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21/祈祷:第一聖女都市《聖女騎士》(1)

 ついにここまで辿り着いた。


 聖女都市の中でも《第一聖女都市》は最も大きな都市だ。巨大な正門に近づけばそれだけで様々な人が見える。


 大きな馬車を引く者や、廻廊(ダンジョン)から無事に帰還した探求者か――白い法衣を着た者はいない。《聖女》の姿は見えない。《一桁位》がいれば探す手間も省けるから助かるのだが。


 ルリリルとイズクは少し離れたところから正門をじっと見つめていた。他の町や都市と比べれば最大級の都市であるが故にやはり警護は厳重。


 正面から一点突破で中へ入るのは難しい。身元を証明する物も残念がだ持ち合わせていないし《第六位》は《魔女》とされる。


 それでもここに来た理由がある。


「聖女さまはどうして第一聖女都市に?」

「情報が欲しくてね」


 廻廊(ダンジョン)を片っ端に見つけては潜り《聖女》を探していた。その中に《一桁位》が潜るほどの危険度の高い廻廊(ダンジョン)は未だに見つけられておらず情報が無い状態での行動に限界が来ていた。


 ならば行くべきは探求者たちのギルドであり、最も巨大な都市ならば《堕天》の情報も廻廊(ダンジョン)の位置情報も欲しいものは全て集まるであろう場所。


 だが、ここに来る途中で出会ってしまった《第四聖女騎士隊》のせいでイズクも慎重にならざるを得なかった。《第四位》はイズクの存在を知っている。


 イズクがこの世界にいる以上、イズクを裏切った《一桁位》に対して《第六位》が何を望んでいるのかは明白だろう。


 死んだはずの《魔女》がまだこうして現世にいるということを少なくとも《第四位(クロウディア)》は把握している。


「あ、あの!!」


 そんなときルリリルは手を上げる。黒い瞳がイズクをジっと見つめたまま、


「様子を見に行ってもいいでしょうか?」

「え? でも……だいじょうぶ??」


 イズクもルリリルも一応は顔を隠れるようにフードのついたマントを被っているが、それでもルリリルは大きな耳がフード越しでもわかるぐらいに盛り上がっている。


「都市の中に入れなくても、なにかいろいろ情報がわかるかも……なんで、どうでしょう??」


 今までのような人族がいるような場所に対して不安や恐怖を抱いていたはずのルリリルの面影は完全に消えてしまっている。


 ただイズクのために何か役に立てないかと――そのためだけにイズクに行動の許可を貰おうとしている。


「じゃあお任せしていいかな。でも何かあればすぐに帰って来るんだよ。お願いね?」

「はい! じゃあ、ちょっと行ってきますね!!」


 イズクの言葉に表情がぱーっと日が昇るように明るくなるルリリルはイズクの許可を貰ったと同時に獲物を捕まえるように目を細め、成果を得るために都市の入口付近まで駆け抜けていった。


 すごい速さだった。黒猫のように疾駆するその姿は矮躯でありながらも立派で、なんとも頼りになる信者であろうとイズクも誇らしかった。


「ルリリルが帰ってくるまで……大人しくしておこうかな」


 そんな肝心のイズクはルリリルに頼る形で、その場から動かずにじっとしている。


 しかし、


()()()()()()?」


 背後から突然、声を掛けられてイズクは瞬時に振り返る。いつの間にいたのか、イズクは気が付かずにいた。


 そこには銀髪の青年が立っていた。腰には他の探求者が持っている剣とは違う変異の剣を装備していた。しかしそれ以外は特に軽装だ。にも関わらず銀の手甲だけが不釣り合い。


 しかしイズクはフードで顔を隠したまま視線を合わせず、


(誰……だ?)


 その男の素性をイズクは知らない。


 だが気になるのは銀の髪や長剣でもなく黒い瞳孔に、白い瞳――イズクとは真逆である。イズクも今まで生きて来てそんな瞳の人間に出会った記憶はない。


「聖女都市へ……行きたいのか?」

「……ええ」


 そして目が合う。


 イズクの瞳は黒く、それはイズクの事情を知らぬ者が見れば《色無し》と判断できる。黒い瞳は《奇跡》を持たぬ者の証。


 世界の《蓋》にされ、腐れた竜をその身に宿す前のイズクの瞳は金色に煌めいていたことを覚えている者などいない。


 しかし《魔女》と判断されてしまえば世界は否応無く混乱することだろう。直ぐに討伐の対象として処断されてしまう。


 だが容姿だけは当時と比べてその身に《七虹》を宿したことで背が大きくなり、髪も長く、瞳も黒いお陰で別人のように見えると思いたかった。


「俺は……探求者――」


 だが青年はイズクの瞳を前にしても侮蔑することはせず、そして一歩前へとイズクの元へ迫る。


「……アルフォーリア・エンドスケッジだ」


 ただアルフォーリアと名乗る男は真っ直ぐにイズクを見据えていた。

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