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1-17 side.レオ

「それで、いつ出発する?」


 ふてくされながら突然、エリックが僕たちに向かって訊いてきた。気怠そうな、けれど迷いのないまっすぐな目だ。僕の答えは決まっていた。三人と顔を見合わせると意見は同じ。僕たちに迷いはなかった。


「もちろん、今すぐに!」

「了解」


 慣れた手つきでエリックは【座標転移】の道具を取り出した。


 でもこの道具って、確かパーティを組んでないと――


「転移、サイサリス」


 青白い光が一瞬にして僕たちを包み込んだ。



 






 眩しさに目を閉じた。次に目を開けたとき、そこはすでに酒場ではなかった。

 お城にある長い廊下を思わせる場所。窓はなく薄暗い。壁につけられた洋燈に、僕たちを導くように火が灯った。


「ここがサイサリス……?」

「ああ」


 エリックに続いて僕たちも歩き出す。話によればここは魔王城の一部を参考にしているという。大広間に続くこの通路に魔物は出ないらしいが、自然と気を引き締められる空気が漂っている。

 先が見えなかった廊下も、歩けば奥に扉が見えてきた。その手前に二つの人影が見えた。


「レオ!? どうしてここに!?」

「イーサン……! 無事でよかった!」

「ん? そこにいるのはペペか?」

「そうだけど、どうしてボクのことを知っているんだい?」

「ああ、そうか。この姿だと分からないか。内海海人と、こっちは江狛宙って言えは分るか?」 

「あー! いつだか異世界から来たっていう人間!」


 こっちに向かって走ってくる魔族に、剣へと手が伸びる。けれど、魔族はエリックと槐さんの手を取ってぶんぶんと振った。まるで久々に再開した友人のようだ。


「えー! 見た目すっかり変わっててびっくり! 人間てこんなに変わるんだねー!」

「あ、いや、これは、その……」

「お久ぶりです、ペペさん! 元気そうで何より!」

「どういう状況なんだ、コレ?」


 困惑するイーサンに、僕たちは今までの出来事を話した。


「そうだったのか。実は……」




「魔王から話かけてきた!?」

「オレも驚いたさ。でも、レオ達の話を聞く限り嘘じゃなかったみたいだな」

「やっぱり魔王の仕業か。ならこの奥に……」


 全員が扉を見つめた。


「よし、行こう」


 僕は前に出て扉をゆっくりと押し開く。

 足を踏み入れると広間の壁に沿ってボッと青い炎がついた。

 そして広場の中央にひと際大きな青い炎が姿を現す。


「よくここまで辿り着いたのう」


 中央の青い炎から声が聞こえた。


「魔王様!」

「あれが、魔王……?」

「いや、あれはアミ―の第一形態だ。お前たちの本当の魔王が異世界から遠隔操作しているんだろう」

「久しいのう、海人、宙。まさか再び会えるとは思わなんだ。八十年ぶりくらいか?」

「おれ達の世界じゃ十年も経ってないけどな」

「お久しぶりです、魔王様!」


 エリックと槐さんの二人が魔王と知り合いなのは事前に聞いていたけれど、こんなにも友達みたいに仲が良いとは思わなかった。緊張していた空気がゆるみそうになる。


「状況は把握しておる」


 まるで僕たちを見渡すかのように炎が揺らめく。ふと、目が合ったような気がした。


「レオナルドと言ったか。お主らをその世界に飛ばしたのは間違いなくわしだ」

「っ――! 目的はなんだ!?」

「目的と言われても、そもそもはお主らが攻めてきたからじゃろう。しかも隠し通路から。普通正面から来ない? 内心わしも焦ってスキルを行使したら手が滑った。それだけじゃ。悪いとは思ってるよ? 悪いとは思ってるのじゃが……」


 何を言ってるんだ、この魔王。


「というかニーナ、何故お主までそっちにいるのだ? お主じゃろう、隠し通を案内したのは」

「う、うるさい! お母さんには関係ないでしょう!」


 え? 今、


「おかあ、さん……? え? どういうこと??」


 僕は炎とニーナを交互に見る。ニーナは口元に手をあてていた。


「何じゃお主、知らないで一緒にいたのか。ニーナは魔族じゃぞ。もっとも、わしの胎内から産まれたわけではないがのう」


 ニーナが、魔族……? だってエルフの末裔だって……。


「どういうこと、ニーナ……? 今まで、騙してたって言うのか?」


 ニーナは俯いたままで、魔族ではないと否定して欲しかった。


「ええ、そうよ。エルフっていうの真っ赤な嘘。アタシは魔族。これがその証拠」


 ニーナはケープを外し、突然服のボタンを外した。僕は思わず目を逸らす。おそるおそる横目で彼女の姿を確認すると、その胸元で赤い魔石が輝いていた。


 ニーナが魔族であるという証拠。


「どうして騙してたんだ」


 剣に手が伸びる。


「答えて!」


 ニーナは俯いたままだ。

「……ニーナ、僕と戦え」


「おい、レオ!」「レオさん」「ちょ、ちょっとレオくん……!」


「みんなは黙ってて!」


「……いいわ、その勝負受けてあげる。……もうこの杖はいらないわね」


 ニーナは杖を投げ捨てた。


「どっからでも掛かって来なさい」


 赤い瞳が僕を見る。今までに見たことない、真剣で、怖い顔だった。

 走り出し、剣を振る。右へ左へ彼女はひらひらと躱していく。彼女の口が何かを呟く。僕は咄嗟に後ろへ下がる。僕と彼女の間に炎の柱が立ち上った。


「――!」


 危険を察知して横へ。さっきまでいた場所に再び炎の柱が立ち上がる。それから次々と立ち上がる炎の柱を僕は躱していく。


 柱の隙間から彼女の姿が見えた。僕には魔法が使えない。何とかして近づかないと。

 剣を構え突進。炎の柱を斬り裂く。今度は火の玉が放たれる。それも斬ったり躱したりしながら少しずつ距離を詰めていく。


 後ずさりをする彼女に、らしくない、と思った。いつもなら率先して前に出たがるのに。

 罠? 遊ばれている? 考えてみるけれど、そのどちらもしっくりこない。


「どうして本気で来ないんだ!?」


 剣は、なかなか彼女に当たらない。


魔王「更新はお休みと言ったな。せめて引きのいいところまで載せたい、とのことじゃ。次回【ニーナ】。……わしのこと忘れられてないよね(・ω・`)?」

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