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ネモと前原正美(3)

unknownとAaaaaaの準備が完了し、PvPが開始される。


お互いを隔てる空間は10m程だ。


unknownは、その場から動かずに抜刀する。

Aaaaaaはというと、短剣を装備しているが、背中にはサブなのかメインなのかクロスボウを背負っている。

武器は抜かないようだ。



お互い不正な改造キャラクターである。

故に、クラスは何かと問うのは愚問と言っていいかもしれない。

しかし、基礎となるクラスが分かれば、どういった立ち回りをしてくるか予想は出来る。



そういう意味ならunknownは、抜刀した訳で立ち回りが”侍”のそれとモロバレだ。

unknownが相手の出方を窺っていると、突然Aaaaaaがクロスボウを構えunknownを狙い速射した。


AOで予備動作が少ないクロスボウは、PvPでの中距離戦では非常に強力な武器だ。

通常の近接武器なら相手まで移動して攻撃を加えなければいけない。

だがクロスボウは、いきなり攻撃を加えることが出来る。

中途半端な距離で、相手の出鼻をくじくには便利な武器だと一般的に認知されている。


そのクロスボウの矢が、unknownを強襲する。



だが矢を、あっさりとunknownが刀で打ち落としてしまう。

驚愕するAaaaaaは「なっ?!」と声を漏らす。



Aaaaaaが驚くのは無理もない。

高速で飛来する矢を、近接武器で打ち落とすなど普通は不可能である。

もしそれが可能であるとするなら、剣聖やナインピラー級と言ってもいいだろう。


そのunknownがAaaaaaへ向かって疾走する。


Aaaaaaは舌打ちしつつ後方へ素早く距離をとろうとするが、unknownの方が速い。

振り上げたunknownの一閃がAaaaaaを襲う。



回避が間に合わなかったのであろうAaaaaaは咄嗟に短剣を抜いて、unknownの一閃をガードする。


尚も後方に下がろうとするAaaaaaを追い立てる様に、執拗にunknownの連撃が繰り出される。


だが全てをアッサリと的確にガードをしてみせるAaaaaa。

上中下に鋭く放たれるunknownの刀の攻撃を、少しも被弾する事なくAaaaaaは防いだのだ。



侍の刀の攻撃は、一撃一撃がダメージが高い上、連続でガードするとガード耐久値が一気に減少してしまう。

そしてガード耐久値が0になってしまえば、防御不能状態(ガードクラッシュ)が発生して無防備になる。


だから一般的に侍相手には近接の打ち合いに”付き合わない”のが定石だ。


だがどうだろう、Aaaaaaはそんな事を気にする様子も無くガードし続ける。


何か変だと訝しんだunknownの一瞬の逡巡をAaaaaaは見逃さなかった。


unknownの甘い攻撃をAaaaaaは短剣で相殺し、ほんの少しのアドバンテージを利用して後方に距離をとってしまう。



そしてすぐさま中距離に有用なクロスボウをunknownに放つAaaaaa。



unknownは慌てて矢を刀でガードする。

打ち落とす余裕は無かった。



ネモの傍で観戦していた前原が、目を細める。

『あれだけガードしてガード耐久値が減っているように見えない』

『本来ならガードクラッシュしていても、おかしくないはず』

『ガードの完璧さといい、、、これは、、』



前原はネモの耳元に囁くように

「恐らく防御面をチート化してるね」

「プレイヤーの技量は関係なくオートでガードしてくれるんだろう」

「ガード耐久値も随分いじっていて、まるで底なしだ」


そしてニヤリと笑う前原は

「派手なチートではないが、やっかいだぞこれは、、」


ネモは鼻でフっと笑うと、

「ネタが分かっていれば大した事はない」




再びunknownはAaaaaaに鋭い斬撃を浴びさせようと素早く迫る。


振り上げたunknownの縦斬りがAaaaaaの頭部を狙う。


しかしAaaaaaはガードでも相殺でも無く、短剣でunknownの一閃を受け流した。


受け流された事により、unknownの体勢は崩れてしまう。


Aaaaaaはクロスボウを構えて呟く。

「馬鹿かお前、単調な攻撃ばっかりしやがって」


そしてAaaaaaのクロスボウによるウェポンスキルが発動する。

【Aaaaaaのブラストショットが発動】


それは狩人が使える強力なクロスボウのウェポンスキルの1つ。

近距離に弱いとされる狩人の肝とも言われるスキルで、距離が近ければ近いほど威力が増す。



次の瞬間、Aaaaaaの放ったブラストショットが眩い一筋の閃光にかき消され、Aaaaaaの体を貫いていた。

体力ゲージがレッドゾーンに突入する。

即死は免れた。


だが、何が起こったか分からなかった。

Aaaaaaは、戦闘ログを確認する。


そこには、

【unknownのホーリーレイが発動】

と記されていた。



unknownが放ったホーリーレイが、Aaaaaaのブラストショットを一方的にかき消し、その上Aaaaaaの体に風穴をあけたのだ。



Aaaaaaは驚愕の表情で呟く。

「ホーリーレイ、、、馬鹿な!」

「ナインピラーの魔法を何故?!」



unknownの顔がほくそ笑んだように見えた。

Aaaaaaは逆上してしまう。


短剣を振りかざしてunknownに襲い掛かった。


unknownが静かに呟いた。

「Lv90 参の太刀 疾風 」


Aaaaaaがしまったと脳裏で叫んだ時には遅かった。

Aaaaaaの短剣は、unknownがいた筈の空を切る。


それと同時にunknownの疾風がAaaaaaを背後から切り裂いた。



Aaaaaaが倒れ込む姿を一瞥してunknownは、

「ガードされるなら、、」

「されないタイミングで攻撃すればいいだけの事」



Aaaaaaを操作するプレイヤーの方から、テーブルを殴りつけるような音がした。



前原は苦笑しながらネモに、

「あらら~、あちらさん折角稼いだお金がパ~だね、、」


ネモはunknownをログアウトさせながら、さも興味なさそうに

「向こうも元々稼ぎに来た訳じゃないだろ」

「悔しいのさ、PS(プレイヤースキル)でもキャラでも勝てなかったことが」

「きっとな、、」



ネモはUSBアクセスキーをパソコンから取り外して、前原に向き直ると、

「で、こんな事で自分を呼んだのか?」


前原はわざとらしく思い出したように、

「え? あ、、そうだった」

そして大仰に道案内するかのように、進む先に手をかざす。

「オーナーがお呼びだよ」



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