十五日目~一人で~
白い天井…それをじっと目を凝らして見つめる
自分が何処に居るのか把握できない、友はここに居るのか?それともここには居ないのか?
海部は少しずつ意識を取り戻して、体を起こそうとするが体に激痛が走って動けない
そのまま体ベットの上に沈めて、再び考えるだけに戻る
手の自由が利いたことに気がついて、クセで左腕を自分の目の前にもってこようとするがそちらにも鈍い痛みがある
その理由を思い出そうとすると、頭の中に一気に濁流のように記憶が雪崩れ込んできた
「あぁ…っ…」
混乱しそうになる意識をどうにか落ち着けて、一気に乱れた呼吸を整えて海部はゆっくりと記憶を掘り起こす
(…あぁ…そうだ、私…死のうとして…)
彼女は、夢の中で結城に対して”復讐”しようとしていた…自分をないがしろにする相手を
自分こそがあの部活に対して最も執着があり、愛しているのに
結城と一ノ瀬ばかりがただ報われる状況を…変えたかったのだった
(…簡単なことじゃないか…私がアイツラに服従すればよかっただけじゃないか…それを…
あいつらのせいにして…殺して…私が…死ねば…)
声も上げずに涙を流しながらそんなことを考える
こうなってしまった彼女の思考を止めるものはもう居ない
彼女は今、一人で病室のベットで横になっているのだから
(…そういえば…腕切ってすぐの夢だっけか…鳴滝が私を狙ってきたのは…)
彼女はフッと自分が死のうとして以来みた夢を思い出した
鳴滝が、自分を必要に狙ってくる夢…
『お前は、許されちゃダメなんだ…部活の仲を乱したお前は…』
その言葉を、自分に言い聞かせるかのように海部は繰り返す
(一ノ瀬は…言ってくれた、誰が悪いってわけじゃないって…
でも、アイツは平気でおべんちゃらを言うような奴だ、アレだって…)
夢の中で一ノ瀬の説得は届かなかったのだろう、彼女はそれをただの嘘だと切り捨てて考えていた
(…結城は…まぁ、アイツは元から私を助けるつもりなんてなかったんだろう…
じゃあ…なんであいつがいたんだ、京くんが呼んだわけでもあるまいし…)
その理由にふと、心当たりが浮かんで、海部は自虐的に声を上げて笑う
「あぁ…私が助けて欲しかったのか…」
彼女も結局、一ノ瀬と結城という存在が羨ましかった、それだけなのだろう
それでも…それを認めてもなお彼女は正面からそれを言う気持ちはなかった
(…こんなこと…こんなこと考えてるの知られるくらいなら…死んだ方が…でも…失敗したし…)
ただグルグルとマイナスの方へと引っ張られる意識をどうにか正常に戻したかった
これ以上こんな姿を晒してしまえば、一ノ瀬や結城にあきれ果てられてしまうのは目に見えていたからだ
(…今は…寝よう…そのほうがいいんだ…)
と目を無理やり閉じてその後意識を沈めようと30分以上自分と格闘していた…