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「誰か」の理想郷  作者: ナキタカ
「誰か」の理想郷
18/46

十六日目~計画~


―午前7:25 教室―


結城はいつものように自分の席に向かい、荷物を降ろし座席に座る

時間もなく特に用事も無いため塚本に話しかけるのもなんだか違うような気がする

机に肘をついてあたりを見渡すと、海部の座席はクラスでもよく騒ぐ女子グループの集会の一角になっていた


結城は気がつくと、そのグループを少し冷たい目で見ていることに気がつく

大きな声で騒ぐあの手のグループを好まないこともあるが

何故だかわからない、彼女の席を使われているということがなんとなく気に入らなかった


気を紛らわせるために、何かしらの知らせが無いかと思い携帯を開く

すると…そこには未開封のメール


(…悠斗くんだ…なんだろう?部活?)


慣れた手つきでメールを開く、その中身にあたりの声はシャットダウンされた


『海部さん意識戻したらしい

 俺とお前だったら海部さんも警戒するだろうから

 宮内と塚本に行かせるか?』


(…海部さん…)


ちょうど様子見と励ましをかねて見舞いを誰かにさせたいと思っていた所の提案

結城は先生が来る前に素早く返信をする


『いいと思う、私も様子みたいと思っていた

 二人に言ってみるけど、そっちからも会ったら言っといて』


送ると、画面の確認もせずに慌てて携帯をカバンにつっこんでそのまま朝礼を聞いていた



――――――――――――――――――――――――――


昼休み


塚本と一緒に仕事のために部室に向かう

周囲はいつもと変わらず運動部員が荷物を持って外に出かけたり、四時間目の移動教室から帰る生徒が居た


(…お見舞いの話ついでに…京くんのことも…)


「…話があるんだけどさ」


指で鍵をいじりながら結城は特に深刻なそぶりも出さずに言い出す


「なに?」

「海部さん、意識戻したんだって、悠斗くんが言ってたんだけど…宮内と一緒に様子見に行って欲しい

 私と悠斗君じゃ、多分厄介なことになりそうだしさ」

「いいけど…学校帰りに部活抜ける形でいい?病院、私の家からじゃ遠いだろうし、塾とかあるし」

「あぁ、それなら…」


塚本が不安げに言うのに、大丈夫と返しかけたが声を止める


「…『なんで学校ほっらたかして私に構ってきたんだ…』とか言いそうだね」

「…う~ん…」

「だけど宮内一人って言うのもアレだし、お見舞い行かなかったら行かなかったで悪化しそうだし…」

「まぁ、そのあたりは何とか説得してみる」


結城はあまり納得しきれないままではあったが、これ以外に手は無いだろう

よろしく、と言いながら部室の鍵を開く


「ありがとう」


塚本は言いながら先に入って部室の電気をつける、

カーテンで陽が遮られた暗い部屋は電気がついたもののそれほど特別明るいとも感じられなかった


「…あと大事な話があって…夢のことで」

「どうしたの?」


塚本は机の上に弁当を置いて、作業の用意をそろえながら結城の方を見る


「…京くんが…なんというか暴走したっていうか…すごい説明しづらいんだけど…」


結城はなんとなく、塚本の方を見ないまま話し始める

切り出し方も、説明のしかたもよくわからないことであった


「…京くんが…敵になったってこと?」

「まぁ、そんな感じ…なんか部活の仲ぐちゃぐちゃにしたからって…」


結城は音を立ててパイプ椅子に座り背もたれにかかる


「…京くん、海部さんと考えてること少し似てるしね、なんか思い込んでるというか…」

「そうそう、なんか好かれようと必死っていうか…」


二人で苦笑しながら話す

海部と鳴滝…二人はネガティブなところが似ている、と周りの部員は認知していた

自分の失敗を大げさに捕らえるところも、誰かに必死に好かれようとしているところも


「…というわけで、これから気を付けてね?」

「うん、まぁ私がどうにかできるかわからないけど…海部さんのときもだし」

「まぁ…今回のことも考えてみるよ」


結城は手元の携帯電話を確認した後、二人で作業に取り組んでいく




途中、ガラリと部室の扉が開く


「…宮内!」

「通りがかった悠斗くんに話聞いてね、おみまい…だっけ?」

「うん、まぁ或る意味偵察みたいなもんだけどさ」


結城は椅子を前後に揺らしながら言う


「偵察か…そんな酷いことさせるの?」

「え、悪者私?」


宮内がわざとらしく言うのに、結城は驚いたように言う


「いや、相当悪者でしょ~見損なったわ~」

「え?いや、だって!仕方ないじゃん!」

「涼香ちゃんそういう子だったんだ…」

「織枝まで!?」


二人からからかわれて、結城は味方が居なくなったことに困惑する

この軽いノリができることにほんの少し安心しながら


「それいうなら宮内だって…」

「いや、私は病んでる人に脅されたむしろ被害者っていうか、

 逆に助けてあげようとしたとっても心優しい人というか」


宮内は白々しく答える


「それはそうだけど…あぁもう!」


結城は面倒になって手元にあった学校の連絡に目を走らせる

宮内は相手をからかえたことに満足したのか、塚本の方に近づく


「涼香ちゃん!戻ってきて!」


塚本が声を出すが、結城は無視する

こうなると結城は落ち込んで暫く相手にしてくれなくなる

暫くすれば忘れて元に戻っているが


「…あんまり苛めたらダメだよ?」

「だから、私を事実を言う主義なだけなんだって」


相変わらず敵に回したくないな~と塚本は思いながら、

彼女を学校から配られた予定表に目を走らせていった



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