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1-11 side.レオ

「さっさと起きなさい」


 ニーナに杖で小突かれて目が覚める。ニーナとウィズは既に支度を終えているようだ。


「ルシルは?」


 ニーナが首を動かす。


「ギリギリまで休ませてあげようと思って」


 言われるまで全く気配を感じなかった。視線の先には、毛布に包まって静かに寝ているルシルがいた。

 起こさないよう僕も静かに身支度を整える。と言っても、ここは迷宮内。何かあったとき直ぐに対応できるよう、基本的な準備は出来ている。軽く体を動かしてから朝食をとる。


 三人の準備が整ったところで、ルシルを起こす。


 この世界に来て四日目、【断崖絶壁】に潜って二日目の探索が始まった。


 そして。出口を見つけることが出来ないまま二日目、三日目が過ぎていった。


「どんだけ広いのよ!!!???」


「ライラックが最前線の理由に納得がいきますね」

「この鉱石、いくららで売れるかな……」

ルシル(アンタ)って意外と肝が据わってるわよね……」


 便利なことに、この世界の道具鞄は無限に物を入れられる。そのうえ、重さは全く感じない。ルシルはお金になりそうなものを欠かさず拾っていた。


 作戦らしい作戦も思いつかず、作戦会議は終わった。地図を埋めながら地道に攻略するしかなさそうだ。


 この世界に来て六日目、【断崖絶壁】に潜って四日目。進展があった。


「あ、人だ」

「こんな前線に、お前達も攻略組か? 恥ずかしながら、初めて見る冒険者だな」


 いくつかの分かれ道が合流した場所で、迷宮内で初めて冒険者たちと遭遇した。性別や年齢こそバラバラなものの、彼らは一様に青と黒の恰好をしていた。特徴的なのは、盾と月、それと何か植物を象った紋章をつけている。


「僕はレオナルド。サイサリスってとこを目指してる。出口が見当たらなくて困ってるんだけど、何か知らない?」


 最初に話しかけてきたリーダーらしき人に訊ねた。白いひげを生やしたおじいさんって感じだ。けれど200セメスはありそうな身長。がっちりとした体格に鎧を纏い、これまた大きな盾を持っている。おそらく、歴戦の猛者。


「ふむ……」

「ちょっと団長。もしかしたら【紅葬軍こうそうぐん】の連中かもしれませんよ」

「装備的にはそうは見えないが……。よし、単刀直入に訊こう。お前達は【紅葬軍】のメンバーか?」

「こうそう、ぐん……?」

「団長!」


 おじいさんの隣で女の人が困った顔をしているが、おじいさんは気にしていない。


「問題ない。嘘をついている顔とは思えない。それに、奴らは血気盛んなのが多い。もし【紅葬軍】の連中であれば、名乗らず襲ってくるだろ」

「その、こうそうぐん? って何なの?」


 おじいさんだけでなく、相手の人たちみんなが驚いた顔をした。


「ちょいと訊くが、【蒼月騎士団】は知ってるか?」

「ううん、知らない」

「なら【スローライフ】は?【有象無象】は?【ヤドカリの家】【百鬼夜行】【鳥の巣】は?」


 僕が首を振ると目をまるくして、それから突然笑い出した。


「はっはっはっ。これだけ名立たる【組織ギルド】を挙げても知らぬとは! もしや新人ルーキーか! そうか! はっはっはっ!」


 何が何だか分からないまま、僕はニーナたちと顔を合わせる。


「団長、彼ら困っていますよ」

「あぁ、悪い悪い。ごほんっ。儂は斑鳩いかるが。攻略組が一つ、ギルド【蒼月騎士団】の団長をやっている。よろしく、レオナルド君」


 差し出された手を握り返す。


「レオでいいよ」


 挨拶の後、お互いの地図を照らし合わせたりして僕たちは現状を話し合った。


「四日でここまで到達したか。儂らでも七日はかかった。お前さん達、相当の手練れだな」

「これまでも色々な迷宮を探索してきたからね」

「これ……」


 ニーナが横からまじまじと地図を見つめ、こっそりと僕に耳打ちしてきた。


「理由は分からないけど、千里眼スキル戻ったみたい。これなら今日中に外に出られるけど、どうする?」

「本当!?」

「声がでかいバカ!」


 つい嬉しくなって声が出てしまった。ニーナは千里眼のことを他の冒険者にはなるべく知られたくないらしい。どうしよう。


「どうかしたか?」

「えっと、あの、」

「あああアタシ地図読むのが好きで、自分でも架空の地図を作ったりもして、そそそれでもしかしたら出口が近いんじゃないかなーって」


 ニーナって地図もつくれるんだ!? 長い間一緒にいるけど初めて知った。


「早速行こう! おじさんたちも一緒に行くよね?」

「団長、明らかに怪しいですよ。不正チートの可能性もあります」

「そうだな……嬢ちゃん」


 斑鳩さんはニーナに提案をした。


「儂らが来た道と嬢ちゃんたちが来た道。それとは別に三つの道がここにある。次に進む道をせーので指差そうじゃないか」

「いいわよ」

「それじゃあいくぞ。せーの」


 ニーナは左、斑鳩さんは真ん中を選んだ。


「ってことだ。お前さん達とは一緒に行けない」

「そっか。それじゃあまたね!」

「ああ。またどこかで」


 別れを告げて、お互いが選んだ道へ進む。


 僕たちは先を急いだ。ニーナのおかげで道に悩むこともない。いつもなら少しくらいの寄り道は探検の醍醐味だけど。今はサイサリスを目指すのが最優先だ。攻撃も道具も出し惜しみはしない。とにかく倒しては走り続けて。


 広い場所にでた。


「ここは……」


 ズドンッ。


 後ろを振り返る。来た道が岩で塞がれている。僕たち全員が広間に入った瞬間を見計らったように。


「れ、レオくん、あれっ……!」


 ルシルの声で再び広間に目を戻すと、突如何もない空間が光り、魔物が現れた。

 【叫ぶ岩壁】がいくつも繋がったような、巨大な人型の岩。けれどその体は、岩というより鋼のような鈍い輝きがある。敵の頭上に表示が出る。


堅牢の(アダマース)番人(ク―ストース)

 その下に緑のHPバーが二本。


「来るわよ!」


 巨大な腕が間近に迫った。


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