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《 ドーンっ ドーンっ ドーンっ ドーンっ 》
《 ドーンっ ドーンっ ドーンっ ドーンっ 》
《 ドーンっ ドーンっ ドーンっ ドーンっ 》
体当たりをしてくる化け物達。何箇所も窓ガラスが割られてしまっているが……まだ侵入されていない。
深夜になり……化け物の数が増えてきている。バスを走らせたいが……ガス欠。
脳内に現れた画面の補給を選ぶが何も起こらない。2度目までは成功したのだが……なぜかその後は何も起こらなくなってしまったのだ。
可愛い女性教師と話し合った結果。夜は危険なので、朝まで休むことに。眠りたいのだが……眠たいのだが……恐ろしくて眠ることが出来ない。更に女性達のすすり泣く声で不安な気持ちが倍増していった。
《 ドーンっ ドーンっ ドーンっ ドーンっ 》
《 ドーンっ ドーンっ ドーンっ ドーンっ 》
(んっ。俺は寝てたのか)
「おはようございます。少し眠れたようですね。朝になると魔物の数が少なくなりましたよ」
「お おはようございます。そうなのですか。そういえば……バスに体当たりをしているのは2匹だけですね」
「やはりバスを走らせるのは無理でしょうか?」
「はい。補給は……あれっ? 出来た。出来ました」
「本当ですか?」
「はい」
(あっ 柔らかっ それにいい匂い)
笑顔で可愛い女性教師が抱きついてきたのだ。
(ハグされたの久しぶりだな。嬉しいけど……今は……。もう少しだけ……)
「ごめんなさい。嬉しくて、つい」
「ははは。じゃあ 行きますね。きっともうすぐ辿り着けますよ」
「ふふふ はい。頑張ってください」
可愛い可愛い笑顔で言われると俺のやる気はみなぎってきた。
バスを走らせ……れない。動かない。
(あれっ? 補給出来たのに? まさか……壊れた?)
俺があたふたしていると可愛い女性教師が不安そうな声で話しかけてきた。
「大丈夫でしょうか? もしかして……」
「そうかも知れません。すいません」
(はぁ。道具もないのに修復なんて出来ないぞ。まあ道具があっても俺には無理だろうけどね。修復出来る人なんて……修復?)
【修復を修得しますか?】
俺はもちろん「はい」を選んだ。そして脳内の画面の修復を選ぶと……。バスが動き始めた。
「直ったのですか? 凄いです」
「先生のおかげです。行きますよ」
俺は目の前の豚頭の化け物を跳ね飛ばす。
(えっ? 経験値? 1?)
俺が困惑していると可愛い女性教師が笑顔で話しかけてきた。
「経験値が入りましたね。それにあのオーク食べれそうです。止めてもらってもいいですか。今なら周りに魔物がいないので調理しましょう」
「えっ? 食べる? 化け物を食べるのですか?」
俺は驚きながらもドアを開けた。
(なっ ま 魔法? 魔女だったのか?)
オークという化け物がいきなり切り裂かれて火に包まれた。
バスに乗っていた男性も女性も平気な顔で手に取り……パクリと口の中へ。美味しそうに食べ始めた。
(えっ? 誰も驚いていないのか?)
「運転手さんもどうぞ。美味しいですよ」
「えっ は はい」
恐る恐る口に入れると。
(お 美味しい。美味しいけど……腹壊さないのか? お腹空いてたから……仕方ないのか。はぁ~なりゆきに任せるしかないのか?)
食事が終わるとトイレを済ませて、バスを走らせた。
化け物に何度も体当たりをされてはいるが、順調に進んでいく。
そしてついに見えた。
「あれです。あの街です。運転手さん あそこに向ってください」
「は はい」
《 ドガーンっ 》
「きゃっ」
横からの強い衝撃と大きな音。
バスの速度が落ち……止まってしまった。
(修復? 補給? ダメなのか?)
「運転手さん。もう少しです。頑張ってください」
可愛い女性教師にそう言われると、やる気が出てきたのだが……どうにもならない。
「すいません。無理なようです」
「なあ。ここからなら走って辿りつけるんじゃないのか?」
「そうね。行きましょ。全力で走れば大丈夫よ」
「おい。開けてくれ。後は自分達で走るから」
「えっ。あ ああ」
俺がドアを開けると男性も女性も走っていく。
「運転手さんも行きましょう。街に辿り着ければ安全ですよ」
「えっ しかしバスが……」
「今は命の方が大事です。さあ 行きましょう」
「は はい」
俺は可愛い女性教師に言われてバスを降りた。
(はぁ。置いていくのか。仕方ないよな。どうすることも? ん?)
【アイテムボックスを修得しますか?】
もちろん「はい」を選択し、脳内の画面でアイテムボックスを選ぶ。
(えっ き 消えた? アイテムボックスの中に入ったのか? え~っと それより逃げないと)
既に俺以外の人達は街に近づいている。可愛い女性教師も必死に走っている。誰も俺を待ってくれていない。まあ今は生きるのに必死なのだから仕方ないのだろうが。
(おおっと。逃げないと)
俺も全力で街へと走っていった。