秋葉原ヲタク白書68 受け子ドローンを追え
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第68話です。
今回は、新型コロナでパンデミック下の秋葉原に宅配ドローンが飛び交い、どうやら違法薬物を運んでいる様子。
コレに"コロナ詐欺"で"受け子"不足に悩む詐欺グループ、国際情勢に翻弄されるスタートアップの思惑が絡み…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 胸騒ぎの元カレ
ドローンに追い抜かれるw
人類が滅亡してから軽く1万年は過ぎました的なゴーストタウンと化したアキバ。
人影の消えた街で、色んな"休業中"の札を揺らしながら、ビル風が吹きすさぶ。
ヲタク最後の生き残りを気取って、パーツ通りを歩いていたら、軽い羽音を立てながら、急ぐようにドローンが僕を追い抜いて逝くw
アレは…なんなんだw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィたん!生まれ変わった"パレス"にようこそ!」
人類滅亡後も生き残るヲタクがココにw
場所は変わって、ココは昭和通り沿いの炭火焼きが美味しいバーガーショップの2F。
スピアが奥の部屋から手を振っている。見張りとハンドサインを交わして奥へ入る。
ソコは細長い部屋で、壁向きにカウンター席が1列。奥にテーブル。
そのお誕生日席にジュリ、手前にPCをズラリと並べたスピアがいる。
ジュリは昭和通り界隈を仕切る"セクボ"のヘッドの妹、スピアは専属のサイバー屋だ。
ジュリが"セクボ"の新しい溜まり場をココと決めたから、今日が私の"パレス記念日"←
ストリートギャング"セクシーボーイズ"の溜まり場だった国民的ハンバーガーショップ閉店に伴う"遷都"騒ぎも、コレでやっと決着だw
「テリィたん!ミユリ姉様の御屋敷も営業自粛なんだって?姉様のいない聖地でハネ伸ばし放題でしょ。この浮気者!」
「…ってか、ジュリも自分のスクキャバは自粛してンだろ?ジュリのセーラー以外の格好、久しぶりだ。国民的バーガーショップも全国で客席閉鎖らしいから"遷都"がギリギリで間に合って良かったね」
「で、私達がお引っ越ししてる最中に、何やら橋の下のホームレスなサイバー屋と付き合ってたンだって?元カノ会長の私にお断りナシとはケシカラン!プンプン」
あぁw確かに、その間人類滅亡に備える"プレッパー"なJK達とは色々とあったカモ…
でもさ。確かに彼女達は橋の下にいるけどアレは滅亡に備えたサバイバル訓練なんだw
と、そこへ。
「ヘイ!ごめん」
「ええっ!ロミロ?ものスゴーい久しぶりじゃない?何しに来たの?名物の炭火焼きバーガーを食べに来たとか?」
「ああ。そんなトコロだ。通るょ…やや?テリィたんじゃナイか!いやぁ"戦時"は世話になったなぁ。今度は、何かあれば俺が力になるょ」
いや、結構だw
現れたヒョロ長男は、ロミロだ。まぁ一言で逝えば、ジュリの元カレで…
かつて、この2人の色恋沙汰絡みで昭和通りを2分する戦争が勃発してるw
で、終戦処理をした僕は2人に貸しがアルw
「見ての通り、昭和通りまでジュリを訪ねて来たのさ。しかし、古い友達のテリィたんもいるとはなぁ!その、炭火焼きバーガーとか食べてみたいな」
「そうね!いつまでアキバにいるの?」
「未定だ。渋谷の方は順調ナンだが、アキバが未だ軌道に乗らなくてね。実は、気分転換の意味もあるンだ。渋谷で付き合ってた女とも破局して…」
「リリカと別れたの?!」
「YES。彼女のせいだ」
おいおい何だょ。どーしてジュリがロミロの元カノの名を知ってルンだょw
しかも、別れたと聞くや、ジュリは部屋中にフェロモンをドバッと大放出←
あ、因みにジュリはロミロをフッて、今は万世橋の新橋鮫と付き合ってるし。
それから、炭火焼きバーガーなら渋谷でも食べれるからソッチで食えょ!
