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サイレン

作者: 口羽龍
掲載日:2026/07/12

 ある夏の週末の事だ。達之(たつゆき)は渓谷沿いの道を走っていた。この辺りは人気が全くなく、森のせせらぎと川の流れる音しか聞こえない。すれ違う車は全くなく、忘れ去られた道のように見える。とても自然豊かな場所だ。自然の営みを肌で感じる事ができて、本当に素晴らしいな。


「気持ちいいなー」


 車の中で、音が全く聞こえないが、外からの景色でそれが伝わってくる。本当に魅力的だな。ここに住みたいと思うぐらいだが、そうはいかないだろう。


「ちょっと降りよう」


 達之は疲れたので、少し休む事にした。達之は道路の少し広がった場所に車を停めた。ここはおそらく、行き違いのための空間だろう。その下には、渓谷が見える。


 達之は車から降りた。思った通り、森のせせらぎと川の流れが聞こえる。とても穏やかな場所だな。この辺りには、かつて集落があったそうだが、今はもう誰も住んでいないようだ。いつ、ここから人がいなくなったのかわからない。恐らく、過疎化だろう。


 達之は渓谷を見た。本当に素晴らしい場所だな。ここでキャンプをしたら、最高だろうな。いつか、家族と一緒にここでキャンプがしたいな。


「きれいな渓谷だな」


 達之は川べりまでやって来た。川はとても透き通っている。これぞ清流って感じだ。都会とはまるで違う。これが川のあるべき姿なんだな。


「思わず見とれてしまう」


 と、どこかでサイレンが鳴った。一体何だろう。


「あれっ、この音は何だろう」


 達之は思った。これは何らかの災害の危険を示すサイレンだろう。この辺りは人気がないのに、どうしてサイレンが鳴るんだろう。どうしてか全くわからない。それに、今日は快晴だ。スマホで確認したが、地震速報もない。何事だろうか?


「晴れてるのに、どうしてだろう」


 サイレンは鳴り終わった。達之は首をかしげた。本当に何だろう。どうしてこんなのが鳴ったんだろう。


「まぁいいか」


 達之はすっかり疲れが取れた。早く家に帰らないと、家族が心配する。


「さて、帰ろう」


 達之は車に乗り、また走り出した。車は森の中の道を進んでいく。とても自然豊かな場所だな。達之は感動していた。


 と、達之は後部座席に誰かがいる気配を感じた。誰だろう。


「えっ!?」


 達之はバックミラーを見た。だが、後部座席には誰もいない。おかしいな。誰かがいたような気配がするんだが。


「まぁ、いいか」


 達之は全く気にせず、家に向かって車を走らせていた。家まではあと2時間ぐらいかかる。早く帰らないと。


 達之は知らなかった。その後ろに、水でびしょぬれになった老婆が座っているのを。




 2時間ほど走って、達之は家に帰ってきた。達之の家は2階建ての普通の一戸建てで、達之と両親の3人暮らしだ。達之が生まれた頃に建てたという。


「ただいまー」


 玄関に入ると、母がやって来た。母は晩ごはんを作っているようで、キッチンからはいいにおいがする。


「おかえりー」


 達之は2階の自分の部屋に向かった。今日は遠くまでドライブをした。晩ごはんまで、少し休もうと思っているようだ。


 達之は部屋に戻ってきた。リュックを背中から降ろし、ベッドに横になった。


「ちょっと寝るか」


 達之は目を閉じた。達之は知らなかった。あの老婆が、ここまで来ているのを。


 達之は夢を見た。そこは、人里離れた集落だ。いったいここはどこだろう。達之は首をかしげた。全く行った事がない場所のようだ。どうしてここの夢を見ているんだろう。


「うーん・・・」


 達之は辺りを見渡した。ここがどこなのか、わからない。


「あれっ、ここは?」


 達之は窓から外を見た。外の景色を見て、達之は感じた。今日行った渓谷の辺りだ。この辺りには集落があったという噂らしいが、その集落だろうか?


「今日行った場所だ!」


 突然、サイレンが鳴った。そのサイレンは、あの時聞いたサイレンと一緒だ。それを聞いて、集落の人々は戸惑い、早く逃げようとしている。


「サイレンが鳴ってる・・・」

「逃げて! 逃げて!」


 一体何の事だろう。達之は首を傾げた。状況が全く理解できない。


「えっ!?」


 達之は家から飛び出した。これは大変な事が起きるに違いない。


「土砂崩れが起きるかもしれないの」


 土砂崩れが起きるとは。これは大変だ。早く逃げないと。


「わ、わかった!」


 逃げようとしたその時、土砂が迫ってくる。まさか、あのサイレンは、土砂崩れが起きるサイレンだったのか?


「えっ!?」


 達之はあっという間に土砂に飲み込まれた。その近くの人々も土砂崩れに巻き込まれていく。


「うわああああああ!」


 達之は目を覚ました。夢だったようだ。達之はほっとした。夢でよかった。


「夢か・・・」


 だが、達之は思った。あの夢は、いったい何だったんだろう。自分はどうして、こんな夢を見てしまったんだろう。


「何だったんだろう」


 と、達之はある事に気が付いた。布団がびしょぬれになっているのだ。尿かと思ったが、それらしき匂いがしない。どうやら、汗か水のようだ。それに、全身が雨をかぶったかのように濡れている。


「えっ!? 濡れてる・・・」


 達之は呆然となった。まさか、あの夢の中の雨をかぶったのか?


 達之が通った渓谷の近くには集落があり、その日は土砂崩れが起きた日だったという。その土砂崩れで、集落の人々は全滅し、集落は一夜にして消滅したという。それ以来、毎年その日、土砂崩れが起きた時間、その辺りではどこからともなくサイレンが鳴るという。

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