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WOS ~オンリーワンスキル~

誰もがその時、確信した。


最強の剣聖が地に伏せる、その姿を脳裏に浮かべて。


その筈だった、、。


至高のノヴァが放った最強のウェポンスキル・断空烈破が、無防備な剣聖の体を切り裂くはずだった。


剣聖は、その時呟いた、。

「絶掌・零式」


高速で薙ぎ払うように剣聖の左手が瞬動する。

甲高い金属音が響き渡り、剣聖を切り裂くはずだった断空烈破の一閃が、その左手に受け止められていた。


そしてそのまま流れるように左手を振るうと、それに釣られてノヴァの剣の軌道があらぬ方向に逸れてゆく。


一瞬の出来事だった、、。

ほんの1秒ほどの時間だったろうか、ノヴァは内心で驚愕する。

『零式だと!!??』


断空烈破を受け流されて体勢を崩したノヴァは、さらに驚愕する事となる。

『!?』

動かないのだ、体が、、。

青ざめた顔のノヴァは、その答えを瞬時に導きだした。

断空烈破の技硬直、、、。


今までは、必中する状況で使っていた断空烈破。

このウェポンスキルが繰り出されるのは、相手が必ず倒れる時であり、これが(かわ)される又は、防がれる事など無かったのだ。


ノヴァの背後で漆黒の刃を振り上げて立つ剣聖の姿。


その時ノヴァは、、脳裏に己が敗北した姿が浮かんだ。

いや、まだだ。

『この一撃に耐えさえすれば!!』

ノヴァは最後まで諦めなかった。

次の己のターンに備えて精神を集中させる。


それを冷たく見下ろすように剣聖は

「妄執の太刀・絶斬」


ただ漆黒の一閃が、なんのエフェクトも伴わない地味な一閃がノヴァの体を通過する。


次の瞬間、ノヴァの体は肩口から袈裟斬りに両断され、一瞬の間の後に地面に倒れ伏せる。

至高のノヴァのHPゲージは、0を記していた。



会場内を静けさが支配する。

この場の全員が、何が起こったのか理解できないでいた。



解説席のマイケルが、我に返り慌ててマイクを手に持つと

「き、決まったー!!」

「剣聖シウスが至高のノヴァを撃破しました!!」


会場中央の特大モニターに、シウスがノヴァを撃破した瞬間のリプレイが流される。

「決まり手は、絶掌・零式からの、、」

「妄執の太刀・絶斬!!」


物凄い観客からの喝さいと歓声が武道館会場全体を揺るがす。

鳴りやまない拍手が、パソコンの前に静かに座する黒瀬ヒカリに注がれる。


マイケルは興奮した様子で、

「絶掌零式に、絶斬、、どちらも公式情報では未確認のスキルです!!」

「まさに奥の手、隠し手を使用しての勝利!」

「剣聖シウス、2度目の優勝を飾りましたーーー!!」


黒瀬ヒカリは、ゆっくりと溜息をつくように息をはくと、席から立ちあがり観客に向かって手を振り上げる。

割れんばかりの歓声が、再び会場を覆う。


ホッとした様子でヒカリを見つめる脇村は、

「冷や冷やした、、、」

隣でうなずくようにキヨミが、

「だね、でもさすがヒカリさんだ」


湧き上がる観客達を鎮めるようにゼスチャーしつつマイケルが

「剣聖シウスのプレイヤー、黒瀬ヒカリさんには優勝賞金1000万円と」

WOS(オンリーワンスキル)習得用のクライアントデーターが手渡されます!」


ヒカリの背後から声がかかる、

「まさか、2つも奥の手をこの日の為に隠していたとは、、」

ヒカリが振り返ると、そこにはいつの間にかカイエンが立っていた。


カイエンは、とぼける様な表情で

「いかなる状況でも出せる絶掌と」

「プレイヤーに対してはオーバーキルとも言える威力のウェポンスキル」

「それに比べれば、私のLV99バーサーカーソウルなど子供騙しも良いところでしたね」


ヒカリは優し気な表情で

「いえ、、正直ギリギリのところでしたよ」

「使用するつもりが無かった奥の手を、2つも使ったのですから」


懐から名刺を取り出してヒカリに差し出すとカイエンは

「フフフ、、、強気なところもさすがと言うか」

「ですが、来年こそは負けませんよ!」


ヒカリは差し出された名刺を何気なく受け取ってしまい、頭を傾げる。

それを見たカイエンは、

「何か有れば、そこに連絡をください」

「または、私に興味があれば連絡して下さってもOKですよ」


そしてカイエンは返答も聞かずにその場を後にする。

ヒカリはヤレヤレとといった様子で溜息をつくと、

『ナンパかよ、、』


ヒカリの緊張の糸がそれで切れたのか、ようやく年相応の美しい女性の表情に戻る。

だが、一息つく間もなくボイスレコーダーを手に持った記者やライター達がヒカリに押し寄せる。

「黒瀬ヒカリさん、一言お願いします!」

さらにカメラマンも押し寄せてきて

「黒瀬さん! こちらに笑顔お願いしまーす!」

「こっちにも視線いただけますか!!」

ぎこちない笑顔のヒカリがカメラマンに視線を向ける。



大会自体は、これで終了だが、それに付属するイベント等はまだ控えている。

プロゲーマーでもある黒瀬ヒカリの今日一日は、まだまだこれからのようだ。











ようやくプロローグがおわりました。

次回から本編となります。

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