2話 城下
明滅する。絶えず、光が訪れる。絶えず、暗闇が訪れる。何度も、何度も。それは、少しでも早く先に歩を進めたいという願い…それが引き起こした結末。歯車をぐるぐると、一定の速度以上で回したから、少しずつ軋み、少しずつほつれ、そしてあわやの綱渡り。ただ決められた結末に向かうだけの一本道が、唐突に途切れて、先には広大な砂漠が広がっていた。
***
日が傾いて、地面に落ちる影が伸びてくる、それくらいの時間。城下の風景は、まるでお祭りである。所狭しと屋台が並び、人々は笑顔でそれを一つ一つ眺める。年代も性別も様々な人々が、あらゆる店に列を作る。夕食の支度をする主婦は揚げ物の店に並び、幼い子供がアレが食べたいと大声を出す。また別の子供は射的ゲームの屋台で真剣な表情で景品を物色し、厳めしい面の店主は、それを追い返すことをせずに黙々と銃の手入れをしている。
…この風景はいつもの物だと、彼女は言った。
「風がひんやりとして気持ちの良いこの時間が、一番人出が多いのです。誰もが平和を疑わないこの街には、常日頃からたくさんの屋台が集まります、それはこの街の名産に留まりません。多くの人が繁栄を信じて止まないこの街には、他国からも多くの商人が訪れます。数えきれないほどの物品、あるいは遊びが、場所を変え時間を変え、この大きな広場を埋め尽くすのです」
彼女の言葉の端には皮肉があったが、それでも人々を見る目はとても優しかった。
「なるほど。だから統一感がないわけだ」
区画が明確に分かれていないから、対象がばらばらの店が隣り合って並んでいるのは当たり前。そんな光景も、毎日こうなら見慣れるのだろう。
「ところでフレイ。お前は何の役だ?」
「何…と言われましても。まあ、ありていに言えば、監視です」
「…まあ、そりゃそうだ」
アカツキは、その先の言葉を飲み込んだ。彼女は宮廷魔導士のトップに君臨する、精鋭中の精鋭だ。そんな彼女が、単独で監視任務に就くのは…いくつかのリスクが頭をめぐる。やはり人選ミスではないだろうか、と考え、思考をそこで止める。遠くの道から、見知った顔が近づいてきたのに気付いたからだ。
「レオン」
「うん、ただいま」
ちょっと散策してくる、と言ってふらっと人並みに飲まれていったレオンは、紙袋を抱えて帰ってきた。
「本当に色々あるね、ここは。誰もが笑顔を浮かべるのも頷けるよ。…ああ、これどうぞ」
レオンは紙袋から何かを取り出すと、アカツキに差し出した。アカツキはためらわずにそれを受け取る。