表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/127

相川煌と水樹弥生(2)

今回は少し長めになりました。

ビックリするほど自然に水樹弥生が突然話しかけてきた。

「相川君ってさぁ、いつも不愛想で仏頂面だよね」

「無口だし、他のクラスメイトと会話してるところなんか殆ど見たこと無いし」


コウは、そっぽを向いて聞き流す事にした。


そんな事お構いなしに続けて話す弥生。

「でもね、相川君て女子に人気あるんだよ!」

それを聞いて、むせて咳き込むコウ。


弥生はコウを見つめてニッコリ笑顔で

「相川君、、、結構美形だしね、それに実は優しいし」

「誰か困っていたら何も言わずに手助けしてくれるじゃない」


弥生の話の内容にビックリしたまま硬直するコウ。

そしてしたり顔でコウを見つめる弥生は

「女子は割と、そんな所をよく見てるんだよ」

照れて仏頂面になるコウ。

「、、、、、」


コウは訝し気に弥生を見返して思った、、

『俺をからかってるのか?』

『でもそんな事して何の得が、、、』


さらに考え込むコウは

『それに、、、そんな事する娘には見えないし、、』

『だからと言って鵜呑みにして期待する気も無い』


無意識に考え事をしつつ弥生を見つめてしまっていた。

いつもはこんな距離で他人を見つめる機会などないのだが、、。

そんなコウの様子を不思議そうに見つめ返して、小首を傾げる弥生は、

「うん? どうしたの?」


慌ててコウは否定するようにそっぽを向くと

「い、いや、何でもない、、、」

自分を落ち着かせる為に、手持ちぶたさになった手で机の上に置いてあったパソコン雑誌を触る。

『なまじ人柄も良いだけに、こんな風に話かけられたら普通の男子なら勘違いしてしまうぞ』

『それに馬鹿な男子なら無駄に期待もするだろうな、、、』


油断していると再び水樹弥生が切り込んできた。

「ねぇ、その雑誌の表紙の人、、、、」

いつもの調子を奪われたコウは、つられて返事をする。

「え? 表紙の人?」


コウが手で何となく触れていたパソコン雑誌を弥生は指して、

「そう表紙の人?」

「アヴァロンオンラインの剣聖シウスの中の人だよね?」

「そうだな、、」と相槌をしつつ内心でコウは、

『中の人ってよ、、、』と呟いて苦笑してしまう。


弥生は少し興奮した様子で

「昨日テレビでやってたのよね、アヴァロンオンライン世界最強決定戦」

「深夜放送だったけど凄い視聴率だったみたいね」

コウは意外そうな表情をして

「まぁ世界最大のアカウント数を持つと言われるMMOだしな」

「水樹さん、ネットゲームとかしなさそうだけど、興味とか有る人なのか?」


弥生は内緒話をする仕草で、

「皆には内緒だけど、私、AO(アヴァロンオンライン)プレイヤーなの」

少し驚いた様子でコウは、

「へぇ、、意外だな、、」


弥生は少し照れながら

「偶然ネットで黒瀬ヒカリさんを知ったんだけどね」

「もの凄い美人で、しかもプロゲーマーだって言うじゃない」

「色々驚いて、色々調べてたら、、、」


てへっ、と言う仕草をして弥生は、

「いつの間にか私もAOのプレイヤーになってました」

コウは我慢できずに笑ってしまい

「ははっ、、いつの間にかって、、」


そして弥生は、真顔になって

「何ていうか、、剣聖シウスが恰好良すぎで、」

「そのプレイヤーが絶世の美女で、2500万人の頂点に立っているって少し憧れちゃうな」


コウが知る水樹弥生のイメージは、こんな事を言わない。

コウは、らしくないなぁと思った。

だが自分もらしくない事を今している。

こうして水樹弥生と、まるで友達のように会話をしている。

だからなのかコウも、らしくない事を言ってしまった。

「水樹さんも十分恰好良いと思うよ」


弥生は少し驚いた表情で

「えっ?!」


コウは、片手の指を折りながら数えるように

「容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、性格が良くて、次期生徒会長候補と非の打ち所が無い」


