最終日
…何度目かわからない獣の群れが、中庭になだれ込んでくる
「…へぇ…」
宮内は鎌の柄をギュと握り笑いながらも焦っているようだ
怪我をした右足をかばうように後ろに下げる
「…ちょっと…厳しいなぁ」
銃を抜きながらも、微かに肩を上下させて塚本はあたりを見渡す
「…私は…」
一瞬迷ったようだが、海部も斧を持ち上げて言う
「でも…やるしかねぇだろ、コレくらいが、ラストバトルっぽいだろ?」
一ノ瀬は拳を構えて笑いながら言う
「…どうするの?京くん、皆戦うつもりだけど?」
その様子をみていた結城は、相手を見て剣の先を向けて言う
鳴滝は迷うことなく答える
「…アイツの気が変わるまでやるだけだ!!」
叫ぶと同時に再び結城の方へ走る、と同時に、獣は他の4人に飛び掛る
獣の群れに分断される前に、結城は鳴滝の槍をはじきながら叫ぶ
「悠斗くん!後は頼んだ!」
「俺を誰だと思ってやがる!!」
一瞬、結城のほうを見て笑って言うと、近づいてきた狼の頭を地面に叩きつける
「宮内!塚本!海部さん!ぜって~無理はするな!!
辛くなったら逃げろ…全員ここに居なきゃ意味が無い!!」
宮内は左足を軸にして、相手を何匹か巻き込むように鎌を振り回す
「…ああいわれた手前、ちょっと難しいかな?」
塚本は同時に襲い掛かってきた二匹の虎の頭を貫く
「そうだよね、せっかく頼ってきてくれたんだし」
海部は斧でライオンの頭を叩き割る
「……私に無理をするな、と言うのは間違ってると思うがな」
その返事に一ノ瀬は笑う
「…しゃーねぇなぁ…俺の活躍どころって訳か!」
言って、一ノ瀬は自ら獣の群れに飛び込んでいく
当然獣は何匹か同時に飛び掛ってくるが、一ノ瀬はそれを簡単に避けてその隙に殴りかかる
「…私も…やらなきゃ!」
塚本がそう言って周りの獣を何匹か撃っていく
と、その背後からやはり、黒い、巨体のクマが一頭立ち上がって彼女を見下ろす
慌てて銃を構えて撃つが、弾道は相手から僅かに逸れてしまう
「うそ…!?」
だが、それに気づいたのだろう、宮内の鎌と海部の斧が胴体に突き刺さる
塚本ははぁ、と安堵で息を吐く
「あ、ありがとう」
「…言ってただろ、全員いないと意味が無い」
海部が一度斧を下ろしてあたりの敵を探しながら言う
「普段助けてもらってばっかりだしね」
宮内は鎌を一度下ろして塚本のほうを見ていった
「え、えっと…そんな…」
「…まだ終わってない、来るぞ!」
かつて一度戦っていた時のように海部は二人に言う
何気ないことではあったが、その言葉に相手にここを乗り切る意思が見えて安心しながら頷く
群れから少し離れたところで、結城と鳴滝は戦っていた
「どけ!諦めろ!邪魔をするなぁ!!」
叫ぶ鳴滝の武器を流しながら結城は相手の手から武器を離そうと切りつけようとするがそれは避けられる
振り下ろされた槍を受け止めて、つばぜり合いになりながら結城は言う
「諦めろって言うのはそのまま返すよ、もう海部さんは諦めない
…ごめんだけど、そっちに折れてもらいたいかな」
一度距離を置くように後ろに下がると再び同時に切りかかる
「うるさい、なんでアイツが認められる、なんで僕は認められない!」
「方法が悪いの、アンタが私を嫌おうが海部さんを嫌おうが構わない
だけど…殺す必要は無いって…」
「黙れ!そうやって自分の思い通りにしたがるくせに!!」
怒り狂った彼の心には、完全に相手を倒すこと以外考えに無い
「…そう、じゃあもう私から話すことは無いから」
そう言い放って、剣をもって相手に切りかかっていく
鳴滝は受け止めて相手を睨む
「僕は…海部さんも許さない、けどお前も、一ノ瀬も塚本も宮内も許さない
…皆僕なんか見ていない、皆僕を無視するんだ
皆、お前と悠斗以外の話なんか!!!」
言いながらまっすぐに突き刺さろうとする槍をかわしてそれの刃先を下に降ろして軌道をそらす
何度も何度も武器を交えるが、相手の言葉は変わらない
「何言われても動じないんだろうな、そうやって堂々としてるのが腹が立つんだ!
それに黙って…自分の思いも持たないで!」
海部や、他の部員に対する、恨みごとの羅列
馬鹿馬鹿しい、と思ったと同時に、止めなければならないという思いも強くなる
考えていると、一瞬鳴滝に押されて体制が崩れかける
そこを鳴滝は一度下がって槍を構える
「…じゃあな…まずはお前から終わらせてやる!!」
大振りなその動きに、一瞬戸惑ったが素早く立て直して剣を構えて
結城はその手を軽く切りつけた
「…なっ!?」
鳴滝の手から槍が離れて、地面にカランと槍の落ちる音がする
「これで…終わり」
鳴滝はそういわれて膝を地面につき俯く
その首に剣を当てて結城は相手に勝利を示す
そして、同時になだれ込んでいた獣の群れも消え去った
武器を動かすのをやめて、四人は結城の方を見、急いで駆け寄る
二人の口は開かれない、長い長い静寂が訪れる
それが相手が納得していないからなのか、何かを考えているのか察することはできない
心配そうに、一ノ瀬たちはそれを見守っていた
黙って俯き続ける相手に、結城は剣を降ろして口を開く
「一日」
鳴滝は一瞬驚いたように方を動かしたが、相手の顔を見ない
それでも結城は続ける
「明日一日、考えてきて、言われたことの意味を考えろ
冷静になって、それで自分の意思を通すのも、謝るのも、任せるから」
そう言って振り返り、結城は海部に尋ねる
「皆、それでいい?特に海部さん」
一ノ瀬と宮内と塚本は頷くが、海部は少し迷っていた
「…海部さん、問題あるなら言って?」
「いや、前の私ならその言葉も腹だ立っただるな、と」
「何それ」
笑いながら言うのに、結城はため息を吐きながらも笑って返す
「答えは明後日までに出しといてね…それじゃ…」
結城が歩き出すと、他の部員もそれに続くように背を向ける
視界は、徐々に白い光に染まっていく
もう、起きる時間だ
それまでじっと下を見ていた鳴滝は、最後に顔を上げて去っていく彼女たちの背中を見つめていた