相川煌と黒瀬ヒカリ(4)
外出の準備を整えた結が、自宅の2階から軽快な足取りで降りてくる。
結の姿は、膝丈より少し裾が上にあるワインレッド色のショートワンピースを身に纏っていた。
その上から黒の極薄でシースルーぽい超ロングのカーデガンを羽織っている。
ワインレッドと黒の取り合わせが非常に良くあっていて、15歳の少女にしてはかなり大人びて見えた。
手に持つのは、服に合わせたのか赤色で小さめのショルダーポーチだ。
続けてヒカリが階段を降りてくる。
その身に纏うは、真っ白な肌にとても合う黒のワンピース。
それは、レースを基調にして少しだけゴシック調をテイストをしたもので、普通の人間が着るとある意味派手すぎてとても似合わないだろう。
しかし非常に整った美しい容姿のヒカリが着ると、まるで予定調和のように馴染む。
そして細くてすらりとした脚には、白の薄手のタイツだ。
手には小振りの黒い日傘と、黒くシックで小さな鞄が持たれている。
一見すると黒ゴス?と見間違えそうだが、、そこまで甘くはなく丁度いい一般的な雰囲気に落ち着いていた。
丁度、1階の廊下にいた母親の瞳が2人に気付く。
3人が1階で鉢合わせして瞳が、
「あら、なんて綺麗な女の子なの」
「結のお友達かしら?」
結はニヤリとしつつ、
「これ、お兄ちゃんだよ」
無表情で硬直する瞳。
「、、、、、、」
少し間をおいて我に返った瞳は、
「ええええっ??!」
瞳はコウを見つめながら少し震えた様子で
「こんな趣味が有ったなんて、、、」
すぐに否定するコウ、
「いや、、趣味じゃなくて、、」
結が慌てて2人の間に割ってはいって
「待って、、これには訳があってね、、」
結は分かりやすく掻い摘んで、母親の瞳に事の顛末を説明した。
瞳は腕を組んで考え込むように
「なるほどね、、、、」
そして一変して嬉しそうな表情で
「でも、こんな可愛いくて綺麗な娘が2人も出来て」
「お母さん嬉しいわ!!」
結と瞳が、ニコニコしてお互いの手を合わせる。
そしてドヤ顔で結が
「でしょっ!」
傍にいたコウは、少し引き気味で嫌な汗をかいていた。
突然、居間から廊下に顔だけだした父親の孝雄が
「お父さんも嬉しいぞ!!」
そのまま孝雄は、
「そうだ今夜は一緒に風呂入ろう!」
コウはキレ気味でツッコムように
「今まで一緒に風呂なんて一切言ったこと無いくせに!!」
「この変態オヤジが!」
そしてコウは、自分を落ち着かせるように息を吐くと
「ところで母さん、、」
「訳が有るからと言って、自分の息子が女装なんかして怒らないのか?」
キョトンとした表情の瞳。
考えるような仕草で瞳は
「う~~ん」
「コウは頭も良いし、善悪の分別もちゃんと理解してる」
「それに親の言う事もよく聴くし」
「正直、うちら親にしてみればもったいない息子だよ」
瞳は真剣な表情でコウの前に立つと
「人様に迷惑かける訳ではないのでしょう?」
コウは素直に「うん、、、」と頷く。
優しくコウに微笑んだ瞳は
「なら好きにすればいいのよ」
「ねぇ、お父さん」
すると「おう」と、居間から孝雄の声だけがした。
少し感動した様子のコウ。
「母さん、、、父さん、、、」
そんなコウを見ながらニヤニヤした顔つきで瞳は、
「でさぁ、お父さんとが嫌なら、私とお風呂一緒に入ろうか!」
コウは貞操を守るような仕草で
「なんでやねん!!」
そんな親子二人のやり取りを、傍でドン引きして眺めている結であった。