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独身者の独白

作者: 三文字

 中途半端な向きにほっぽってあった、青い色の目薬をちらと見た。

 書いた僕以外には誰にも読めないようなぐちゃぐちゃのメモ書きを見た。

 スマホの時刻表示を見れば、多分午前10時頃なのだろうが、それを確認しようともしない。何もやる気が出ない。


 暫くの間、机の上に突っ伏していたようだった。

 「何をしようか」と心の中で呟いた。突っ伏している間に段々と目が覚めて行くにつれて、その程度の事を考えるやる気も出たのだろう。しかしあまりの部屋の静寂さに気圧されるかのように、不思議と僕はなかなか動く事が出来なかった。


 ふと、窓の外の空を見上げた。雲は少し多いが、良く晴れていた。ただ単に、それだけだったが。またそれを見たからといって何をする気が起きるわけでもなかったが。


 そんな事をしている内に、怠惰に抗う気力もだんだん萎えて行き、その後に頭に浮かんだ事と言えば、「コーヒーを飲みたいな」という事だけだった。


 こんな日を毎週繰り返しながら年を取っていく穏やかな人生でも構わなかった。でも今の僕にはそれを安定して維持する力すらないのだ。なぜなら僕はフリーターで、休日は不規則で、しかも今まで一つ所も長くとどまり続けた職場などないのだから。何度も何度も、休日さえも平穏を奪われるような不安を、問題を起こして解雇される度に感じていた僕はただ臆病なだけだったのだろうか。


 流れの悪い白い雲の動きと澄んだ薄青色が不規則に織りなしている空を眺めながら、コーヒーを飲む僕の胸の中で、茫漠とした薄暗い思いが染み渡って行った。

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