8話 森と油断
「はい、到着ー」
森の中の岩場まで一瞬でたどり着いた。
「アリア、すごいです」
「転移魔法か?いや、違うな。召喚ゲートを転移魔法として使っているのか」
サラマンダーは難しい顔をしている。
「さっそく岩を運ぼう!
ユキ、大きすぎず小さすぎず手頃な大きさに切ってちょうだい」
「かしこまりました。剣をいただけますか?」
「あ、剣ね。ちょっと待ってて」
「武器召喚・剣」
スキルかレベルが1だからか、召喚した剣のレア度は最低のEランクだった。
召喚した剣をユキに渡した。
受け取ったユキは、構えて集中した。
「ハッ!」
私には太刀筋が見えなかった。
いつのまにか岩場までが四角く切れていた。
「やるな、ユキ」
サラマンダーが感心している。
ユキはすごい人なんだと改めて思った。
「もう少し高さを低くして、岩の中のをくり抜いて」
あっという間に浴槽が出来てしまった。
「俺たちの出番はなかったな」
「いいや、出番のようだね」
「グルル…」
魔物が現れた。
ファングウルフの群れに囲まれてしまった。
20匹はいるだろう。
「ハハッ!この俺を襲うとはいい度胸だ」
戦闘態勢に入ったサラマンダーとウンディーネは、やる気満々でいる。
「待って!サラマンダーはだめ!」
私は急いでサラマンダーを呼び止めた。
「燃えちゃう…」
「大丈夫だ、手加減する」
「炎の槍」
無数の炎の槍が空中に現れた。
次々とファングウルフに向かって飛んでいき、
突き刺さって燃える。
一瞬でファングウルフの群れはいなくなってしまった。
「どんなもんだ!なぁアリア!」
私を見ているドヤ顔のサラマンダーの背後から、ファングウルフが燃えながら飛びついてきた。
「…詰めが甘いよ。貫け、氷の牙」
ファングウルフは地面から生えてきた氷に体を貫かれた。
「ファングウルフ…名前負けだね。ボクの牙の方が優秀だよね、アリア」
「カッコつけてんじゃねぇぞ!血まみれになったじゃねぇか!」
サラマンダーは体の上から下まで真っ赤に染まっている。
「死にそうだったからね。お礼の言葉もないのかい?」
「あぁ!?助けてくれなんて言ってねぇし」
「やれやれ…子供だね」
「もう、2人ともやめてよね」
私に怒られたサラマンダーとウンディーネは、しゅんと落ち込んでしまった。
「お前のせいで怒られてじゃねぇか!」
「ふざけるな、君のせいじゃないか」
「やめなさい!これから2人で協力してお湯を出す物作ってもらうんだから仲良くね」
2人はにらみ合っていたが、
怒った顔をしている私を見たからか、
諦めたようでため息をついた。
「よろしい!じゃあ仲直りが済んだことだし、お願いね!」
少し不安だ。