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水樹弥生とナインピラー(4)

今回は、いつもより長めになってしまいました。

ハユハが天位雨音をフォローしようとしたのか

「雨音さんは最速でエンドコンテンツ系を攻略して、その攻略法をネットで公開してますよ」


そして、「あっ」とウッカリした表情でハユハは、

「でも、他のプレイヤーへの恩恵で言うなら、攻略法とファーストクリア特典はトレードオフになっちゃいますよね、、、」



社長は、そんなハユハを見やって笑いながら

「まぁ、あれだ良い意味でも、悪い意味でも、」

「振り切った人間は、1つの世界を動かす程の影響が有るって事だ」


ロアは嬉しそうに、BARカウンターの前に佇んでいたヒカリへ

「と、社長が申しておりますが」

「同じく振り切ってらっしゃるヒカリさんの意見は如何ですか?」


お前は秘書か!とロアにツッコム社長を他所にヒカリは、

「雨音さんに対する私の個人的な評価かな?」


「うん、そう!」とワクワクした表情で答えるロア。



ヒカリは、少し考えながら思い出すように

「雨音さんとは何回かエンドコンテンツで一緒させて貰った事がある」

「さすがと言うべき指揮能力と統率力だったね」

「あと、何よりも洞察力が凄い」



ロアは、興味津々に続けて

「じゃあ、雨音さんとのPvPはどうだった?」

「公式戦は確か一戦もしてないみたいだけど」

「ランキングに影響しないフリーマッチは、対戦した事あるでしょ?」



するとヒカリは、特に感情を含まずに言った。

「勝負が着かなかったよ」



驚く一同。



そんな一同を他所に、淡々と語るヒカリ

「ルールを変えて2回程対戦したが、それもドローだったね」



嫌そうな顔のキヨミが

「マジか、、、」

天を仰ぐような仕草でハユハが

「フリーマッチとは言え、剣聖相手に1対1で引き分けるなんて、普通じゃないですよ、、」

脇村は、俯いて溜息混じりに

「やっぱりナインピラー最強説は事実ぽいかな、、」



そんな一同の様子をみて、改めて感心した弥生は

「雨音さんて、凄いんですね」


ヒカリはニヤリとしつつ

「うん、、」

「雨音さんが世界最強決定戦に出場していれば、」

「今頃私は、剣聖では無かったかもしれないよ」



一同、「まさかねぇ」とハモりながら苦笑する。



そして乾いた笑いが続き、微妙な雰囲気になる。

慌てて話題を変えようとロアが、

「あ、そうそう、、新しいネタあるんだぁ」

「ちょっと楽しそうな感じのね!」



「ほほう」と少し感心を示す社長。


ハユハが、ニヤリとして一言。

「ひょっとして辻斬りの話ですか?」

あれぇ?と、残念そうなロアが

「何で知ってるの?」

「ハユハは、いつも微妙〜に情報早いよねぇ」

脇村が呆れたように

「辻斬りを楽しそうって、、、」



驚いた様子で弥生は、

「AOの中で辻斬りなんて出るんですか?」

「時代劇みたいですね、、」



ロアが弥生の例えが面白かったのか、笑いながら

「ここ一週間で5件、Lv90代のプレイヤーが辻斬りに合ったの」

「キャラ名は、アンノウン」

「相当なプレイヤースキルの持ち主みたい」


社長が腕を組んで唸るように

unkown(アンノウン)、、、未知、不明か、、」



ハユハは不思議そうに

「辻斬りと言う事は、非公式サーバーでのPKですよね」

「アイテムやお金目当てですかね?」


ロアは、首を小さく横に振ると

「いやぁ、それがね全くアイテムは取らないらしいよ」

「不意打ちにしろ、PvPの状態にしろ負けて行動不能になったら」

「インターフェースが全く使えなくなって、しかも蘇生ポイントにも戻れないみたい」



キヨミが不安そうに

「なにそれ、、」

「それってキーボードとかマウスが全く反応しなくなるって事?」


キヨミにビシっと指をさして

「そう言う事!」



そしてロアは、ボゥーと突っ立って少しキヨミを見下ろすようなポーズで、

「アンノウンは倒した相手を、こうボゥーと見下ろしてただ立ってるだけなんだって」


キヨミは、ロアを手で押しのけながら

「やめろ、きもいから真似すんな」


押しのけてきたキヨミの手が、ロアの巨乳に当たって

「いやん」となりつつも

「暫くしたらアンノウンがテレポートアイテムで姿を消すらしい」

「その辺りからインターフェースの操作が回復するみたい」

と、真面目に答えるロア。



