二日目~厄介~
(結局…あの夢って…)
終礼、机に肘をついて先生の話をうすぼんやりと耳に入れながら結城はあの夢のことを考えていた
宮内とはいつも朝も待ち合わせをして来ているが、朝はうっかり聞き忘れていた
それほどに彼女にしてみればどうでも良かったのだが、話のネタになるだろうと思い返していた
これほどはっきりと夢の内容を覚えているのは結城にとっては珍しいことでもあったからである
クラス委員の起立の声でゆっくりと立ち上がり、椅子を机にあげ、
礼をする部室に行く前の身辺の整理をしていると、彼女の後方から声が聞こえる
「涼香ちゃん、海部さんは?」
声の主は塚本 織枝(つかもと おりえ)、結城と同じ部活の部員である
ここ最近趣味が合うということもあって一年の頃以上によく話している
「さぁ?またすぐ帰るんじゃないの?」
結城はちらっと既にカバンを持って教室をでていく姿を見つめながら淡々と言う
彼女は海部要(かいふ かなめ)、ここ最近部活の仕事がなければさっさと帰ってしまう
…迷惑はかけたくないのか、最低限の仕事はこなしているようだが
「大丈夫かな…」
「別に、こっちに言ってこないなら大丈夫じゃない?
正直ああいうの面倒くさいし」
塚本がすこし心配そうに言うのに結城は少しうっとうしそうに言う
結城は、今が楽しければ何でもいいという思考の持ち主であり
その正反対である海部とは今までも小競り合いを繰り返していた
そのため結城は彼女になにかしら面倒な恨みを持たれていると考えていた
「嫌ってるならさっさと理由言ってほしいんだけど、面倒」
「海部さん…そういうこと考えてても言わなさそうだしね」
そう塚本が言うのに結城は海部に対する苛立ちを少し抱えながら部室へと向かった
――――――――――――――――――――――――――
―PM5:50―
「あ、そうだ宮内」
部活の終わり、結城は思い出したように下駄箱の前で宮内に言う
昨日の夢のことを、軽く聞いてみたいと思ったのだった
「ん?どうしたの?」
「昨日変な夢見たんだけどさ…」
「あ~やっぱ覚えてるんだ…」
結城がそういうのに宮内は何かを考えはじめ、ゆっくりと校門に向かって歩き出す
それがイマイチそれが理解できず結城が宮内に尋ねる
「やっぱって…なに?」
「あ~いや、夢の中で言いそびれてたね…前に来てたもう一人、あっちも夢見てたことは覚えてたし」
「とりあえずツッコミどころはいっぱいあるけどさ、そのもう一人って誰?」
彼女は事の事態よりも、誰が関与しているかの方が気になるようであった
人によれば、面倒くさいことになり関わらないほうがいいだろうと考えているからだ
二人はいつの間にか正門にいたので、他の皆に別れの挨拶をかわすのに暫く答えは聞けなかった
駐輪場の入り口で、宮内は少し迷ってそのもう一人の名前を言った
「あ~…海部さん」
「…」
相手の口から出た名前をすこし忌々しく思ったのかどう言葉を返していいのか迷っていると宮内は続ける
「まぁ大丈夫じゃない?夢の中で会う限りではいつもの調子だし」
「そりゃアンタは原因じゃないからな」
頭が痛くなりそうなほど、彼女が思っているより事態は面倒くさそうだった
まぁ、これ以上関わらないようにすればいいだけの話だと思いそれを口に出す
「二度とあんな夢見なきゃ言いだけの話か…」
「私の思いのままだけどね~」
「え?今なんて?」
「気のせい気のせい♪」
宮内の言葉に背中に悪寒が走りぬけたが、相手がそういうのに今のうちは素直に納得しておくことにした
…というより事実だとすれば何をされるかわかったものではない
「ま、出合ったとしても露骨な敵意はないでしょ…今の距離だって自分が八つ当たりしかねないってわきまえてやってることかもしれないし」
「だから私も必要以上に関わらないようにはしてるけど…」
それでも、夢であっても出会うのいうのは勘弁したい
それが互いに覚えているというものであれば尚更であった
「でもまぁ逆に関係が戻ればそれでいいんじゃない?夢ならちゃんと喋れるとか」
「そんなだといいけどね」
と、ため息をつきなんともいえないもやもやとした気持ちを抱えたまま自転車の鍵をゆっくりと開き
そして自転車にまたがりペダルもゆっくりと踏んで前へと進ませていった




