村の小娘の独り言。
あなたの世界が綺麗なのは、あなたの心が美しいから。
あなたの世界が楽しいのは、あなたの心が弾んでいるから。
所詮私なんて。ただの村娘なんて。
希望も持たず、夢も見ない。
高望みしない。
わがままを言わない。
今のままで十分。
今のままで幸せ。
可もなく不可もなく。
ただただ平和に、安定した生活。
彼女らのように叶わぬであろう夢を見ることなんかできない。
彼女らが言うように、この世界に希望があるなんて思えない。
雲を裂き、海まで伸びる青天が私だけのものだとは思わない。
自身は家畜である。
その家畜の主であるどこぞの人間もまた家畜である。
家畜の家畜の家畜の家畜の‥‥
その底辺である人間にこれ以上の幸福を求める権利なんてあるのだろうか。
家畜は家畜らしく家畜らしい一生を終える。
家畜がその一生を満ち足りたものとして終えたいなら。
自身が家畜であることに気がつかないこと。
それが基本的な条件である。
もうひとつの方法。
家畜でなくなること。自分が家畜でないと認識できるまでの幸福に恵まれること。
ね、自分は一生家畜。
気がついてしまっている。
忘れることもできない烙印。
だから
きっとこのことに気がつかない彼女たちは幸せなのだろう。
無知であることが幸せの第一歩である。
そう、無知であればこそ余計なことに気がつかずにすむ。
過ぎた好奇心は世界を壊す。
だから‥‥
だから私は馬鹿になろうと思う。
忘れればいい。思い出せなければいい。その心がその記憶がその意識がその感情がその未来がその視界がその世界がその顛末が。
わからなくなるほどに馬鹿になってしまえばいい。
うふふふふ。
あはははははははは。
うひひ、ふへへへへへへ。きゃはははははははははははははははは。
あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは。
‥‥はぁ。
できるはずもない。
呆けても狂っても刻み付けられたしるしがはがれることはない。
なら、せめて平穏に。安穏に。
与えられた仕事を単調にこなし、ただ機械的に動くことが今の私にできることである。
かわいそうだと思ったあなた。
私を救えるの? 助けられるの?
できるならしてほしい。私にはできない。
外にいる誰かからの手助けがなければ私のこの世界が変わることはない。
いつだって無表情に。無感情に。
そんな私を変えられるならむしろしろ。
期待もせずにまっていよう。
それまでは
機械のように、歯車のように、家畜のように、ときどき狂いながら。
ただ、決められた日々を生きていこう。
でもとりあえず注告。
まだ気がついていないあなたは何も考えず、ただの家畜でいなさい。
その先にある未来はきっと幸せよ?