眉をひそめて無言のヒカリ。



ハユハがソファーにもたれて一息つくと、

「何だか不気味ですね、、、」

ロアは頷く

「インターフェースが操作不能になるのがね」

「ハッキングの可能性があるので、かなりややこしいツールの使い手かも」



続けてロアは語る。

「本来、クラスを変えて習得したスキルや能力はパッシブ扱いで、メインクラスに付加出来るけど、、」

「効果の最大幅は、メインクラスのLv半分しか効果出ないでしょ」


脇村が、ロアの話の流れが変わった事に訝しむ

「はい、、そうですね」

「例えばLv90の戦士ならパッシブはLv45が上限ですね」


脇村の答えに頷いてロアは、一同を見渡し

「アンノウンは、侍も魔導師もLv90代のスキルや魔法を使用したらしい」

「つまりアンノウンは、クラスハイブリッドのチートキャラって事だね」



キヨミが嬉しそうにほくそ笑むと

「へぇ、、、面白いね」


社長が訝しげに

「運営は? 水春氏辺りは何と?」


ロアはトボけた様子で

「公式サーバーで悪さするなら公式で対策するって」

「でも、現状の被害は非公式サーバーだからね」

「有志諸氏で解決するのもMMOの醍醐味だって言われたよ」


苦笑しながらハユハは、

「やれやれです」

「水春氏らしい答えですね」



そしてテーブルに、バンっと両手をついてロアが

「とにかく、ややこしい相手だからナインピラーでも単独で相手しないようにね!」

「それにアンノウンの情報が何か入ったら、私に連絡を!!」



一同は、生返事で

「は〜い」


そう言えば、と思い出したように呟くハユハ。

「チーターや不正ツール、ネットマフィアとか詳しい人いますよね」

「ナインピラーに一人、、、」



興味なさそうに社長が

「ノヴァ、、カイエンか、、」



キヨミは、さもうっとしいとばかりに

「あの人、要求するくせに、こちらの要求や質問にはスルーな人だからな」

「連絡先も知らんし」


ロアも残念そうにキヨミを見て

「私もこの件で連絡したけど相手にされなかった、、、」


見かねて脇村がヒカリを見て

「ヒカリさん、カイエン氏の連絡先知ってます?」



ヒカリは、少し逡巡すると

「えっ、、あ、、うん、一応」


それを聞いたロアの顔が、パァっと明るくなって

「じゃあ直接電話して何か情報聞き出して!」



ヒカリは、溜息をついて手に持っていたグラスをカウンターに置き

「やれやれ、、電話に出なかったら後は無しだからね、、、」


嬉しそうに飛び跳ねるロア。

「やった!」



カウンターに置いていたスマホを手に取ると、ササッと操作してヒカリは耳元にスマホを当てる。


この麗人は、何をやっても美しく様になるなぁと内心で呟く弥生。



ヒカリは、そのままBARカウンターから歩き出すと、少し一同から離れる。

「もしもし、、、」


どうやらカイエン氏が電話にでたようだ。

一同が見守る中、会話の内容はわからないが上手く話しが続いているようだ。

しかし、黒瀬ヒカリの表情は少し困っているようだった。



暫くして電話を終えたのか、耳元からスマホを離すヒカリ。



一同の元まで、ヒカリが戻ってくると

「直接会って持っている情報を話すと言われた、、、」

びっくりする一同と、喜ぶロア。



そしてヒカリは深い溜息をついた後、嫌そうに

「条件はディナーでオフ会に付き合う事らしい、、、」


「うわぁ~」と引く女性陣。

対照的に笑い出す男性陣。



脇村は不思議そうに眉をひそめてヒカリを見ると

「ディナーって、あの人、ヒカリさんの事嫌ってるとばかり思っていましたが」

ハユハがニヤニヤといやらしい表情で

「ヒカリさんは超美人さんですからね!」

「カイエン氏も男ってことでしょう!!」


社長は、大笑いして悶えたあと少し落ち着いて

「この際、ひかり嬢にはひと肌脱いでもらうとしよう」

「ぷぷぷっ」


ヒカリは頭を抱えて、諦めたようにBARカウンターにもたれる。

「日程は追って連絡します、、、だって」

キヨミが怒った様子で

「あいつ、アドバンテージ取ったつもりかよ!」

ロアは苦笑しつつ、ヒカリを慰める様に

「が、がんばって、、、、」



その後、終始元気がなかったヒカリ。


一方、水樹弥生は、自分が場違いだなぁと思いつつも、AOの頂点プレイヤーと楽しい時間を過ごせた事にご満悦であった。



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