人一本持っていっせいに抜くってことで

 番号が一緒の奴がペアで、その順番で行ってくれ!」


自分で作ってきたのか、彼は割り箸を手に握り差し出す

それに近づき、一人一人割り箸を握ってスタンバイする


「「せーのっ!!」」



それぞれが番号を確認してペアを作っていく


「…俺は…一番か、で相方は…うわっ結城かよ」

「いきなりそれは酷くないですか~」


一ノ瀬の前で1と書かれた割り箸を見せて結城は不満げに言う

ある意味彼となら楽しそうではあるが、それと同時にどこか不安もいっぱいであった


「うわ~まじ最悪だわ~」

「あのさ、そこまで言うと私だって泣くからね!」

「泣かないだろ?」

「……あ、うん(というか、最悪って言葉はそっくりそのまま返したい…)」


一ノ瀬が好き放題言うのに結城は言い返すが、一ノ瀬の返しに何もいえなくなる



二人がそんなやりとりをしている頃


「ボクは宮内とか…よろしくお願いします」

「え、うん、二番手だし、あんまりのんびりもできないと思うけどね」


鳴滝がかしこまって頭を下げて言うのに、宮内はハハハと少し作った笑いをする


それを言い合っていた結城と一ノ瀬が二人を見てひそひそという


「あそこ…大丈夫かな?鳴滝君けっこうオーバーリアクションじゃんか」

「あ~…大丈夫じゃないか?多分」


と、どこか相性の悪さを感じて不安に思っていた


「もう一組は…最後までいけるかどうか…」


その視線の先には海部と塚本、すでに少し弱っている海部を塚本が説得させている


「つ、塚本、置いていくなよ?い、いや、死にそうになったら別にいいけど」

「死なないって!お化け屋敷って言っても作り事だし…そりゃ怖いけど…」


その様子を見て一ノ瀬はあくまで二人の様子を楽しんでいるようだった


「まぁ大丈夫だろ、一応限界まで途中離脱禁止だしな」

「悪魔…」

「とりあえず、入ろうぜ!」


結城の声を無視して、一ノ瀬は部員に集合をかけて列に並び始めた


――――――――――――――――――――――――――



入場の列に並び、結城一ノ瀬ペアの順番が近くなると、一ノ瀬は声をかける


「んじゃ、行ってくるわ…皆も気をつけろよ~」

「がんばってね~」


二人が手を振るのに残りの全員も返す


「塚本、手繋いでいいか?多分耐えられない…あ、手汗すごいけど…」

「うん、私もつなぎたいし」


と、二人は既に情けない声で手を繋ぐ


(あ~あ、後ろ二人の反応見たかったかな~)


宮内はぼんやりとしながら順番を待つ、ふと手に何かの感触があって思わずそれを払いのける

それは鳴滝の手だったらしい、相手の手が自分の所に帰っていったのが見えた


「あ、ごめん…」

「舞ちゃん、順番だよ?」

「うん!行こう!」


いきなり少し気まずい空気の二人が進みだして、残りは海部と塚本


(今手繋いでるけどすりかわってたらどうしようというか前の二組もどうなってるんだろう他のお客さんの悲鳴すごいし泣きながら出てきてるしうわなにこれ今なんかすごく帰りたい)


心の中ではものすごく早口であったが、その反面口には何も言わない

塚本の声になんどかうん、うん、と返すと、思っていたよりはやくに、スタートの合図は来た


「行こう、海部さん」

「…うん、手、離さないでいような」

「うん…」


そう言って、二人もまたお化け屋敷に足を進めていった…




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