9話 違和感と岩感
「しかし、なぜあんなにもファングウルフがいたのだろうなぁ。普通はこの俺を襲うわけないのだが」
違和感を感じていたサラマンダーは、
森の奥の方に目を向けた。
サラマンダーのかかげた手の周りに火の玉がいくつも現れた。
「お前たち、様子を見てきてくれるか」
その言葉とともに火の玉は森の奥へと飛んでいった。
「今のはなに?」
私は興味津々である。
「下級精霊たちだ。もちろん火の精霊な。
こういった調査はあいつらに頼むのさ」
スキル精霊眼を持っていれば
下級精霊の姿も見ることができるようだが、
私は持っていなかった。
「たしかに妙な気配がしますね」
「あぁ、そうだね。あそこらへんの空気がおかしい」
3人とも森の奥に何かしらあると気がついているようだ。
「気になる…」
気になってどうしようもない私をユキが止めた。
「ここは一旦、火の精霊に任せましょう。
2人は湯石の作成をお願いします」
お湯がでる岩は湯石と名付けられていた。
「それならもうできてるよ」
「いつのまに!俺の出番は!」
「いらないよ。
水の温度ぐらい変えられるからね。この石に放水と温水の魔法を付与しといたよ」
ウンディーネに渡された私の手のひらサイズの湯石に魔力を流すとお湯がでてくる。
「完璧よ!ありがとう、ウンディーネ!」
「あとはこの石をかっこいい形にしたいんだけど」
「お任せを」
ユキは私の顔くらいの岩を魔物の顔に仕上げた。
そして空いている口に湯石をはめ込んだ。
「かっこいい!魔物みたいだけど何の顔?」
「私の国では獅子と呼ばれています。百獣の王と呼ばれていて、獣の王様です」
「いいね!
じゃあ、これを浴槽に設置して…完成!」
お風呂が完成した。
岩から作っているからものすごく重そうだ。
しかし丈夫そうである。
「これどうやって運ぶんだ?」
「ふふふ、こうやるのよ!」
「転送召喚!」
浴槽の下に現れた魔方陣はフッと消えてしまった。
「嘘?失敗?なんで?」
訳がわからない。
レベルが低いからかと思いステータスを見ることにした。
「ステータス」
転送召喚 レベル1
自分が契約している者を好きな場所へ転送させる。
なるほどと納得したが、
悩みはじめた。
「どうしよう…」
悩んでいるうちに、
火の精霊たちが戻ってきた。
何やらサラマンダーと話しているが、
精霊眼を持っていないからか言葉がわからない。
「ふむ…アリア、俺は森の奥へ行こうと思う」
「どうしたの?」
「着いてくればわかる」
「わかったわ、みんなで行きましょう」
私たちは森の奥へと向かった。