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「え~っと ノルン、アリス、よろしく」
「「 よろしくお願いします 」」
「え~っと これからどうすればいいと思う?」
アリスが俺の手を握り笑顔で言う。
「ご主人様。とりあえず、1ヶ月に金貨5枚稼げるようになってくださいね。そうすれば3人で暮らしていくことが出来ますから」
「え~っと さっき貰ったこの金貨30枚だと半年くらい生活出きるということかな?」
「ふふふっ これは小金貨ですね。金貨だと3枚になりますね」
「えっ? そうなの? じゃあ……18日分くらい?」
「ふふふっ 宿代を1日小金貨1枚くらいにして食事を銀貨5枚程度にすれば20日くらいですね。しかし装備を購入するなら全然足りませんね」
「えっ 装備?」
「はい。お金を稼ぐなら冒険者が一番だと思います。ダンジョンで魔物退治で稼ぐ方法がいいと思いますね」
ノルンもコクリと頷き、笑顔で言う。
「あつし様。私は新米ですが、魔物退治の経験があります。まだレベル3ですが」
(え~っと それって弱いってこと?)
「ノルンは剣も鎧もあるからいいけど……アリスは? そういえば回復魔法がどうのこうの言ってたような気がしたけど?」
「私はレベル1です。戦闘経験はないですけど、回復魔法は使えますよ」
「そ そう……」
「あつし様。とりあえず地下迷宮に行ってみませんか? 1階ならスライムしか出て来ないので見学に行きませんか? それから装備をどうするのか考えてもいいと思いますよ」
「え~っと それがいいのかな?」
ダンジョンは街の外だったのだが、他の冒険者も沢山行き来していたので、他の冒険者と一緒に行動すれば問題なさそうだ。
「ふふふっ 私はダンジョンが初めてなので楽しみです」
「私は10回くらい入ったことがあります。下層へと下りると出てくる魔物がどんどん強くなりますが、自分達のレベルを考えて下りて行けば問題ないと思いますよ」
(う~ん 戦いたくないんだけど~ 生きていくためには……3人分の生活費を稼がないといけないんだよね~。はぁ~ アリスもノルンも可愛いから嬉しいんだけど……。嬉しいんだけど……)
俺の不安そうな顔に気づいたのかアリスが俺と手を繋いでくれた。そして……大きな胸を俺の腕に当ててくれた?
「ふふふっ 楽しみですね?」
「えっ? う うん」
アリスの笑顔とおっぱいの感触で俺の不安はどこかに吹っ飛んでいってしまったよ
「ふふふっ」
白い神殿のような建物に辿り着くと、冒険者達は中央にある階段を下りていっている。ここがダンジョンの入口なのだろう。ノルンが冒険者達に続いて下りていったので俺とアリスもその後に続いて下りていった。
「明るいのか。ここがダンジョン?」
「あつし様 そうですよ。下へと下りる階段がどこかに必ずあるので、探しながら進んでいけばいいです。今日は下りずに他の冒険者達の戦いを見学しましょう」
「そうだね。装備も何も……ん? あれは?」
「あれは壊れた武具ですよ。いらない武具等をダンジョン1階の階段近くに捨てるのが冒険者達の習慣になっています」
「どうして?」
「ダンジョンで失った武具は宝箱の中から見つかることがあります。壊れた武具が失われても、なぜか新しい状態で宝箱の中から発見されることがあるんですよ」
「へぇ~ そうなんだ。おおっ これって銃なのか?」
俺が捨ててあった銃をノルンに見せながら質問するとノルンが答えてくれた。
「はい。それは魔法銃です。誰でも魔力を使わずに4つの魔法を放てる銃ですよ」
「へぇ~ 凄い武器もあるんだね」
ノルンは首を横に振った。
「魔法銃の威力は凄いですが、とてもとても高価なのに壊れやすいです。新品でも100回程度で壊れてしまうそうですよ」
「あ~ そうなんだ。じゃあ役に立ちそうにないね。えっ? ちょっと……」
「きゃっ 誰です? あなた達は?」
「きゃっ」
俺だけでなくノルンとアリスも背中を押されて……魔法陣の上に? 俺達は光に包まれた。
「え~っと ここは?」
「あつし様。ここはダンジョン21階だと思います」
「えっ 21階?」
「はい。1階の魔法陣から一気に下へと下りることが出来るのです」
「え~っと 戻りは?」
ノルンは暗い表情で首を横に振った。
「戻りの魔法陣は50階ごとにしかないそうです。歩いて戻るしか……」
「ふふふっ ご主人様。他の冒険者を探しましょう。一緒に戻れば大丈夫ですよ」
「あ~ そうだね。え~っと 叫ぶと不味いよね? どこかに隠れる? それより……誰が俺達の背中を?」
「ふふふっ きっと領主様の指示でしょ。あの方はケチで有名ですから。ご主人様と私達を事故という形で殺して、国からの給金をくすねるつもりなのでしょう」
「ご ごめん。俺が2人を選んだから」
「あつし様は悪くありませんよ。まあ脅威となる異世界人を殺そうとしたのでしょう。領主マルド様は第2継承者アダム様の派閥ですから。英雄様を召喚した第1継承者イリス様とは敵対関係にありますからね」
「え~っと派閥争うに巻き込まれたってことか? はぁ~。とりあえず誰か来るまで隠れようか。まずは……階段を探さないとダメなのか?」
アリスが俺の手をひっぱり小声で。
「ご主人様。魔物です。逃げますよ」
「う うん」
俺はアリスに手を引かれ……忍び足で移動していく。
「あつし様。気づかれました。走りますよ」
「えっ う うん」
俺達は走り出した。
「ご主人様。前にも魔物がいます」
「あつし様。ダメです。挟まれました」
(え~っと。ここは男の俺が。怖いけど怖いけど……)
「ふふふっ 手を繋いでください。ご主人様。巻き込んでしまってゴメンなさい」
アリスは微笑み……俺の腕に胸を押し当てて? 震えた手で俺の手をギュッと握ってきた。
そしてノルンも俺の反対の手をギュッと。
(方法はないのか? 何か覚えないのか? 補給……修復……アイテムボックス……?)
「きゃっ ご主人様 これは?」
「あつし様?」
「説明は後だ。乗り込むぞ」
「「 はい 」」
俺達はバスに乗り込み扉を閉めた。
《 ドーンっ ドーンっ ドーンっ ドーンっ 》
《 ドーンっ ドーンっ ドーンっ ドーンっ 》
魔物から一時的に身を守ることが出来たが……。
冒険者が来てくれるまで耐えることが出来ればいいのだが……。
俺達は3人で手を繋いで助けを祈り続けた。
可愛いアリスとノルンに挟まれた俺は少し幸せを感じていたのだが……それは今は口にしない方がいいかな?