それを聞いた弥生は耳まで真っ赤になる。

そして少し(うつむ)くと

「面と向かって、そんな事言われたのは初めてかな、、、」

コウは意外そうに

「そうなのか?」


俯いたまま、

「私ね、何でも出来て当たり前と思われてるから」

「あえて口に出して褒められたり評価される事、、、無いのよ」

弥生はコウを見つめてはにかむように

「だから照れちゃうよ、、、、」


コウはイスの背もたれに身を預けて、さも興味が無く他人事のように、

「何でも出来て当たり前と思われてる分」

「応えなきゃいけないから苦労が絶えないだろうな、、、」


弥生は呆然とした様子でコウを見つめたまま無言になる。

そして顔が赤くなり

「君が何気にモテる本当の理由がわかった気がする」


コウは少し嫌そうな顔して

「何だよ、それ、、、」


悪戯っぽい表情で弥生は

「でも女の子に告白とか全然された事無いでしょ?」

コウは本当に嫌そうな顔で、

「なんでそう思う?」


「だっていつも相川君、話しかけるな、関わるなってオーラだしてるもの」

「君は空気を装ってるつもりみたいだけどね」

と弥生は見透かしたような表情で言う。

そして偉そうにコウを指さして

「女の子は色々なところよく見てるのよ!」


コウは溜息をついて窓の外を見ようとする。

が、コウの肩をツンツンとつつく弥生。


コウはイラっとして、それを隠さずに

「まだ俺に絡むのか?」

弥生は全く怯む様子もなく

「うん、、、お願いがあるんだ」


「何だよ、、、」と面倒くさそうに答えると、弥生は嬉しそうに

「相川君って、AOの事詳しそうだよね」

「まぁ普通の人よりは詳しいかな、、」


弥生は身を乗り出して

「なら私のオンラインフレンドになって!!」

「AO始めてまだ日が浅くって、、フレンドいないし詳しくないし、、、」

コウは眉間にシワを寄せて言葉もない、、。

『マジかよ、、』


弥生は上目使いでコウを見つめると

「ソロじゃコンテンツもきついし、色々教えてもらえて手伝ってくれるフレンドが欲しいの!」


「どうせ俺が学校では誰とも絡まないから、AOやってるのバレないとか、そんな事思って言ってるんだろ!!」

と少しきつめに行ってみるコウ。


すると弥生は、しゅん、、となって

「そんなつもりじゃ、、、」

さらに俯いてしまって泣きそうな表情になる弥生。

コウは、そんな姿をみて

『おいおい、、、』

『これじゃぁ俺が水樹さんを泣かそうとしてるみたいじゃないか、、、』


コウは、仕方なく諦めた様子で

「分かったわかった、、」

「だからそんな顔するな」

と言ったものだから、ケロっと表情をかえた弥生は、

「やった!」

「じゃあ、始業式済んだら、相川君の家に遊びに行っていい?」


もうほとんど怒った状態のコウは、

「何故そうなる?!」

「友達でもないし、しかもまともに会話したのも今日初めてだろ!!」

そんなコウを(なだ)めつつ弥生は、

「まぁまぁ、落ち着いて」

「そう言うなら友達になればいいし」


弥生はスマホを取り出し見せると

「アドレス交換しましょう!」


迫る弥生に対して後ろにのけ反るように嫌がるコウ。

「、、、、、、」


さらに迫ってくる弥生、、。

近い、近い、近い、、、。

そして今日何度目の溜息だろうか、をついて

「わかったよ、、」


弥生は本当に嬉しそうな表情で、

「ありがとう、やっぱり相川君は優しい良い人だね!」

それを聞いたコウは、ガクっとなる。

『男女間の会話で、たしか、優しくて良い人は、、、けなし文句だよな、』

と自問自答していると、教室に騒がしい女子が3人はいってきた。


コウは、教室に人が少ないのと、近くの席にクラスメイトが居なかったことに安堵する。

弥生との今までのやり取りが、他のクラスメイトに聞かれるのはコウとしては不味いからであった。


そしてその騒がしい女子3人組が弥生に声をかける。

「おはよう! 組長」

「おはよう!」

「組長ーひと月ぶりー?」

弥生は笑いながら、「なんで組長なのよー」と反論する。

「クラス委員なんだから、組長でしょ!」

「なんでやねん!」

「はははっ」


我関せずと窓から外の景色を眺めるコウは、。

『今日は、、朝から喋りすぎたかな、、、』










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