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終熄への疑惑と真実への鍵

ヒカリは藤先生に支えられて、マンション最上階にある自分の部屋に到着する。


社長は送迎役なので、藤先生が戻るまで車で留守番だ。



玄関に入ると音に気付いたのか、結が慌てた様子で廊下に出てきた。


ヒカリが藤先生に支えられているのを見て結は顔色を変えた。

怪我をしたか体調を壊したか、どちらにしろ何かあったと結は勘付いたからだ。



そして結は藤先生に頭を下げると、

「一応ヒカリさんの身内で結と言います」

「お手数かけたようで、すみません」



藤先生は結に笑顔を向けた。

「あらあら、お行儀のいいお嬢さんだこと」

「私は藤妙子です」

「黒瀬さんとは合気の師弟関係になるかしらねぇ」



「合気、、ですか、、」

「ところで、、社長さんは?」

おずおずと訊ねる結。



藤先生はヒカリを結に預けると、

「彼は私の送迎役だから、下で待ってるのよ」

「だからもうお暇するわね」



玄関から外に出つつ藤先生は、

「それと黒瀬さん、左の肋骨にひびが入ってる可能性があるの」

「右向きに寝かせてあげてね」

「鎮痛剤は飲ませたけど、きっとかなり痛いはずだから」



結は抱きつく様にヒカリを抱えたまま、

「え、、あ、はい」

「ありがとうございました」



藤先生は静かに玄関の扉を閉めて姿を消した。



ヒカリは痛いのか瞳を閉じたまま動かない。


結は心配そうにヒカリへ声かけた。

「お兄ちゃん、、大丈夫?」

「歩ける?」


ヒカリは小さく頷く。



『ほんと、女の子みたいに華奢なんだから、、』

とぼやくように呟き、結はヒカリを支えながらリビングへ向かった。



一旦、結はヒカリをソファーに寝かせた。

そしてヒカリにタオルケットを掛けてあげる。



「ごめんね、、結」

「心配かけちゃって、、」

と力なくヒカリは呟く。



結はヒカリの傍の床に座り込む。

「ううん、、」

「取り敢えず無事に帰って来たって事は、弥生さんは助け出せたんでしょ?」



ヒカリは目を閉じたまま頷く。



そして直ぐに静かな寝息を立て始めたヒカリ。


安心した結も気疲れしたのか、深い溜息をついて瞳を閉じた。







カーテンの隙間から室内に日光が差し込んでいる。


朝か、いや帰宅した時刻が明け方だったから、もう昼かもしれない。


そんな事を朧げに思いながらヒカリはソファーから身を起こした。



左の脇腹に痛みが走る。

鎮痛剤のお陰か随分ましだが、これはうっかりクシャミも出来そうにない。



スマホで時間を確認すると丁度昼12時だった。



まだ虚ろな頭を抱えながらヒカリは思う。

弥生を誘拐した事件は取り敢えずは収まった。


だが何か違和感をヒカリの心に残したのだ。

まだ何も終わっていないと言わんばかりに。



それは第六感と言うのか、いわゆる"勘"なのだが、、。

しかしヒカリはその"勘"を意外にも重要視していた。



違和感や勘という物は、人が蓄積された経験から無意識に感じとり、脳が潜在下で出したサインだと考えているからだ。


故に理論的に表現出来ずに、"感じる"のだ。



これはAOでのPvPで、危険や罠をいち早く察知する感覚(センサー)として大いに役に立っている。


ヒカリにとっては当たり前の感覚であり、他人からすればまさに脅威の第六感となっていた。



そしてその勘から来る違和感は、確信に変わりつつあった。





「お兄ちゃん、眠れた?」

いつのまにかソファーの後ろに結が立っていた。



少し驚いたがヒカリは落ち着いた様子で答えた。

「うん、、」

「鎮痛剤が効いたからかな、割と眠れたよ」



結はジーッとヒカリの顔を見つめた。

「そっか、、」

「でも、何だか心配事があるような顔してるよ」



「え?!」とつい声を漏らしてしまったヒカリ。



そしてヒカリは苦笑する。

「ほんと、結は鋭いよね、、」

「隠し事は出来そうに無いよ」



結は胸を張って、

「当たり前じゃん、」

「私はお兄ちゃん大好き、超ブラコンなんだから!」

「何でもお見通しよ!」



露骨に嫌そうな顔をするヒカリ。

「そんな事、自分で自慢げに言うなんてヤバイよ〜」


鼻息荒く「うるさい!」と言い促す結。

「で、何なの?」



その時、ヒカリのスマホへ着信が入った。



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