「元カノの名前まで知ってるとは、さすが"刑事の女"だ!よく調べたね!」
「色々あるのっ!未だ、友達だから」←
「で、またまた泡立て器とか使うつもりだな?」
「お?よくワカるな!」
「思い切り感心された?!」
「ホテル"24"の支配人から聞いたな?俺の秘密兵器をバラすのは奴しかイナイ。おいおい。俺達は友達だょな?」
「違うょ」笑
「いや、友達だっ!友達は変な考え抜きで付き合うモノだ。例えばさ…」
ココで優男ロミロは、ジュリの方を向く。
ジュリ、気をつけろ。ロックオンを外せw
「ジュリ。実はアキバのスタッフがイマイチで困ってルンだ。ちょっち相談に乗ってくれナイか?」
「待って。ジュリは忙しいの」
「チビのサイバー屋は黙ってろ。ジュリに頼んでルンだ」
「モチロンいいわ、ロミロ。楽しみょ」
「GOOD」
何と2人は腕を組んで出て逝ってしまう。
おい!ココ以外どの店も閉まってるぞw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ところが、中央口のファミレスが開いてて…
しかし、ヨドハシの食堂街が全館閉鎖になった煽りで激混みだろうに良く座れたな。
ソレに新型コロナの緊急事態宣言中は、良い子は対面で外食しちゃいけないンだぞ!
仕方ナイので僕達はスピアがジュリのブローチに仕込んだ盗聴マイクに聞き耳を立てる。
"…どうやら、ジュリと面と向かうと、俺はスマートには話せそうもナイ。だから、愚直に逝くょ。実は、この話をしたくてアキバに来たンだ。もちろん、リリカとの破局もビジネスのコトも事実で、だからこそ来たンだが…もう1つ、誰にも話せない理由がある。ソレは…ジュリのコトなンだ"
"私?"
"ああ。最初は無理だと思った。俺達は、複雑だしね。でも考えてみると障害となってるのは"過去"だと気づいた。ジュリ、君は優しく聡明な女性だ。そして、俺達は気が合う。今も惹かれてる。なぜ俺は君を諦めなくちゃいけない?俺達、1度は"昭和通りのロミロとジュリ(エット)"として鳴らした仲じゃナイか!"過去"が厄介だって理由なんかで…確かに、厄介どころじゃナイが、率直に話そうと思った。たとえ、君を不快にさせても"
"不快だなんて…スゴーく嬉しいわ。確かにとても複雑だけど。でも私、どう答えたら良いのか"
"今すぐでなくて良いンだょ。よく考えてみて。そして、また話し合う機会を"
"ええ。もちろんょ"
"バーガーショップにいる連中は抜きで"
"そ、そうね"
"よかった"
"私こそ…ありがとう"
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕とスピアは顔を見合わせるw
「何なんだょコレ?鮫の旦那にゃ、とても聞かせられナイなw」
「ロミロは、ジュリの4つ上で…あの2人は一緒に薬を止めた仲なの。かつては毎日(薬を)やってたのに…だから、また手を出すツモリじゃナイかしら」
「大丈夫かょ?ジュリの奴」
「確かにココ1カ月、彼女、スゴい変だったわ。ねぇテリィたん。少し調べてくれない?御褒美は…私のスク水ビキニのチラ見せでどう?」
「いや、間に合ってる。まぁ、先ずは基本的な情報だな。ロミロの現住所、仕事、友人でも…うーん」
「あ!黙っちゃった!何?」
「別に。ただ、元カレ絡みって、ロミロに限らズ、エラいヤル気が出ないンだょな」
「あ!そー逝えば、ロミロってテリィたんと同じミュージシャンだょ?で、人生も性格も全部不安定だから薬に溺れたの!」
「今、世界中のミュージシャンを敵に回したょね?ソレから、僕は未だサラリーマンだから、その話は全くインセンティブにならナイょ」
「…そもそも、最近は昭和通り方面、放ったらかしで、少し冷たかったんじゃない?何かに没頭したいンでしょ?色々お世話になったンだから、興味が湧かなくてもやるべきよ!」
「待ってくれ。お世話はしたけど、お世話になった覚えはナイょ」
「私のスク水ビキニ、オカズにしたでしょ?」
「してません!ソレに…ん?この匂いは?」
「ホットドッグ。好きでしょ?ココはモーニング限定でドッグもやってるの。"マチガイダ"も営業自粛で最近ドッグを食べてナイんじゃナイ?だから!モーニングの時間とっくに終わってるけど、特別につくってもらったの。テリィたんに食べてもらいたくて…で、解決したら泡立て器で遊んで、あ・げ・るwロミロなんか…泣いて喜ぶンだから!」
え?泡立て器は女が使うの?
