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1-5 side.魔王

 

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『はっくしょん!』

『ひぃゃあ!?』

『うわぁ!?』


彼奴きゃつらは阿呆なのか?」


 板状の魔石に映しだされるそれを眺めながら、あまりの退屈さに欠伸が出た。

 ん? わしが誰か教えて欲しい? フフフ、聞いて驚くなよ。我こそはヴァソィリジ魔大陸が七百九十五代目にして歴代最強の――


「魔王様―。頼まれていたおやつをお持ちしましたー」

「今いいところじゃったのに!?」

「え、あ、何のことかは存じませんが、失礼いたしました」


 軽く頭を下げてから、桃色のポニーテールを揺らして軽食の準備を始めるメイド。本当に申し訳ないと思っているのかは怪しいが……良くも悪くも素直なのが彼奴――アマリアの特徴だ。一見は魔族らしからぬのんびりとした雰囲気。だが、その実歴代の魔王に仕え、一度たりとも死ぬことなく仕事をこなしてきた、今はわしの右腕。


「まあ良い。少し恰好をつけてみただけだ。堅苦しいのは苦手じゃからな」


 椅子に腰をかけ直してから、机上に用意されたカップに手を伸ばして一息つく。


「暇じゃのう……」

「お手隙でしたら、溜まっている書類仕事が沢山ありますのでお持ち致しますよ」

「あー、やっぱりいそがしいかなー」


 適当にごまかして魔石板に視線を戻す。


 事の発端は二週間ほど前。わしを倒そうとする勇者一行はあろうことか城の正面へ続く迷宮ではなく、わしの部屋へ直接繋がる隠し通路から攻めてきた。何の仕掛けもないただの通路だ。大人しく部屋で待ち受けてやっても良かったが、それでは張り合いがない。そこで、スキル【迷宮作成クレアール】を使って隠し通路を洞窟迷宮に仕立て、罠や魔物をその場で組み立てることにした。だがリアルタイムでの生成では簡易的なものしか作ることが出来ない。複雑なものは時間がかかりその間に攻略されてしまうからだ。


「まったく……魔王様ともあろう御方が風邪を召されるなど前代未聞。そのうえ体調を崩された理由が徹夜で遊んでいた、なんて魔王としての示しがつきませんよ」

「いやいや、わし遊んでないからね? ちゃんと仕事してるからね?」

「そう言いながら、引きこもって魔物や迷宮の生成しかやってないじゃないですか。先代は直接軍を指揮し積極的に人里を攻めては、勇者さえも打ち倒す。それはもう見事な民族浄化でしたよ」

「どんな功績もわしに殺されては紙くず同然。分かっているな、アマリア?」


 一瞥をくれてやると、アマリアは姿勢を正して黙った。


 今どき大量虐殺とか古いと思うんじゃよね。

 じゃが、体調を崩したのは良くなかった。スキル【迷宮作成】や【次元直視アフィナシオン】と、その他諸々を同時に使用。平時であれば造作もないそれらは熱暴走を起こした。そして、【次元直視】で繋がった別の世界へ彼奴らは飛ばされた。


 ようやく張り合いのあるやつが現れて楽しかったのじゃが。惜しいことをした。

 【次元直視】はあくまで別の場所を視るスキル。瞬間移動程度なら造作もないが、異世界転移は勝手が異なる。わしの力で彼奴らを戻すことは今のところ不可能だ。最も、彼奴がわしの力を借りたいとは思わないだろう。


 向こうの一日はこちらの四日程度。


「精々簡単に死んでくれるなよ」


 ま、アレもいることだし大丈夫だろう。

 これは、偶然で必然で恣意的な話である。



 ×

魔王「わしの出番短くない!!?? 何?過去に書いたものだから許せ? 貴様調子に乗るなよ!近いうちに痛い目に合わせてくれるわ!」

アマリア「どなたにおっしゃっているのですか、魔王様?」

魔王「次回【再会】 この作品のイメージソングはBAND-MEIDです――ってわしに言わせるな!!」

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