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「誰か」の理想郷  作者: ナキタカ
「誰か」の理想郷
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二十日目~引き戻すために~


―2年1組(鳴滝・一ノ瀬)―


(…京くんは…来てるみたいだな)


一ノ瀬は後ろの席から鳴滝を視界の端に写す彼は普段と変わらず授業の用意をしていた



おそらく、かれに今やっていることの罪悪感は無いのだろう

むしろ正しいと思い込んでいる

だからこそ、引き止めるのが難しい


(海部さんは今一応手綱を持てる奴がいるからいいけど…京くんのも暴走みたいなもんだしな…

 …まぁ俺の言うことなんか聞いてくれないし…)


表には出さずとも、心の中はもやもやとしてくる

以前から相談は受けるものの、彼がそれを実行したためしは少ない

そして、鳴滝の気持ちに一番近い海部と彼が対立した今、もはや打つ手は殆どなかった


(結城にも聞いてみるか…)


結城と二人だけで行動するのは、海部の件から少し気が引けることではあったが

それでも彼にとって、一番相談しやすい相手が結城であることは変わりなかった

ふと、海部のことを思い出して記憶を掘り起こす


(…宮内と塚本の話だと、いつか自分で言うみたいなことも言ってたらしいしな…)


意識を戻した海部の話を聞いた二人から、あらかたの事情は聞いていた

が、海部のほうもはっきりとした解決は見えてこないが


(まぁ、海部さんあれで生真面目だし謝らないってことはないだろうけど…

 それからのことは…まぁいいか、そんときにフォローできれば)


その場はそこで考えを切り上げて、教師に見つからないように携帯を触り、結城へのメールを打った



――――――――――――――――――――――――――



放課後、自分の教室の前でこっそり携帯を覗き込んでメールの文面をみる


『ちょっと用事があるから待っててくれ

 こっち、京くん来てるし話し辛い』


さして、いつもと変わらない内容…

また鳴滝のことだろうか…と考えながら廊下の壁に寄りかかる


上のクラスからガラガラという音がして彼らのクラスの終礼の終わりを知らせる

もうすぐだろうか、とそれからしばらく何も考えずに下りてくるのを待つ


一ノ瀬と鳴滝は同時に降りてくる、一ノ瀬は鳴滝に手を振って結城の方に近づく

チラと鳴滝が部室に向かうのを確認して、結城に声をかける


「すまんな、ちょっと話があって」

「いいよ、全然…で、京君の話?」

「…まぁ、そんなもん」


一ノ瀬は廊下にあるロッカーの前に立ってじーっと眺める


「お前何番だっけ?」

「え…38番…」


結城が言うと、一ノ瀬はおもむろに38と番号の書いてあるロッカーを開く

そこには置いていっている資料集や教科書があった


「うわ汚ねっ!」

「ちょ、勝手に開けといてそれは酷くない!?」

「もうちょっと持って帰れよ!そうじゃねぇと成績下がるぞ?」

「余計なお世話だわ!…で、何の話?」


一ノ瀬がいつものように軽いノリで話をそらすのに、結城は下に戻そうと促す


「…あぁ悪ぃ…京くんのことだけどよ…説得しようにも、俺の話聞いてくれるかわかんなくて

 で、気持ち一番近いのって海部さんだろ?でも海部さんともアレじゃん、どうしよっかな~とか思って」

「…宮内は?アイツのいうことならある程度は聞いたんじゃない?」


結城は少し考えると、ふと思い出して言う

鳴滝はよく誰かに自分の行動の方針をゆだねる、それを宮内にも相談していた

そして偶然、その言うことは聞いていたことがあった


「一番言うこと聞いてくれそうなのはアイツだな…でも、悪いだろ?

 海部さんのことも結構任せっきりだし…手一杯だろ

 あと、海部さんがもし…もし頑張ってくれるなら、それが一番いいような気もする」

「まぁ、海部さんもそれなら納得するだろうね…

 じゃあ、海部さんのことは宮内に任せて、そっからは海部さん頼み?」

「…けど、俺たちも説得しないとだろ?京くんは俺たちが味方になると思ってやってたんだし

 今、完全に逆ギレ状態みたいなもんだけど」

「うん…でも、海部さんの方もよくわかんないんでしょ?」

「大丈夫じゃないか?少なくとも謝らないってことはないだろうし」


その言葉に、結城は少し迷う

結城は、そう簡単に海部が自分に頭を下げると思わない

変なところが意地っ張りなために、それをここで表に出てしまうかも知れない

が、きっと上手くいく、そう思って今は頷く


「まぁ…多分ね」

「そんじゃ…海部さんの連絡待ちってことにしとくか?」

「そうなんじゃない?」


そう言って、二人は部室に向かいながら普段の雑談を始めていた



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