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GMツールとunknown

ヤヨイはシウスに頭を下げるとすぐにログアウトした。



コウはマイクをミュートにしてヘッドセットを外すと、少し疲れたように自分の肩を揉む。


フゥと息を吐きコウは休憩しようかとイスを回し振り返ろうした時、真後ろに結が立っていて物凄くビックリする。

「うわっ!、、、いたのかよ、、」



少し怒った様子で結は、

「失礼な言い回しね、ずっと前からいたわよ!」

「ヘッドセットして集中してたから気付かなかったんじゃない?」



そして結は、後ろからコウの肩に手を置いて

「疲れた?」


コウは、「う~ん、、」と漏らすと

「まぁあまり人にレクチャーしたりする事ないし」

「慣れない事は、やっぱり疲れるかな、、、」


結は優しくコウの肩を揉みだすと

「そうかなぁ、、」

「後ろで見てたけど、意外に様になってたよ」

「教え方が上手いなぁって私は思った」


結に肩を揉まれて声が漏れるコウ。


モニターに向き合って殆ど動かないのだから、肩も凝るというものだ。

それを分かってるのか、結は頻繁にこうやってコウの肩をマッサージしてくれる。



兄妹にしては、スキンシップが多い気もする。

その上、兄妹仲も良い。


だが妹の結は、年頃の女子高生である。

もう少し距離をとった方がいい気もするが、当の本人は、コウを着せ替え人形か何か勘違いして楽しんでいるように思えてならない。



はたから見ればブラコンであるな、、、。



そしてコウは、結に頭が上がらない所がある。

つまるところ、俺もシスコンなのだろうなぁ、、と内心で呟く。



そんな事をコウが考えていると、結が唐突に

「お兄ちゃん、教えるのが上手だし頭いいから教師になったらいいんじゃない?」


何を言い出すかと驚くコウは、

「おいおい、プロゲーマーとして活動する黒瀬ヒカリにそんな事言うか?」

「そもそも学生相手に教壇に立つとか怖くて出来る訳ない、、、」



結は小悪魔的な笑顔で、

「そうかなぁ、でも、それは今の相川コウとしてでしょ」

「黒瀬ヒカリで教師とか絶対皆、言う事聞きそうだし」

「下手したら校内でファンクラブとか出来そう!」



コウは溜息をついて呆れながら、デュアルモニターにして使っているサブモニターの電源を入れる。

そしてそのサブモニターにあるアプリケーションを起動して映し出す。



コウは少し申し訳なさそうに結に振り返ると、

「すまん結、、今からサーバーの巡回なんだ」

「一時間程まだ手が空かない、、」

「コンテンツの手伝い、その後でもいいか?」



結は、ぶ~と頬をふくらませると

「仕方ないなぁ、、適当に時間潰して待ってるよ」

そして結はコウの美しくて長い銀髪をいじりだす。

三つ編みにでもするようである。


コウは内心で、呟く。

『ほんと、俺の事着せ替え人形と思ってるんじゃないのか、、』



コウはモニターに向き直り、サブモニターを確認しつつシウスを移動させる。



やはりコウの髪の毛を三つ編みにしていた結が、後ろからサブモニターを見て、

「お兄ちゃん、前から気になってたんだけど、そのもう一つのモニターは何なの?」


コウはサブモニターの淵をトントンと触れて

「これはね、GM(ゲームマスター)用のアプリケーションを表示してるんだよ」



「おおお」と目を輝かせて結は、

「へぇ、、これが噂のGMツールかぁ!」

「で、その名前みたいなのが、ずら~と並んでるのは?」



GMツールに表示されている、文字をコウは指して

「名前見たいじゃなくて、実際にキャラクターの名前」

「俺がいるエリアに、そのエリアにいる全プレイヤーキャラクターの名前が表示される」



結は興味津々で、そのモニターを見つめる。

続けてコウは、

「不正ツールを使っていたら検知して、名前の横に警告が表示される仕組み」



キラキラした目でコウを見る結は、

「これで悪者を見つけて、やっつけて捕まえちゃうんだね!」

コウは少しうっとうしそうに

「早く手伝って欲しいなら、邪魔しないでくれる?」









火の付いたタバコを灰皿に置き、そしてゆっくりと息を吐く。

タバコの煙でしろくなった息が、その艶やかな唇の間から流れ出す。



気怠そうに2つのモニターを見つめる。

その女性は、少しくせ毛のある長い黒髪と大きな愛らしい瞳で、とても整った容貌だ。


歳は30歳程か、キャリアウーマンなら女の盛りである。

だがこの女性キヨミは、外にでて就業に勤しむことなどない。



キヨミはAOのプロゲーマーで、スポンサーも付いている為、基本的に自分のマンションに引き篭もりなのである。


その容貌を買われて偶にあるキャンペーンのイベントで可愛い恰好や綺麗な恰好をして出るくらいである。



そんなキヨミが、面倒臭そうにGMツールを起動して、ナインピラーらしい仕事をしていた。


モニターの前で愚痴るように

「いくら私がサーバー公開してるからって、、」

「わざわざナインピラーが巡回するサーバーにチーターなんか来る訳ないよなぁ」



そのまま有象無象を見る様にGMツールを確認しながら、エリアを移動していくキヨミ。



そしてエリアを移動してすぐ、異変に気付く。

GMツールのモニターに、”unknown"という名前が表示されたのだ。



キヨミは、まさか、、と思いつつ、そのunknownがいる座標に自分のキャラクターであるキヨミンを向かわせる。



unknownの姿は確認できない距離だが、GMツールのモニターに不正検知と警告が表示される。


自分を誘っているのだ。

ナインピラーのキヨミが気付いて、確かめに来るタイミングで不正ツールを起動したに違いない。



キヨミはニヤリとほくそ笑む。



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