ってかスピア!まさか君は…
第2章 コロナが稼ぎ時
"秘密基地"で面白い動画を見せられる。
"秘密基地"は、総武本線が通る松住町架道橋の橋脚に手摺付きの足場があって…
ソコにコロナ休校中の"ゆるカル▼"のJKトリオが人類滅亡に備えキャンプ中だ。
で、ソコへヒョンなコトから仲良くなった"リケジョ∞"のJKトリオが合流して…
キャットウォークに収まり切れなくなり、隣の"アキバよーち園"にはみ出し中。
"アキバよーち園"は"幼稚園カフェ"で、窓から"秘密基地"へと出撃が可能。
もちろん"アキバよーち園"も、今は営業自粛中だから、JK達はやりたい放題だ。
「焼芋が焼けたよー」
窓の外から文字通り"世も末な声"がスル。テント村と化した御屋敷から橋脚へと移動。
"ゆるカル▼"のナデシが焚火で焼芋を焼いている。
同じ"ゆるカル▼"のリンナが動画を見て笑ってる。
どれどれ。
英国で31万回以上再生?スゴい!"月間MVPをドローンでお届け"?何だ?
選手が「クラブから窓を開けておけ、と電話があった」と神妙な顔で語るや…
次の瞬間!その窓からドローンがw
選手は慌てふためき、猫は逃げ出す大騒ぎ!ところが、ドローンが届けたのは…
待ちに待った月間MVPのトロフィー!ココで選手は国民に外出自粛を呼びかけw
「へぇ!この動画のお陰で、世界中で一気に外出自粛が進むカモ(まさかw)」
「直接対面しないで済むドローン配送なら、三密も避けられて安心ね!」
「あら。珍しい子からメール来たん」
最後は焼芋を焼いてくれたナデシ。
どれどれと覗き込むのはオボカだ。
実は、ナデシは焼芋当番の他に"ゆるカル▼"の巨乳担当でもアル。
そして、彼女のスマホを覗くオボカは"リケジョ∞"の巨乳担当だ。
この2人は仲が良く、よくツルンでて、周りからは密かに"巨乳会談"と呼ばれてるw
確かに「肩が凝る」とか逝っては、互いに肩を揉み合ったりしてるのをよく見かける。
実に微笑ましい光景だ←
「えーどれどれ。"1回5万の美味しいバイトがあるけど、誰かどう?"うわっ!全速力で怪しい!」
「それ"受け手"でしょ?詐欺ょ詐欺。前科一犯になっちゃうぞ!」
「なぁに"受け手"って?美味しいの?」
無邪気に首を傾げるナデシ。頭が弱そうオーラ全開で隣のオボカがカバーに入る。
おぉ胸を付き合わせて"巨乳会談"が始まるぞ!固唾を飲む…あ、男は僕だけだw
「ナデシたん。メールくれた子、ホスト通いとかしてない?」
「あ、早朝割引の常連みたいだょw推しメンがいるんだって」
「ソイツは"リクルーター"ょ。気をつけて」
いや。多分リクルーターの下のパシリだw
ココでナデシが"興味ある!"と返信すると携帯番号を教えられ、ソコに電話して初めてリクルーターと言葉を交わすコトが出来る。
「行った先で渡される書類を受け取り"失礼します"と帰って来るだけのバイトです。猿でも出来ます」
そう説明されて"じゃ猿にやらせろょ"と思うか"ボロい!"と喜ぶかが運命の別れ道。
モチロン、ナデシは後者だ!僕も君が喜ぶ顔が見れてウレシいょ。良かったね!ナデシ…
当日は"現場直近"のファミレスで慣れないスーツ姿で長々と待機スル。
やがて携帯が鳴り「逝った先の老婆に金融庁の安倍と名乗って下さい」←
そう説明されて"え!偽名?"と思うか"安倍って金融庁だっけ?"と悩むかが運命の…
モチロン、ナデシは後者!僕も君が悶え…じゃなかった悩む顔が見れて…(以下は省略w)
ココで「もしや貴方はオレオレ詐欺師?」と聞く人もいないだろうが、聞いても「俺もわかんないンです」とかトボけられて終わりw
泣く泣く?向かう先は騙された人の家で、受け取る書類は現金が入った袋だ。
ソレを公園のトイレの個室越しに受け渡して後日ホストから謝礼を受け取る。
一般に"受け子"の取り分は詐取額2〜5%と逝われてるから、10万円もらったら詐欺の総額は500万円位の規模だったと逝う勘定だ。
因みに、最後まで顔も名もわからないリクルーターは仲介手数料で月100〜300万の儲け。
