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第23話:集う転生エリートたち

「――第一次試験、開始!」


ガウェイン隊長の号令と共に、巨大な転移ゲートが百名を超える受験者たちを無慈悲に飲み込んでいった。

ゼノが次に目を開けた時、そこに仲間たちの姿はなかった。

彼は一人、薄暗く湿った石造りの廊下に立っていた。前後左右どこを見ても、同じような景色が無限に続いているように見える。


『――グハハハ! ようこそヒヨコども! ここは貴様らのなまっちょろい絆を一度断ち切るための場所、『断絶の迷宮』だ!』


迷宮全体にガウェインの楽しそうな声が響き渡る。


『第一次試験の目的はただ一つ! このクソったれな迷宮の中央にある集合地点にたどり着くこと! バラバラにされた仲間を探すもよし、新しい仲間を作るもよし、気に食わねえ奴をここで叩き潰すもよし! 全てはてめえらの自由だ!』


そのあまりにも乱暴なルール説明に、ゼノはため息をついた。

(……なるほどな。個々の能力と極限状況下での判断力を見るというわけか)

彼はすぐに思考を切り替えた。

まずやるべきことは現状の把握、そしてリィナとフィオラとの合流だ。

この迷宮はただ広いだけではない。魂を惑わす特殊な魔力が満ちている。下手に動き回れば方向感覚を失い、永久に彷徨うことになるだろう。

ゼノは壁に持っていた小刀で小さな印を刻むと、五感を最大限に研ぎ澄ませながら慎重に歩き出した。



その頃、迷宮の別区画では転生エリートたちがその規格外の力を遺憾なく発揮していた。


「――雑魚が」

ユリウス・フォン・クラインは、彼の前に現れた十数体の影でできた魔獣シャドウビーストの群れを冷ややかに一瞥した。

彼はその白銀の剣を静かに構える。

次の瞬間、彼のユニークスキルが発動した。

《光速のライトスピード・ブレード》!


ピカッと、迷宮の闇を一瞬だけ昼間のように照らし出す閃光。

そして光が消えた時、そこには綺麗に真っ二つに切断された魔獣たちの残骸が転がっているだけだった。


「……ふん。ソウルガードの試験と聞いて期待していたが、この程度か」

ユリウスは剣を一振りして血糊を払うと、まるで庭を散歩するかのように悠然と迷宮の奥へと進んでいった。

彼の魂に刻まれた『俊敏な剣技』の歴史は、この程度の障害を障害とすら認識させない。


また、別の場所。


「ひゃあああ!?」

新生ニューボーンのティナは悲鳴を上げていた。

彼女は曲がり角を曲がった途端、足元の床が抜けるという古典的な落とし穴の罠にかかってしまったのだ。

(もう、ダメ……!)

