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第2話 思い立った矢先に

 B妻は自分の実母であるB妻母に相談してみることにした。

 

 寝室をわける時にも、一度B妻母に相談はしていた。「A夫が夜中に子どもがうるさいと怒鳴って困っている」と。それに対しての回答はこうだ。


「仕事をしているのだから、夜うるさくて眠れないのは困るでしょう。怒るのも仕方ないんじゃない?」


 それでB妻母の提案で、B妻母と一緒にベッドを別室に移動させたのだった。

 なんの相談もなくベッドが移動されたことに対してA夫は不満そうだったが、静かに眠れるなら致し方ないと思ったのか、特に言動はなかった。


 今回、二度目の相談で、しかも「離婚を考えている」と打ち明けたB妻に対して、B妻母は詳細を聞かずにこう返してきた。


「賭け事、浮気、借金、暴力をしていないのなら、多少のことは我慢すべきよ」


 B妻は、確かにそうだな、と思った。


 A夫は賭け事は一切しない。パチンコも競馬もクジもしない。ちなみに煙草も酒もしない。

 浮気もしない。一度理由を聞いたところ「めんどくさいから」だそうだが、浮気しないにこしたことはない。

 借金も今のところない。どちらかというと倹約家だ。


 暴力……と聞いて、B妻が想像したのは、アザが残るくらい叩かれたり蹴られたりだった。

 (うん。暴力も今のところない)とB妻は思った。ならば我慢すべきなのか、と。

 ようやく念願の子宝に恵まれたばかりだ。この子がまだ幼い内に離婚すべきではないのだろう、と思った。


 初めての子育てでわからないことが多かったので、B妻は近所の子育て広場に週一で通っていた。

 そこでは、初めはB妻だけだったのが、同い年の親子が3組くるようになり、色々と相談できるようになってきた。


 1組は引っ越してきたばかりの友達が欲しい若い母子。

 もう1組は、夫と一悶着の末、他県から子どもと母2人で地元に戻ってきた母子。

 さらにもう1組は、あるとき夫と義母との暮らしに耐えきれなくなり、子どもと母2人で飛び出していた。


 たまたま家を飛び出した2組の母子がいることで、それぞれの事情を聞くことができた。

 しかし事情を聞いたB妻は思った。(それは家を飛び出すほどの理由なんだろうか?)と。


 子どもを産む前にも、やはり、ある日ついに夫に耐えきれなくなり、家を飛び出し、すっかり子どもを育て上げた女性と話したことがあった。


 その話を聞いた時にも、口には出さなかったもののB妻は思ったものだ。

 (妻側がもっとうまくやれば良かったのでは)と。


 B妻はどんくさいタイプだったので、(多少の衝突で捨てられるのは怖いな、妻側の基準は厳しいな)と妻側よりも、むしろ切り捨てられた夫側に同情していた。


 それでも、毎日夫から怒声を浴びせられ続け、大事な子どもが泣き叫ぶのは辛かったので、子どもが通う幼稚園の無料カウンセリングを受けることにした。


 カウンセラーは言った。


「夫に不満のある家庭がほとんどです。その場合とるべき道は3つあります」


 ひとつは、離婚する。

 ひとつは、改善できるよう努力する。

 ひとつは、諦める。


 毎日まいにち怒鳴る夫をたしなめ続けるが効果がなく、悲しむ子どもをフォローする。そのせいか、子どもは夜中に何度もうなされて目覚める。卒乳してからも続けて3時間眠れたらいい方で、やはりB妻は一日合計5時間眠れるかどうかだった。

 B妻はそのとき、体重が10キロ以上減り、頬がこけるほどやつれていた。

 最初はガンにでもかかったのかと思っていた。

 食べてもたべても増えない体重。だるくて10分と立っていられず、家事をするにも休憩をとったり、食事作りも椅子に座ったりしてなんとかこなしていた。

 A夫が怒鳴るたびに(目の前から消えてくれないかなぁ)と思うようになる程度には病んでいた。

 きっと今、自分の体を切ったら血じゃなくて呪いの言葉が出てしまうんじゃないかというくらいには追い詰められていた。


 カゼでかかった内科でバセドウ病の疑いがあると言われ血液検査した結果、バセドウ病だとわかった。

 バセドウ病の薬を飲み出すと精神は安定した。

 でも、「バセドウ病の原因はストレスです」と医師に言われたが、どうしようもない。


 B妻は(とにかく夫と離れたい。そのためには仕事を探さなくては)と思った。


 そうして、仕事を探し始めた矢先に、2人目の妊娠が発覚した。

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