で、このリクルーター、つまり"受け手"派遣業者は今やテンテコ舞いの忙しさなのだ。
今や、振込による現金詐取は4割を切り、警察も"振込め詐欺"とは呼べなくなってる。
やはり、対面での詐取が不可欠ナンだけど、ソレだけ"受け子"は捕まるリスクも高い。
つまるトコロ、オレオレ詐欺における"受け子"とは"消耗品"なのだw
と逝うワケで"三密"対策が叫ばれる中だけど、対面で稼ぐ"受け子"は引っ張りダコ←
駅や居酒屋、スポーツ新聞、果てはハローワークにまで"簡単バイト"の求人が出てるw
それでも"受け子"は足りない←
ついに、ナデシにまでお声がかかるとは人材払底も極まれりw
今後、新型コロナ絡みで業務拡張?が見込まれる業界なのに…
「新型コロナの緊急対策でガス料金1ヶ月無料になります!印鑑を」
「厚生労働省コロナ係です!お元気ですか?」
「世界保健機関(WHO)です!ハロー!」
「子供1人に3万円の助成金を配ってます。キャッシュカードの番号を教えて!」
「ガス管にコロナウイルスがついているので除去します!」
残念!"受け子"の質が追いつかないw
「あ、バカだな。このホスト、リクルーターからのメールを添付してる。ちょっち良い?リクルーターがハッキング出来ちゃうカモ?」
「ええん?オボカたん、そんなコト出来るん?スゴいん!頼もし過ぐるーん!肩凝るでしょ?モミモミん」
「あ、ソコにゃ…」
今宵の"巨乳会談"の思わぬ展開に焼芋を生唾で飲むばかりだw
しかし、同じ巨乳でも文系と理系ではココまで違うモノなのか…
「あ、リクルーターのHNがわかったわ。奴の名は…"ロミロ"」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
やれやれ。リクルーターのロミロはアキバにリクルートしに来たのか。
ソレで"受け子"になりそうなJK人脈?のあるジュリに接近したワケ?
早速"パレス"に戻り、サイバー屋のスピアにフィードバックする。
「…てなワケみたいだょ。今、奴は何処?どーせジュリも未だ一緒なんだろ?」
「ソレが…ジュリのブローチマイクが、さっきから良く聞こえないのょ。どーも、その、あの、服を脱いだみたいで…」
「何だょそんなの最初から織り込み済みだろ?高性能マイクなんだから」
「ソレがダメなの…泡立て器がうるさくて」←
その時、盗聴用のミニスピーカーから悲鳴w
「キャー!誰?貴方達!」
「や、やめろ!俺の命だけは…」
「ロミロ!この期に及び自分だけ?!」
銃声。
第3章 あのドローンを狩れ
ホテル"24"は"パレスの直ぐ近くにある駅近ホテルで身障者用EVを使えば2Fのロビーに顔を見られズ客室へ逝ける便利なホテル。
従って、繁忙期?は精神以外は全く健康な"美しき身障者"でEVはごった返すが、モチロン、今は僕とジャージ姿のスピアだけだ。
まぁスピアのジャージの下は、スク水(のビキニ?)なんだが、特にコスプレチャージはかからない。彼女のトレードマークだから。
ってかスピアはデリ(ヘル)じゃナイし!
「ジュリ!ジュリ!」
半開きのドアを蹴り開け、客室に飛び込む!
もし、中に拉致犯がいたら…とも思ったがw
「助けて!テリィたん、あ!スピアも!」
幸いなコトに"ベッドの中"はジュリだけ。
バンザイポーズで両手を手錠拘束されてるw
わぉ!黒のブラ&パンティだ!
セーラーより良いょブラボー!
「早く手錠の鍵を!ダメ!何で写メ撮るの?」
「スマイル!で、ロミロは?あと、拉致犯も!」
「黒覆面が2人が突然入って来て…中肉中背で1人は空手使い。カラダのラインから恐らく女だと思う。あっという間にロミロを畳んで連れ去ったの。私も泡立て器で応戦したけど手錠されて逆に…あぁロミロは裸のママょ!コレからって時だったのに!…ところで、コレは何かのオトリ捜査だったってコトにしない?」←
ンなコトに出来るハズがないっしょ。
ってか泡立て器って男女兼用なのか?
