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第47話:神器争奪戦

ゴゴゴゴゴ……。

数千年の沈黙を破り、地下神殿の巨大な封印の扉がゆっくりと開かれていく。

その隙間から溢れ出すのは、純粋で圧倒的な力の奔流。

ゼノもフィオラも、そして魂狩りのギデオンでさえも、息をのんでその光景を見守った。


扉の奥は部屋ではなかった。

まるで宇宙空間そのものを切り取ってきたかのような、星々が輝く異次元の空間が広がっていた。

そしてその中央。

無重力の中を静かに漂う、一つの巨大な水晶。

その水晶の内部に、それは封じられていた。

十字の形をした美しい白銀のつか

それはかつて神を討つために作られたという、『神殺しの神器』の中心部分そのものだった。


「おお……おおお!」

ギデオンが狂喜の声を上げた。

その目はもはや科学者の探求心だけではない。

子供のような独占欲に、ギラギラと輝いていた。

「素晴らしい! これこそが神々の技術体系の根幹! 我が研究の集大成となる至高のサンプル!」

彼は部下たちに絶叫した。

「何をしている! 行け! アレを確保しろ! アレは我々のものだ!」


その号令を合図に、静寂は破られた。

魂狩りたちが一斉に異次元空間へと飛び込んでいく。

彼らは足場のない無重力空間を、魔力による推進で巧みに移動し、神器へと殺到する。


「……行かせませんわ!」

フィオラもまた後を追う。

彼女は壁を蹴り、その反動で宙へと身を躍らせた。

ゼノも続く。

こうして世界の秘密が眠る神聖な空間で、神器を巡る三つ巴の争奪戦が始まった。



無重力空間での戦いは熾烈を極めた。

地上での常識は一切通用しない。

フィオラは巧みな剣さばきで、魂狩りの戦闘員たちを次々と撃退していく。

だが無数の瓦礫が漂うこの空間では、思うように身動きが取れない。

すぐに数で勝る魂狩りたちに囲まれてしまった。


一方、ギデオンは自らは戦わない。

彼は入り口付近の安全な場所から戦況を分析し、的確な指示を飛ばしていた。

「……ふむ。剣聖のなり損ないはなかなかの動きだ。だがその動き、予測可能。戦闘員三号、四号。お前たちの魂の情報を一時的に書き換える」

彼は懐から取り出した奇妙な装置を起動させた。

彼のユニークスキル《魂の再設計ソウル・リモデリング》。

「――恐怖心を削除。連携思考を最適化。これで、お前たちは完璧な戦闘人形だ」

ギデオンの指示を受けた二人の魂狩りの動きが一変した。

感情を失い、ただ効率的にフィオラを追い詰める冷酷な機械へと。


ゼノはその光景を見て歯噛みした。

このままではフィオラが危ない。

そしてこの無重力空間では、自分の得意な体術も活かせない。

どうすればこの状況を覆せる?

彼は自分と神器の位置関係を冷静に分析した。

神器に一番近いのは魂狩り。

次にフィオラ。

自分が一番遠い。

このまま追いかけても間に合わない。

レースでは勝てない。

ならば。

ゼノの頭脳が常識の外の奇策を閃いた。

(……俺が神器の元へ行くのではない。神器を俺の元へ来させればいい)



ゼノは近くの大きな瓦礫の裏に身を隠した。

そして懐から、あの火口で手に入れた神器の欠片、槍の穂先を取り出した。

彼はその穂先を強く握りしめる。

そしてもう一方の手で、胸元の銀のロケットに触れた。

彼は目を閉じ、全ての意識を集中させた。

瞬間集中モーメント・フォーカス》。

だが、それは身体能力のためのものではない。

自らの規格外の魂、そのものの純粋な意志の力を一点に集束させるための精神集中。


彼の魂が叫ぶ。

来い、と。

お前の仲間はここにいる、と。

お前を本当に使いこなせる主は、ここにいる、と。


その魂の呼び声に共鳴した。

空間の中央で静かに漂っていた神器の柄が、ピクリと震えた。

そしてゆっくりと、しかし確実にその向きを変え、ゼノのいる方向へと動き始めたのだ。


「な、なんだと!?」

神器にまさに手をかけようとしていた魂狩りが、驚愕の声を上げる。

「目標が移動します! ギデオン様!」

「馬鹿な! アレはただの物質のはず! 自律的に動くなどありえん!」

ギデオンの冷静な分析にも、初めて焦りの色が浮かんだ。


神器はその速度を増していく。

魂狩りたちをすり抜け、まるで主の元へと帰る忠実な猟犬のように、一直線にゼノへと向かってくる。


「――させるか!」

ギデオンが叫ぶ。

だが、もう遅い。

神器の柄はゼノの目の前まで迫っていた。

彼はそれに向かって手を伸ばす。

穂先を持った左手。そして空っぽの右手。

二つの神器が一つになろうとした、その瞬間。

凄まじい光と衝撃が、ゼノの体を貫いた。

脳内に何千年も前の古代の記憶が、奔流となって流れ込んでくる。

神々への怒り。仲間との絆。星を砕き、大地を揺るがす絶大な力。

そのあまりにも膨大な情報量に、ゼノの意識は一瞬焼き切れそうになった。


「――ゼノ!」

フィオラが駆け寄ってくる。

彼女は戦闘人形と化した魂狩りを退け、ゼノの元へとたどり着いた。

ゼノは、その手に一つの武器を握りしめていた。

穂先と柄が融合し、それは一本の美しい白銀の槍の形になっていた。

不完全だが、それでも神を殺せるという伝説の武具。

だがその代償は大きかった。

ゼノはそのあまりの力に意識を保つのがやっとで、その場に立ち尽くしている。


「……おのれ、ブランクめ!」

ギデオンが怒りに顔を歪ませ、残った全ての魂狩りに最後の命令を下した。

「もはや生け捕りにする必要はない! 神器ごと、あの小僧を破壊しろ!」

絶体絶命。

フィオラは動けないゼノを背に庇い、剣を構えた。

最後の抵抗。

彼女は己の全てを懸けて仲間を守る覚悟を決めた。

神器争奪戦は今、最も過酷な最終局面を迎えようとしていた。

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