ある女
…思いっきり、行き当たりばったりの物語です。
初心者丸出しなので、目に余る処は多大にありましょうが、どうぞよしなにお願い致します。
もちろん、お叱りやアドバイスは嬉々として頂戴致します。
「さて…」
ぐるっと辺りを見回す。幾つもの段ボールが積み重ねられた部屋。数日前に引っ越しを済ませたばかりで全然手をつけていない。やる前から鬱々する気を何とか奮い立たせて腕捲り。じゃないと必要な物とかどこにあるか分かりゃしない。
あたしがここに引っ越した理由は単に現実逃避だった。仕事や私生活で煩わしい人間関係や、新人時代とは違い日々の生活にもぬるま湯に浸かって折り合いをつけて過ごす事にも逃げたかった。そんな時、遠縁の親戚が家を持っていて借り手を探していると耳にした。別段、必死こいて借り手を探している訳ではなく、いないならいないで取り壊すつもりでいたらしい。古民家だと聞いて興味を持ち、訪ねていったところこれがナカナカ。囲炉裏も使おうと思えば面倒臭いがセットさえすれば使える。土間なのに台所は現代文化バッチリ。所々チグハグながらも現代人としては好ましいので嬉々として受け入れる。とまぁ早い話気に入って。仕事をどうしよう、こっから通勤はかなりキツいぞ、と悩んでいたところあっさり倒産。これはもう引っ越すしかないでしょ と浮き足たちながら半ば後先考えず此方にやって来た、ということになる。新しい我が家は隣県、と言っても元居たところも此方も県境だった為さほど距離は離れていない。まぁ此方のが若干、緑が多いなと、民家もそこそこだな、と思うぐらいか。夜中に元気に追いかけっこするいい大人達がいないことは、大変好感できるところだ。
「どっから手をつけるべきやら…」
引っ越す経由を思い起こすも、ただの逃げでしかない。目の前の荷物が片付くはずもないので現実に戻ることにした。