せっかくの機会なので、ジュリの肢体を別角度から数枚撮りw残念だけど手錠を外す。
彼女は、黒の下着姿で手を摩るケド、やはり年齢的に無理のあるセーラー服より良いw
僕は、部屋の中をざっと見回す。
「銃声がしたのに弾痕がないね。どうやら、追跡を阻む空砲だったようだ…ん?今、流れてる音楽は?」
「ロミロのライブ。MyTUBEに上がってたからエンドレスで流してた。気分が盛り上がるかなって」
「(意外に可愛いトコロ有るンだなw)…で、ロミロは?あ!瞬間、歯を食いしばったょな?おい、何かあったね?」
「何も。私の顔色をイチイチ分析しないで」
「僕には関係ないけど、ロミロを庇って嘘をつく気だろ?」
「意味わかんない。勝手に妄想膨らませて人を詮索しないで…楽しい夜だったのに」
瞬間、泣き出しそうになるジュリ。
「わ、わかったょ。詮索はやめるょ。となると、次は誰に襲われたのか、だょな」
「テリィたんが詮索を止めるハズない!そもそも、私個人のコトでしょ?何かを話して今以上にみんなが騒ぐのが嫌なの!」
「そーは逝われてもな。うーん。やっぱり何かロミロからプロポーザルを受けたょね?」
「しつこいわね。ロミロは、大人の態度で私に好意を表明したの。でも、返事は保留したわ。今してるような面倒臭い会話が、容易に予想出来たから!」
僕は切り口を変える。
「ロミロは、アキバに"受け子"のリクルートに来たと思わせ、実は"掛け子"を探しに来たンじゃナイかな?」
「"掛け子"?何ソレ?確かに、最初は"受け子"を探してると逝われて…クズみたいなJKのリストを渡したわ」
「その屑リストに僕の友達も入ってンだが…"掛け子"は、実際にターゲットに電話して騙す役だ。詐欺のコアだから、初めの頃は首謀者が自ら掛けてたけど…」
「どんどん分業化が進んでるワケね?」
「首謀者は、少しでもリスクを分散させたいんだ。被害者との接点が増えるホド、捕まるリスクが増えるから」
「なるほど」
「お?急に大人しくなった?で、首謀者は、どんどん黒幕化して姿が見えなくなる。ロミロも黒幕志望じゃナイの?」
「ううん。彼は"リクルーター"に徹してた。"受け子"専門で未成年者から無職の年配者まで、常時50人ストックしてるって自慢してたケド、所詮は"リクルーター止まり"のタマょwあと私名義の預金口座や携帯電話も買いたいって…」
うーん。久しぶりに再会した元カレ&元カノは全裸でズッとそんなコトを話してたのかw
「口座と携帯か。結構手広くやってルンだねってか、ソレだけ金欠だったのか…」
「そう逝えば、ロミロは渋谷で薬にも手を出してた。ソレも相当な量を扱ってたみたい。で、アキバで不思議な話を耳にしたんだって」
「不思議な話?」
「ドローンによる、薬の宅配サービス。電話して紹介者を言えば違法薬物が届く仕組み。電話番号入力で薬がドローンで宅配されるアプリがアルとか」
ええっ?違法薬物のドローン宅配?
最近はホント色々宅配するンだなw
トロフィーだけじゃ無いンだ←
「で、ロミロは、そのドローンを"受け子"として使えないか、って話してた。その件で誰かに会うためにアキバに来たンだって」
「え?じゃロミロは、アキバで誰かと会ってルンだ?…ジュリ以外にも」
「あ!そーゆーコトねwま、まさか女?他にも泡立て器を使う女が…ロミロの携帯は、黒覆面の連中が踏んづけて壊しちゃったけど、残ってる財布に名刺が挟んであるわ。名前だけの名刺だけど。ドローン女の正体は…"アキバスカイ"CEOのスカイ?男?女?名刺の裏は…多分アポの日時ね。あぁ"彼女"が先だわっ!"彼女"と会った後で私と会ってる!ねぇテリィたん!この"女"を捕まえてょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「狩りに逝こう」
"リケジョ∞"のメカニック担当アキナを人通りの全く絶えたパーツ通りに呼び出す。
ツンデレな彼女とは、彼女に合わせ寡黙に仕事するに限る。彼女の瞳に向かって逝う。
「フォースフィールドにトラップを仕掛けたい。罠を作ってくれ」
「ジェダイなの?」
「いや。どちらかと逝えばボバ・フェットの方だ。密猟だしw」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日、彼女の仕掛けたトラップを見に逝ったら獲物がかかってる!大漁だw
業務用の大型ドローンがレーダーと連動した投網にかかり道端に落ちてる!
