灼熱カバディー完結
クリヤマは一度自宅に戻りバッグ3つに三億円を詰めてシューヘイの家に帰ってきた。
「ありがとうございますクリヤマさん。これでシューヘイは助かります」
「いいですよこれぐらい」
人間達がクリヤマに手を合わせ頭を下げている間にニャームズはバッグを開けて覗いた。
やめろよと言いたかったが私も興味がある。
人間の命と交換できる三億円とやらは一体どんなものなのか。
キラキラしているのか、おもしろいのか、可愛いのか?
「これが三億円?」
「そうかな?」
1枚目は驚いた。
片面に着物を着たおじさん。もう片面に2羽の鳥が描かれている。
10000と数字が描いており、真ん中の丸くて白い枠を透かしてみると絵のおじさんがほんのりと見える。
こりゃ美しい絵だなと思ったが、どれもこれも同じ絵だ。
私はニャームズの助手として人間たちの事件にもいくつか関わったが、事件の根っこにはいつもお金の問題があった。
お金が欲しい。お金を返せ。お金にしたい……もういっそお金なんてこの世から無くしてしまえばいいのではないかと思った程だ。
「わからんな。ニャームズ。こりゃ全部おじさんの紙だよ」
「おじさんの紙だね」
私はフルーツが好きだ。たまに爪を刺した瞬間に「うわぁぁぁ!」となるぐらい勢いよくすっぱい汁が出る物もあるが、基本的には楽しい。
どれだけ綺麗に剥いても同じ形の皮はないし、同じ形の果実はない。
私がイッペイの様に人間に意思を伝えられる能力があったら人間にはその事を伝えたい。
人間は美味しいフルーツを作るのが得意なくせにフルーツの楽しみ方が絶望的に下手だ。
「ニャームズ。お金って面白くないな」
「あはは。一瞬だけ面白いよ。なんかツルツルしてるしね。ああ。もう飽きた。うん。これはたしかにつまらない」
「こら。猫たち触るな! では身代金の受け渡し場所に行きましょう!」
犯人が指定してきた場所は人通りの少ない場所にある公衆電話だった。
人間達は車に乗り、動物達はドッグシーに乗ってそこに着いた。
周りが真っ暗なので公衆電話だけが光って不気味で、光にたかる虫たちの羽音が聴こえそうなほど静かだ
まずはイラブがえっちらおっちらと金の入ったバッグを公衆電話のボックス内に一袋ずつ運んだ。
「むっ!?」
イラブが袋を全て置いて離れると公衆電話の電気が消えた。
私は公衆電話の光にジッと目を向けていたので何秒か視界が真っ暗になった。
「シューヘイ!」
公衆電話の光が再び戻ると公衆電話の中に置いた袋は全て無くなっており、代わりにシューヘイがいた。
シューヘイに走り寄るイッペイ。
「イッペイ!」
シューヘイとイッペイの感動の再会。
私はこういうのに弱い。
目頭がツーンとする。
「良かったなぁ……痛いっ!」
頭に何か落ちてきた。この感触はまたCOINか! 私の頭に当たったCOINをニャームズがノーバウンドでキャッチした。
「ふむふむ。よしっ! 行こうぜニャトソン!」
「何事だ!?」
「後で説明する!」
COINを解析したニャームズは私の前脚を引っ張った。
ニャームズがCOINを懐に仕舞う前にチラリとCOINのデザインが見えた。
ミニチュアシュナウザーだった。