黒瀬ヒカリと相川結
妹の性癖がバレてしまったかのような展開です
現実的に黒瀬ヒカリになってしまったコウは、半ば強引に結に連れられて外出する事となる。
近くのショッピングモールへ要りような物を揃えに向かう。
表向きの理由はそれだ。
しかし、結にとっての”裏”の目的は違う。
綺麗で可愛い兄を、否、姉を連れまわして、その本人の反応と周りの反応を楽しみたいだけなのだ。
なんともエゴな目的である。
今は、移動中の電車の中だ。
ヒカリと結は、空いた席に座らずに扉の傍に立っていた。
理由は、座ると折角の綺麗な服の裾がシワになってしまうから。
そして結にとっての”裏”目的の為、少しでも目立つ場所にヒカリを立たせた訳だ。
出来るだけ第三者に、ヒカリの全身が見える様に、、。
その為か、ヒカリはソワソワしている。
結がこっそりとヒカリの耳元へ話しかける
「どう?」
ヒカリは少し困った表情で呟くように
「何だか下半身がスゥスゥするよ、、、」
結は、そんなヒカリの様子にゾクっとした。
色白で白銀の髪の美少女が困惑している様子に、結は”萌え”たのだ。
でもこんな事くらいで困惑され続けられたら先が思いやられるので、結は優しくさするようにヒカリの背に触れると
「すぐに慣れるから、、ねっ」
「私もお姉ちゃんから離れないから心配しないで」
優しくヒカリの背に触れたつもりなのだが、少し驚いたように小さな悲鳴をあげる。
そしてヒカリは不安そうに結を見つめると呟いた
「周りがチラチラこっちを見てる気がするんだけど、、、」
「女装バレてるんじゃないの?」
結は溜息をつくと、再びヒカリの耳元で囁く
「違うよ、、、よ~~く耳を澄ませて聴いてごらん」
結にそう促され、ヒカリは訝し気に耳を澄ませる。
「凄い美少女2人組がいるよ、、」
「何あれ、めっちゃ綺麗な子!」
「銀髪?の娘も凄い美人だけど、隣の金髪の娘も可愛い!!」
「金髪の娘は、読モの結ちゃんじゃない?!」
「銀髪の超美人さん、、、ハーフかな?」
「背が高くて美形だし、モデルぽいよね?」
誰も、ヒカリの事を男など思ってもいないようである。
更には、ヒカリの予想を斜め上に行くほどの好評価である。
ヒカリを視界に捉えた乗客達は皆、ヒカリに見入って惚けている様子だった。
結は澄ました顔で周りに聞こえないように呟く
「皆、ヒカリさんが超美人過ぎて驚いてるのよ」
「まさかこんな美人が女装した男だなんて、誰も絶対想像もつかないわよ」
ヒカリはまだ自信がなさそうに
「そうかな、、大丈夫なのかな?」
煮詰まらない様子のヒカリにイライラした結は、少し怒った表情で胸を突き付けた。
まるで昭和のヤンキーがガンを飛ばす様な仕草である、、。
結の胸がヒカリの二の腕に当たって、柔らかい感触がヒカリに伝わる。
ヒカリは慌てて顔を赤くすると、ブツブツと呟くように
「近い、近い、近いよ~、、、」
ヒカリのそんな様子をよそに結は
「自信を持って!」
「現役読者モデルの私が言ってるんだから!」
溜息をついてからヒカリは、結の肩を持ってその身を離れさせると
「そうだね、、、何だか少し自信がでてきたよ」
「そういえば、結って読者モデルで割と有名人なんだよね」
小首を傾げて結は
「今更なに?」
「自分の知らない他人に、自分の事を知られて注目されるの、、、」
「嫌って思った事ない?」
と、ヒカリは結におずおずと問いかける。
結は不思議そうな表情で
「別に全世界の人間が私の事を注目している訳でもないし」
「自分が好きでやってる事で注目されるなら私は嬉しいよ」
そう自身満々に答える結を見てヒカリは、
「、、、、そっか、、、、」
と、考え込んでしまう。
そんなヒカリの様子を見て結は内心で
『困惑している本人には申し訳ないけど、、、』
結は自分の胸元を抑えて、顔を赤らめると
『女装してるお兄ちゃんのこんな表情、、、』
『色気有りすぎるわ!!』
そして我慢出来なくなったのか結は
「あうぅ!!」
と奇声をあげてヒカリに抱き着く。
思案に耽っていたヒカリは、突然の事に慌てて
「何事??!!」
そんな美少女2人の、キャッキャウフフを周りの乗客たちが、目の保養とばかりに眺めるのであった。
一年前の今頃を思い出していた結は、
「あの時のお兄ちゃんは、終始挙動不審だったよね」
そしてニヤリとして結はコウを見やると
「でも帰宅する頃には随分様になってたから」
「全部私のおかげよね!」
それを聞いたコウは、少し不満そうではあるが納得した様子で
「そ、そうだな、、、ありがとう、、、、」
「うん?」と、何か違和感を感じた結。
結は考え込むように、
『あれ?!』
『ここはいつもなら私が、キュンっとなる所のはず、、、』
ハっと何かに気付いた結
『あっ、そうか!!』
女装していないコウを見つつ結は内心で呟く
『女装してないお兄ちゃんには、キュンってならないんだ、、、』
そんな結を不思議そうに見つめるコウ。
そしてガックリと膝をついた結は
『大人気読者モデルで、女子高生のカリスマとまで言われた私の感性が、、』
『いつの間にか変態化されていたとは、、、』
心配したコウが
「ど、どうした? 大丈夫か?」
結は突然立ち上がって、キレながら
「いつまでそんな恰好してるのよ!」
「早く女装しろ!!」
コウはそんな結の剣幕にビビりながら
「は、はひぃ、、、ごめんなさい!」
そして我に返ったコウが、
「、、何で俺が怒られるの?」
「て言うか、俺、黒瀬ヒカリで用事とかないんですけど、、、」
結は、真顔で
「え~~と、私が楽しいし、私の目の保養になるから?」
コウは諦めたように
「さいでっか、、、、」