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ガツンと大豪邸はテレビ農協の人気番組

 イッペイの保証動物には私とニャームズが拇印(肉球)を押した。

 言わずとしれた名探偵のニャームズとその相棒が返済を保証すると言うのだからソシナもアノもヒカルもミヤサコも黙るしかなかった。

 これによってイッペイは借金の取り立てから解放された。


 ニャームズはイッペイの借金62ドリを4年で返済するプランを立てた。

 返済が終わる頃にはヨボヨボの老犬だろうが、ニャンブル依存を続け一生かかっても返済出来ない借金を負うよりは何100倍とマシだと思う。


「やあ」


「お……おう」


「ニャームズの言うとおりだ。お前からは嘘つきの匂いがする」


「……はぇぇ」


 イッペイのニャンブル依存の監視&返済の為の仕事の仲介動物はジャッジに託された。

 ジャッジはヒグマの様な色合いの凶暴な目つきのジャーマン・シェパードで、怖すぎて誰も近づかない事から『アーロン(孤独な)・ジャッジ』と呼ばれていた。

 私とニャームズは知っている。

 ジャッジが怖いのは見た目だけだ。

 その正体は人間好きのジェントル・ワンだ。

 誰にでも穏やかに『やあ』と挨拶し、頼まれもしていないのに老人ホームなどの介護施設等のボディーガードをしている。

 老人達はジャッジを愛し、ジャッジもまた彼らを愛しており、飼い犬として求められたが彼はそれを拒み続けている。


「俺は嘘つきだからな」


 ジャッジの口癖だ。

 どんな嘘をついた過去があろうと彼が今、ジェントルワンなのは事実なのだから素直になればいいのに。

 シューヘイは一日に十時間。休みの日は半日は寝るので、その間にイッペイはジャッジの手伝いをしたり、ドーサツ(動物の警察)に食料を届けるウーバーイーヌをした。

 シューヘイの通訳とアルバイトをしながら数カリカリ(動物界の最低通貨)を稼ぎながら少しずつ借金を返済する日々。

 楽な生活ではないが、イッペイの顔つきはみるみる逞しくなった。

 そのかいあってか、彼はかねてからお付き合いしていた一般ドッグと結婚した。

 62ドリも借金がある中年犬によく彼女が出来たものだ。

 まぁ62ドリも借金があるのにイッペイに付いていくということはよほどイッペイが好きなのだろう。

 私から言うことはない。少し悔しいだけだ。


「借金を払い終わったら結婚式をするつもりです。ニャームズさんもニャトソンさんも来てくださいね」


 どことなく間延びしてだらしなかったイッペイの話し方もキビキビしたものに変わった。


 私は彼の結婚式が心から楽しみである。



『『シューヘイ! シューヘイ! シューヘイ!』』


 シューヘイタウンでのシューヘイの人気はあい変わらずだ。

 イッペイと一緒に街を走ればそこらかしこから歓声が贈られる。

 残念ながらエンガワスはプレーオフには進めなかったが、シューヘイはもう来シーズンに向けてトレーニングをしている。

 来年は名門ドジョースでプレイするのだ。

 シューヘイが気合が入るのも当然であろう。


何もかも上手くいってるように思えたが、気になることが2つあった。


 イッペイの様子を見にシューヘイの家に行ったある日。シューヘイの電話に留守番メッセージが入っていた。


『シューヘイ。父さんだ。元気か?』


「元気か気になるなら帰ってきなよ」


 シューヘイはタオルで汗を拭きながら留守番電話と会話する様に話した。


『……お前とイッペイには苦労かけるな』


「はいはい」


『酒はどうだ? 辛くなったら酒に頼れよ?』


「そんなアル中みたいな生き方嫌だよ」


『愛してるよ』


「僕は嫌いだ」


 シューヘイはその時、とても悲しそうな顔をしていたのだ。


 もう一つの気になることはニャームズである。

 彼は日々多忙で鬱になりかけている様に見えた。

 額を壁に付けて黙っていたかと思えばヒャッホウと飛び上がって叫んだりする。

 暗い部屋でボーーっとテレビを見続けている事もあった。

『世界行きたい団』だの『ガツンと大豪邸』だのはまだ分かるが『打倒! 佐藤と田中! 12時間ぶっ続け苗字と名前ランキング』とかいう猫には全く関係ない番組を徹夜で見ていた時は正直怖かった。

 何が彼をそんなに憂鬱にしているのだろう?

 


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