「最先端の完全自律型ドローンだ。必要に応じて暗殺機能をプログラムするコトなんかも可能だ。ターゲットに食らい付いて暗殺完遂まで決して諦めない」
「テリィたん。何でそんなコト、知ってるの?」
「会社の関係で、太平洋の向う岸の国の軍人さん達と仕事したコトがあるンだ。ある特殊な現場で…僕達は、常に誰かに見られてる。その内に散弾銃付きのドローンに追い回される人を見かける日が来るカモ」
「ソフトはリンナに頼んだ方が良いけど、ドローンだけなら、私がガレージで作れそうょ」
「いやいや。監視用と実行用の2機を同時に運用し、作戦高度にも全天候で汎用性が求められる。開発は、かなりの技術と資力を持つスタートアップでないと無理だょ」
「で、どーするの?テリィたん」
僕は、ドローンに向かって話しかける。
「スカイさん。ドローンは捕らえた。金でカタをつけたい。正午にふれあい橋で待ってるょ」
そして、ドローンのカメラと思しき部品にハンカチを被せる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アラサー女子だw
ハッカー風の黒パンツに黒パーカーでフードを被り黒サングラスの黒マスク。
きっとブラ&パンティも黒に違いない。全力で念力透視を試みるも…諦める←
まぁジュリの下着姿を見た後だし良いかw
「テリィたん。女を橋の上に半日も待たせて…」
「えっ?時間カッキリだょ?ま、まさか昼の正午だと思った?」
「だ、だって…普通正午と言えば…」
真夜中の午前零時だろぉ?アキバでは←
スカイが長い溜息をつきフードを取る。
長い黒髪ストレートが川面の風に舞う。
美少女と美魔女の真ん中の美アラサーw
「ドローンを返して。身代金は払う」
「お金は要らない。貴女が拉致したロミロと交換だ。あと、いくつか質問に答えてくれ。"アキバスカイ"はドローンのスタートアップなのか?」
「略して"バスカ"と呼んでね。ソレから、ドローンと逝うのは俗称なの。ウチは無人航空機全般の開発を行なっているわ」
「今、街中で俗称ドローンを飛ばせるのは、政権直轄や自衛隊の限られた人達だけだ。バスカは"軍需産業"か?」
「防衛機密。顧客に絡む話は、一切出来ない。テリィたんは軍事の専門家なの?それとも単なるヲタク?」
「単なるヲタクです。ところで、貴女は何処かの国のスパイと接触がアリ、命の危険を感じたりしてない?貴女自身に敵はいないの?ライバル他社とか」
「前の男とクラシックカーの復元でもめた。訴訟沙汰になってる。確かに、相手をかなり精神的に追い込んだカモしれない」
「ロミロのコトか?」
スカイは破顔一笑w
「彼は、私の顧客候補ょ。さっき、私が彼を拉致したとか逝ってたけど何の話?ロミロ氏は誰かに拉致されたの?」
「知らないのか?いずれにせよ、解明に是非協力を。答え辛いとは思うけど、ロミロは身の危険を感じてるようなコトを何か逝ってなかったか?」
「商売柄、常に不安は抱えてたようだけど…拉致されるような話じゃなかったと思う。ごく普通の渋谷からやって来た男ょ…ただ、立ち入り過ぎたのカモね」
「誰に?」
「私に。もう殺されてたりして」
「どんな小さなコトでも良いから話してくれ」
「許されない。防衛機密なの。既に守秘義務を超えてるわ。あとはペ…じゃなかった国に聞いて頂戴」
「わかった。ありがとう。それなりに情報は得られた」
「悪く思わないでね。無人機は航空産業の未来ソノモノなの。国境や街の安全に寄与し…」
「うーん。綺麗ゴトだょね。所詮は国民監視の強化だろ」
「おやおや。貴方はプライバシー尊重派?」
「僕自身、可能なマシンは駆使すべきだと思うが、全ての進歩に賛成してるワケじゃない」
ココで、黒髪のスカイは怪訝な顔をする。
「あら、大人ね。少し、お話ししても良い?ねぇ。私がバスカを経営する上で最大の危険変数は何だと思う?」
「スカイ。君だょ」
「惜しい。私と対等な者がいないコトなの。今のアキバを見回して、私と対等な人って、精神異常者の中にしかいない」
「ソレは、君自身が"私は精神異常者"と大声で叫んでるよーなモノだ…で、話が神学論争に陥る前に念押しで聞くけど、ロミロの拉致に貴女は関与してない?」
「してない。さっきも答えたわ…だけど、辛うじて、まだ相手が男なら、セックスのお付き合いが出来る。でも、それだけでは不十分ょ。もちろん、日々に彩りの変化はつくけれど、ソレだけの話。あぁ!人間関係を重視出来ないのが私の悩みだわ。ソレがバスカの経営にも暗い影を投げ掛けてる!ねぇ。こんな私の何処が悪いの?」
僕は断言スル。
「全部だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"ふれあい橋会談"を終え、スカイが勝手にアキバ側へ帰るので、僕は、仕方なく反対の神田側へ。タマには駅前へ遊びに逝こうか…
ところが、橋を降りてホンの数歩歩くや、嫌森神社の前にいた影法師に呼び止められるw
「テリィ様」
「げげっ?!ミユリさん?!いや!僕は!神に誓って、決して、絶対に神田駅前になんか…」
「私達って、ホントにお互いの考えてるコトが"手に取るように"わかルンですね」
いやいや。ソレは、単にミユリさんの勘が鋭いだけでしょ。
僕にはミユリさんの考えてるコトは全く察しがつかナイしw
第4章 愛は取調べの先に
「テリィたん。久しぶりね、元気そう」
ミユリさんには連れがいて…国益優先の特殊部隊にいるサリィさんだ。私服だけど。
あ、ミユリさんも、僕の推しメイドなんだけど、今宵は私服で…黒ブラだと良いな。
「水玉です。ボトムも」
ミユリさんがシレッとした顔で逝うので、僕は肝を潰すw
ホントに僕の考えてるコトがわかるのかっ?ナゼだっ?!
