表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/22

最終回後編〜二刀流の復活〜

 2025年。我々動物達は2歩下がる事を選んだ。 

『よく考えたらめんどくさい』という理由でCOINもNシステムも無くなった。

 急激な進化は生物の退化を促す。 

 それでいいのだ。


 8才。立派な老猫になった私がテレビの前で肉球をペロペロ舐めているとDコピンの飼い主がテレビに出ていた。

 彼をTVで見ない日はないな。


『オータニ! アーダコーダ! ナンタラカンターラ!』


 オータニはやきうとやらで打ったり投げたりしている。

 器用だなぁ。

 やきうが終わったら次はカバディーが始まった。

 私は年を取った事もあるのか以前ほどカバディーに興味はない。

 毎日ボーっとやきうからのカバディーを観ている。

 エンガワスVSドジョースか。

 いいカードじゃないか。


 エンガワスの監督のノモヒデオとドジョースのクリヤマがガッチリと握手をした。

 

『はじまりました! ロサンゼルスドジョースタジアムにてエンガワスVSドジョース! 今日はドジョースの厳しい育成ファームからドジョースのレギャラーに成り上がった期待の新人がいきなりレイダー! ポイントなるか!? 試合開始!』


 すごい盛り上がりだなぁ。

 

『ミズハラ・シューヘイ! 背番号17』


ん? どこかで聞いたことがある名前だ。

 猫も8歳になると物忘れがひどい。

 シューヘイ? 誰だっけなぁ。


『『シューヘイ! シューヘイ! シューヘイ!』』


『カバディーカバディーカバディーカバディーカバディー……』


 おお。最後尾ラインまで走って誰にもタッチされずに自陣に戻ってきた!

 彼やるね。


 試合はドジョースが勝った。

 期待の新人が攻めでも守りでも二刀流の活躍を見せてくれた。 

 今日のヒーローはもちろん彼だ。


『今日8月26日はインターナショナルドッグデイということもあり、ヒーローインタビューはワンちゃんに行って貰います!』


 マイクを持った犬がシューヘイに近づきシューヘイは犬のマイクの高さに屈んで話をした。

 あの犬もなんだか見覚えがある。


『サンキュー! ロサンゼルス! 僕は一度皆さんの期待を裏切ってしまいましたが、またこの舞台に帰ってこれました!』


『『シューヘイ! シューヘイ! シューヘイ!』』


『『イッペイ! イッペイ! イッペイ!』』


 犬までコールを贈られている。

 人気者の犬なんだなぁ。


『『この勝利を皆さんに! そしてイッペイに! 最後に……名探偵に!』』


 感動的な幕切れじゃないか。

 

「……名探偵? あっ!?」


 いやいやいや。私の物忘れがいくら激しくなってきたと言っても彼は覚えている。

 我が友。ニャーロック・ニャームズがシューヘイの真後ろの観客席にいる!


「ニャトソン。見てるかい? 見てるだろう? 君はいつもこの時間はカバディーを見てるからね。面と向かってはちょっと言えないからここで言う。カバディーの始まりについてのあれは……嘘だ。3年間苦しかったよ。ロスアンゼルスから愛を込めて。ではまた日本で会おう」


 ここで放送は終わった。

 衝撃で記憶が色々と蘇ってきた。

 あの言葉も思い出した。


『嘘は嘘を呼ぶ』 


「ふふふ。嘘はつくもんじゃないなぁ」  


「ニャーちゃん。お客さん来るからテレビ消すよー?」


「ニャー」


「ありがとう」


 私は飼い主であるフジンに「いいよー」と返事をした。

 彼女は猫語は分からないが私たちは何となく通じ合っている。

 私は猫と人間の通訳イッペイの事を思い出しながら昼寝を始めた。


「……ふふふ。むにゃむにゃ」


 私は今からニャームズの旅の話を聞くのが楽しみでならない。

 とても良い夢が見れそうだ。







2025年。ニャーランド誌掲載。

ニャトソン原案。ヒロモト代筆。


『悲しみの二刀流』



完。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