恐怖と焦りの戦慄
「うん…そうだよね」消え入りそうな声で答える遥加にこれ以上言葉がかけられなかった。
ここに居てはいけない今まで感じたことのないような不安が腹の底から込み上げてくる。
ギシッ…ミシッ…ミシッ…バヂッ…ギシッギシッ…
音はどんどん鮮明に聞こえてくる。
ここから急いで離れなければ、ただの工事現場。ただの道。至っていつも通りの道そのはずなのにたまたま遠回りをして帰っているだけそれがなぜここまで不安になるのか自分でも分からない。
ミシッ…ギシッ…
少し視線を左に傾けると小刻みに震える細い肩が見える次第に震えは大きくなっている気がした。
パキッ…ギシッギシッミシッ…
汗をかくにはまだ早い季節なのに額に大粒の汗が溜まっている。頬をつたい流れる汗
次第に不安と焦りが俺の心を支配して足が止まってしまった。
「だ大丈夫だって!こんなに外は明るいしすぐそこは商店街だ!人だっていっぱいいる!ほら声だって聞こ…る?」おかしい。
すぐそこの角を曲がれば商店街だ人の声が全く聞こえない聞こえてくるのは不吉な何かが軋む音。
励まそうとすればするほど否定すればするほどこの場の異質な雰囲気が明確になっていく。
ギシッギシッギシッ…
「小夜…ここなんかいつもと違うよ…」振り絞るような細い声で恐怖と不安を訴えてくる俺はその言葉に声を発せなかった。
ギシッ………音が止まった。
そのすぐ後爆風とともに辺り一面が真っ白に光った
ゴォォォォ!!!
ドォーン!!!
工事中のビルが崩れ落ちたいや吹き飛んだ
「っな!はる!!」すぐに遥加の肩を抱きその場に伏せた。
「小夜…小夜」泣きながら俺にすがりつく遥加
一体何が起きてるんだ土煙があがり
遠くから聞き覚えのある声が小さくはっきりと俺の耳に入ってきた。
「だから先に帰れって言ったろ…」
「陸…?」
ドゴォン!!!
2回目の轟音
聞いたこともない轟音が鼓膜を揺らす。
「―――消えろっ!」バンッバンッ!!
陸らしき声と銃声の様な音が響く
「そんなザコカードで俺に勝てると思ってんのかぁ!!」聞き覚えのない嫌悪感と恐怖を掻き立てるようなこもった声
何が起きているのかさっぱりわからない
震え泣く遥加を抱き抱えるのがやっとでその場から動けない。
「クソがぁ!!死ね死ね死ね死ねぇ!!」声は次第に近くなる。
「ぐちゃぐちゃにしてやるよぉ!召喚!!」再び爆風が起き辺りが白く光った。
ゴゴゴゴゴ!!土煙が晴れそこに2つの人影と見た事のないデカい化け物の姿が見えた
「なっ…」言葉が声がでない
「小夜!遥加を連れて早くここから離れろ!」やはり陸だった。
「お前…何して…こっこれは?なんなんだよ!!」声を振り絞って陸に問いかける。
「お前には関係ない。死にたくないなら早くここから離れ―」陸がこちらを振り向き声をかけていた瞬間
ギシャャャャャ!!!!
化け物が陸に向かい腕を薙ぎ払った
「ぐっ!!」ドゴォン!!スーパーボールの様に陸の体が跳ね上がり地面をバウンドし高い塀に激突し塀が崩れた。
「陸ーー!!!!」叫んだと同時に俺は遥加を柱の影に隠した。
「小夜…待って…」か細い声を発しながら強い瞳でこちらを見つめ遥加は立ち上がった。
「お前はここから離れろ!」突き放す様に脅すように遥加に言い放った
ガラッガラガラッ…
瓦礫から血まみれの陸が立ち上がった。
「くっ…小夜…これを持ってここから離れてくれ頼む…」ボロボロの手から薄い青色をした板を差し出した。
「なんだよ…これ…」受け取り言葉をかけたが陸はこちらを見ていない。
ここで問い詰めることもできたがしなかった陸をさらに追い詰めてしまうと理解したからだ。
「小夜…行こう」強い瞳をしたまま遥加は俺の手を引っ張り走り出した。
「なんだよなんだよやっぱり持ってんじゃねぇかよクソガキがぁ!!殺してやるよぉお前のお友達も一緒になぁ!!」殺意と怒りのこもった声を発した長髪のやせ細った小汚い男が化け物に命令をする。
「そこのガキ3匹全員殺せぇ!!!」
ギシャャャャ!!!!
化け物の叫び声が辺りに響いた