「え?水玉?ミユリさん、何の話?」
「さぁ?」←
「とにかく!テリィたん、どーして貴方は、アキバ絡みだと、いつも揉めゴトの真ん中にいるの?今回は、あのスカイとまで会って!」
サリィさんは、スゴい剣幕だw
「彼女はね。今までもプチ密輸とか手を出して小遣い稼ぎをしたり、去年2度、酔っ払って風紀紊乱で逮捕もされてる」
「へぇ。見かけによらないな。酒乱?」
「で、最近になって、大陸の中華な国のフロント企業の顧問になって、20万ドルの無償融資を取り付け、さらに"第2ステージ"へと進もうとしている。私達は、桜田門と協働で、彼女と彼女が経営するスタートアップを内偵中だった」
「その20万ドルは何かの賄賂ってコト?でも、無償融資だけじゃ逮捕出来ないょね。ソレに、その"第2ステージ"って一体何なの?」
サリィさんは、ミユリさんの方をチラ見。
ミユリさんは、ワザと明後日の方を向く。
「実はね。彼女のドローンは、スタンで虐殺事件を起こしてるの」
「アフガニ…スタン?」
「現地部族の格好をしたCIA要員がタリハンの部隊に間違われてドローンに殺された事件があって…全ては闇に葬られてるけど」
ああぁ僕も明後日を向いて何も聞かなかったコトにした方が…え?もう間に合わない?!
「バスカの高性能な偵察ドローンに太平洋の向う岸の国の軍隊が目をつけたのが、全ての始まり。テストも兼ねてスタンに送られ、パトロール中に川縁を行く一団を見つけた。タリハンの部隊に見えたけど、実はCIAだった。映像が不鮮明で分析官は誤認し軍は攻撃命令を出した」
「ちょっち待ってくれ。ソレって立派な武器輸出だょね?平和憲法の精神は護られてる?」
「眠たいコト、逝わないで。昔から日本車は第三世界じゃ立派な戦車で、各国ゲリラの標準装備ょ?今じゃプラモデルだって出てルンだから」
確かゲリラのフィギュアが3体ついてるw
「もちろん、バスカは契約打切りとなり、スタンから撤退したわ。でも、ソレで逆に関係者全員が不安になった。防衛省はノーコメントだけど、スタートアップが持つ高度なドローン技術に驚愕してる。そして、何より問題なのは、日本のドローンの誤認で太平洋の向う岸の国の若い兵隊が戦死した、と逝うコトね」
「そんなコトが知れたら、世論は激怒、沸騰し、一気に反日に傾く。新たな貿易摩擦、日本バッシングの火種にもなりかねナイ」
「全てが闇に抹殺される恐れがある。スカイは、慌てて全ての経緯をメモにし、自分にもしものコトがあれば自動的にマスコミに送りつける準備を整えた」
「やれやれ。ココでもデッドマン装置か。流行るね」
「業界では、彼女のメモは"死海文書"と呼ばれてる。彼女の命の担保ね。今じゃ、通気口から猛毒のフェニルシラトランを使う毒殺ドローンを送り込まれる時代ょ。ドアか通気口があれば、ドローンは何処へでも飛ぶわ。蚊が飛んだらドローンと思え、ってね。テリィたんも気をつけて」
僕は、思わずミユリさんと顔を見合わす。
でも、サリィさんの話は未だ終わらない。
「そんなスカイに接近を図る国があるの」
「…大陸の中華な国だ」
「YES。彼の国は、高度なドローン技術ごとスカイとバスカ社そのものを自国に取り込もうとして急接近を図った」
「20万ドルだモンな。誰でもナビくょね」
「そんな矢先に、ヤタラとアジア顔のお兄さんがスカイと密会するので…つい拉致ってしまったの、ゴメンナサイね」
「え?じゃ拉致したのは…空手使いの女黒覆面って…」
「あぁ!ごめんなさい。でも、連れの彼女が確かテリィたんのお友達のギャングだったわょね?ソレで念のためにミユリさんに連絡してみたら…」
「ビンゴ、と逝うワケかwねぇ。ロミロは、こんな緊迫の国際情勢とは無縁の善良な薬の売人ナンだが」