彼女が落下を覚悟したその時。

どこからともなくゴトリと、天井から小さな石が一つ落下した。

その石はまるで狙いすましたかのように、罠の作動装置の歯車に挟まった。

ガキンと鈍い音を立てて、罠はその動きを停止する。

ティナは数センチ落下しただけで九死に一生を得ていた。


「ら、ラッキー……!」

彼女は胸を撫で下ろす。

彼女のユニークスキル、《初心者の幸運ビギナーズ・ラック》。

それは世界の理にまだ染まりきっていない新生の魂がごく稀に引き起こす、確率を無視した奇跡。彼女自身はその力を全く自覚していなかった。


そしてまた、別の区画。

数名の平民出身の受験者たちが巨大なミノタウロスに追い詰められていた。

「うわああ、助けてくれ!」

「だめだ、こいつには勝てねえ!」

仲間たちが次々と逃げ出していく中、ただ一人その場に仁王立ちになる大柄な青年がいた。

『不倒の盾』の二つ名を持つオリヴァー・クロンカイト。代々『聖騎士』の魂を受け継ぐ実直な青年だ。


「――ソウルガードを目指す者として、弱き者を見捨てることなど断じてできん!」

彼はミノタウロスが巨大な斧を振り上げたのと同時に、その盾を構えた。

「我が魂にかけて!――《聖域のホーリー・イージス》!」

彼の盾が神々しい光を放つ。

ミノタウロスの全力の一撃がその光の盾に叩きつけられるが、キィンという甲高い音を立てて完全に無効化された。

その隙に他の受験者たちは命からがら逃げ出すことができた。

オリヴァーは盾を構え直すと、再び巨大な敵と対峙した。彼の戦いは常に誰かを守るためのものだった。



一方、ゼノは派手なスキルを使うことなく着実に迷宮を進んでいた。

彼は罠を超感覚や幸運で見破るのではない。

壁の僅かな変色。空気の微かな流れ。床に積もった埃の不自然な途切れ。

その些細な情報を拾い集め、論理的に危険を予測する。

魔獣と遭遇すれば正面から戦うことは極力避けた。

地形を利用し、見つけた罠へと誘い込み自滅させる。

それは力なき者が知恵と勇気だけで強者を打ち破る、最も原始的で、しかし最も確実な戦い方だった。

彼の一度きりの生を生き抜くために磨き上げてきた生存術サバイバル・アーツが、この死の迷宮で真価を発揮していた。


(……リィナはおそらく気配を殺して隠れているはずだ。フィオラは逆に敵をなぎ倒しながら進んでいるだろう。俺がまず見つけるべきは……)

ゼノは目を閉じ、思考を巡らせる。

その時、彼の耳が微かな魔力の波長を捉えた。それは攻撃的なものではない。まるで助けを求めるような、か細い波長。

ゼノはその波長を頼りに慎重に進んでいった。

そして行き止まりの小部屋で、瓦礫の陰に身を潜めているリィナの姿を発見した。


「リィナ!」

「ゼノ……!」

リィナは彼の姿を認めると、安堵の表情を浮かべた。

「……よかった。あなたの魂の『色』を感じたの。周りのパニックに陥っている魂と違って、あなたの魂だけはとても静かで穏やかだったから、すぐに分かったわ」


ゼノの冷静な論理的思考。

リィナの超感覚的な魂魄共鳴。

二人の全く異なる能力は、この極限状況下で最高の相性シナジーを生み出していた。



ゼノとリィナは協力してフィオラを捜索した。

やがて迷宮の一角から激しい戦闘音が聞こえてくる。

駆けつけると、そこには数体のゴーレムを一人で相手にしているフィオラの姿があった。

彼女の剣筋は、以前のような魂に任せた流麗なものではない。

一撃一撃、自分の意志を込めるような、荒々しくも力強い新しい剣技だった。


「フィオラ!」

「二人とも、無事でしたのね!」

三人は再び合流を果たした。


やがて三人が迷宮の最深部にたどり着くと、そこは巨大な円形の闘技場のような空間になっていた。

そこにはすでに第一次試験を突破したであろう数十名の受験者たちが集っている。

ユリウスは腕を組み、退屈そうに壁にもたれかかっている。

ティナはオリヴァーに助けられた礼を言っている。

集う、転生エリートたち。

その誰もが自らの魂に絶対の自信を持つ強者たち。


その闘技場の中央に、ガウェイン・アームストロングが腕を組んで仁王立ちになっていた。

彼はゼノたち三人の姿を認めると、にやりと笑った。

「おう来たか、ヒヨコども! 思ったより生き残りが多くて安心したぜ!」

彼は集まった全ての受験者たちを見渡した。

「だがな、安心するのはまだ早い。第一次試験はただのウォーミングアップだ」

ガウェインは楽しそうに続けた。

「本当の地獄は、ここからだぜ?」


その言葉を合図に、闘技場の全ての扉が重い音を立てて閉ざされた。

集められた転生エリートたちの本当の戦いが、今、始まろうとしていた。

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