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相川煌と黒瀬ヒカリ(3)

部屋の中央のテーブルに、所狭しと並べられている化粧品とポーチ。



口紅を持った結の手が、それをそっとテーブルに置く。

「さぁ出来上がり!」



テーブルの前に、されるがまま座らされているコウに結は手鏡を手渡す。

手鏡で自分の顔を確認をしたコウは、絶句する。

「これが俺、、、?!」



結は嬉しそうに

「そうだよ! 私が思った通り!」

「お兄ちゃんは、絶対女装が似合うと思ってたのよね」



信じられない表情で、鏡の中に映る自分の顔を見つめるコウ。

「、、、、、」



結は鼻息荒く、その手にヌーブラとブラジャーを持って

「さて、次は衣装と行きましょうか!」


そして、コウに押し迫ると

「さあ上脱いで」

コウは怯えた様子で「ひぃっ」と声をもらす。




それから10分程してコウは焦燥して、項垂れていた。

勿論、上半身は裸のままで、しかもブラジャーを装着した状態。

とても16歳の男子とは思えない細身とくびれた腰は、

肌の白さと相まって女子にしか見えない。



結は、そんなコウの後ろ姿を見つめてホゥ、とため息を洩らす。

「それにしても、、お兄ちゃん華奢だよね、、」

「後ろ姿だけでも完全に女の子だわ!」


コウは恨めしそうに結に視線だけ向けると

「ブラジャーだけならまだしも、、何故ヌーブラまで、、」



結は腰に手を当てて、コウを見下ろしながら偉そうに

「貧乳の女の子はね!」

「ブラジャーの下にヌーブラを装着して胸の谷間を作ったりするの!!」



恥ずかしそうに胸元を隠しているコウに、まるで悪さをした子供を叱る様子で

「だからこうして上手く使えば、男子でも胸の谷間が出来ちゃうんだよ」



そして結は、レースをふんだんに使った黒いワンピースを持ち出すと

「ようやく次は服だね」

「さぁ着替え手伝ってあげるから、さっさとズボン脱いで!」



だんだんと迫ってくる結の影。

コウは怯えと恥ずかしさを堪えつつ、仕方なくズボンを脱ぎ出す。


ボクサーパンツ姿でブラジャーを着けているものだから、自分を客観的に見ると違和感半端ない。

と言うか、恥ずかしくて死にそうだ。



結がテキパキとワンピースを着せてくれるので、恥ずかしさで悶えてる時間など無かったのだが。

正直、着慣れない女物の服を着るのは未知の世界である。

着飾りたいと言う欲求は有ったものの、いざ実行してみると慣れるのだろうか、、と心配になる。



このワンピースは、割とタイトで裾はAラインになっており細身のコウには良く似合っていた。

高そうな服である、、。

あと、何故かサイズがピッタリである。



結が少し離れると、舐め回すようにコウを観察しだす。

そして顔を赤らめると

「凄い、、これ程とは、、、」

「入念にお兄ちゃんのサイズを測っておいた甲斐があったわ」


おいおい、、いつの間にそんな事を、、。

いや、そもそもこんな高そうなワンピースを俺のサイズで購入した結の意図が分からない。



そして不安げに自分を見回すコウへ結は、

「そんなに心配しなくても大丈夫だから」

「凄く可愛いし似合ってるよ」

「絶対に女の子にしか見えないから」



ちょっと褒められた感じがして嬉しくなったコウは、

「そ、そうかな、、、」

結も嬉しそうにして和やかな雰囲気になったが、突然爆弾を投下してきた。

「準備も出来たし、そのまま買い物でも行こうか!」

「女装時の洋服や小物、化粧品とか今後必要になるからね、揃えておこう」



コウは、慌てて

「え??! 無理無理!!」

諦めが悪いコウに苛立った結は、ふんぞり返って胸で体当たりしてきた。

結の形の良い、そしてよく成長した女性らしい胸が、コウの偽物の胸に衝突する。

コウは半ば泣きながら、「はぐぅ、」と声をもらす。

「ここまで来たら観念しなさい!!」

と胸を突き付けたまま結がコウにガンを飛ばす。



そして何か思いついた様子で結は

「あ、そうだ、、」

「女装時の呼び方、注意しないとね!」


結はコウから身を翻すと

「アヴァロンオンラインでのハンドルネーム、そのまま使おうか」

コウは流されるまま、特に意見も無いので

「う、うん、、、」



人差し指を口元に置いて結は思案する仕草で

「ところで何で黒瀬ヒカリってハンドルネームにしたの?」


コウはまだ全然慣れない今の恰好にモジモジしながら

「黒瀬は母さんの旧姓でしょ」

「ヒカリは(コウ)の読み方を変えただけだよ」



結はにっこりしながら

「単純だけど、何だかよい名前だねぇ」

「気に入ったわ!」



さらに小悪魔的な表情を浮かべた結は、続けて

「フフフ、、じゃぁヒカリお姉ちゃん、お買い物行こうか!!」



そして紙袋の中に用意していた白銀のロングウィッグを取り出すと

「あっと、その前にこのウィッグ被ってね!」

「地毛が伸びるまで、これ使ってていいから」



コウは、、いや、黒瀬ヒカリは、シクシクと泣きながら諦めた様子で

「女装前提で髪の毛を伸ばすの確定なのね、、、」



諦めた黒瀬ヒカリだが、、結の暴走はまだ始まったばかりであった。



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