「了解。後で人気の無い路地に転がしとくから拾って。地下アイドル通りの裏で良い?」←
「あのなぁ。今日は萌えないゴミの日か?で、最後に気になる"第2ステージ"って何だか教えてょ」
「だ・か・ら!大陸の中華な国は、既に"第1ステージ"を終えたワケょ。ソレにスカイのバスカ社製ドローンが、どう関わっていたのかは、目下、防衛省が調査分析中」
え?ソレって…大陸発の新型コロナのコト?
…まさかコレに"第2ステージ"がアルの?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
恐怖の"第2ステージ"の存在に戦慄するばかりだが、他方、神田川畔では、もう1つの"第2ステージ"の幕がけたゝましく開くw
「待たせたな。万世橋の新橋鮫だ。善良な匿名市民から路上に人が転がってるとの通報がアリ、保護させてもらった」
「え?え?コレは保護なのか?まるで取調べじゃナイか?弁護士は?」
「この先の話を弁護士が聞いたら、お前はお仕舞いだ。単刀直入に行くぞ。ジュリを追い回すのはやめろ。彼女は俺の精神安定剤だ。お前も元カレならば、ジュリの無事を願いこそすれ、新しい恋の邪魔はしないハズ。それとも未練があるのか?」
「交際するだけなら自由だろう」
「大迷惑だ。気が散る。俺は、日々人を救ってる。ソレを妨げられては困る。そもそも、お前、彼女の価値を見損なってないか?」
「最高の元カノだ」
「仕事を絡めない彼女自身のコトだ。お前は自分が生きるのに便利だから、彼女を高く評価しているだけだ。彼女の幸せはまるで考えてない。お前じゃジュリを幸せには出来ない。じゃあ起訴手続きを…」
「ま、待ってくれ!わかった。彼女からは手を引く。だがな。鮫の旦那、俺が無理でも、いずれ旦那以外の良い相手がジュリには現れるぞ」
「いずれにせよ、お前の出番はもう無いと逝うコトだ。今日遭ったコトは、ジュリには黙っといてやる。飯でも食うか?昭和通りに美味いホットドッグのモーニングを食わせる店があるンだ。奢るぞ?」
最後に、ロミロが絞り出すような声で逝う。
「鮫の旦那。コレは司法取引か?」
「いや。単なる取引だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日。
風は強いけど、抜けるような青空の下、僕はミユリさんと昌平橋を歩く。
今回も、最後の最後にジグソーパズルの最後のパーツがハマったようだ。
「social distance って面白いょね」
「え?」
「人と人が距離を取るだけで、今まで人混みに紛れて見えてなかったモノが、急に見えて来る」
ミユリさんは"また始まった"と逝う顔。
「僕は、今まで色んなコトを詮索ばかりして来た。ソレを誰かに謝らないとイケナイのカモなー」
「テリィ様が謝るのは、御自分が満足している時だけですょね?」
「ぼ、僕はミユリさんの存在が僕に有益だってコトをミユリさん以上に評価してて…」
ところが、このヤリトリを聞く者が…6人。
松住町架道橋の橋脚は今日も大入り満員w
「コ、コレって…口説いてるん?」
「うーん。彼女が、テリィたんの生物学的に合致したパートナーか」
「胸がナイわ」←
やれやれ。僕は急に人混みが恋しくなるょ。
おしまい
今回は最近ドラマでよくモチーフになる"受け子"をネタに、"受け子"急募で秋葉原に来た元ストリートギャグ、恋仇となる新橋鮫、ドローンスタートアップの狂った女CEOなどが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、新型コロナのパンデミック下で人影の消えた秋葉原に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。