運命の選択
ドゴォ!!
今までに聞いたことのない恐ろしいほど耳に残る音
この世界すら壊れたのではと錯覚するような轟音
壊れたのは俺の日常だった…
この4月から俺は高校生になった今までと違う新しい生活に胸を躍らせ期待に鼻を膨らませ、この3年間の青春を謳歌する!そんな気持ちが約1ヶ月前までで今は何のこともない。
ある程度学校に慣れ自分の立ち位置を理解したからだ。
「起きてるなら早くご飯食べて学校に行きなさい!」
やかましい声が部屋でダラダラ着替える俺の耳に届いた。
「分かってるってすぐ降りるから」気だるそうに声を発してバタバタと一階のリビングに降りる。
「おはよう。ちゃっちゃと食べちゃって!」
「はいよーいただきまー」ダラダラと綺麗に焼き目のついたトーストにかじりつき、3口ほどで平らげてお茶を飲み干し一息つく
「小夜あんたも高校生になったんだからもっとシャキッとしなさい!だらしない!陸君を見習いなさい!毎日迎えに来てもらって悪いでしょ!」毎度の事ながら幼馴染をたてて息子を貶す母に苛立ちも何も感じないくらい平凡な朝のやりとりだ
「別にいいんだよ!俺は俺!陸は陸!みんな違ってみんな良いんだよ」そんなやり取りをしていたら高らかにチャイムの音が響いた(ピンポーン)
「ほら!陸君来たわよ!早く行きなさい!」
「はいはいー行ってきますよー」相変わらずフワフワとした答えで母をかわし玄関に向かう
ガチャ
「おぅ小夜早く行こう遥加が待ってる」こいつが俺の小学校からの幼馴染で大親友隣の家に住んでいて俺と違ってしっかり者のイケメン更にはクラスの人気者でもある黒川陸
すらっと身長も高くサラサラの黒髪は耳にかかるほどの長さで実に爽やかだ
目は切れ長のキリッとした目でこれまたクールな印象だか優しさも感じるさらには頭も良いしスポーツも万能だ
別に俺はひがんでいないむしろ誇らしいほどだ
そんな俺の名前は星崎小夜これといった特徴は無くどこにでもいるような高校生だろう
身長も低くも高くもない童顔のフワフワ天パだ
「おぅ悪い悪い今日も一日頑張って学生を満喫しますかー」と気の抜けた返事をし家を出る
しばらく歩くと一本の高い木が特徴的な公園が目に入る
公園の入り口でカバンをゆらゆらさせながら待つ1人の女の子が立っている
「小夜、陸おっそいよー!」こちらに気づきとびっきりの笑顔で手を振る可愛らしい女の子
この子が俺のもう1人の幼馴染で大親友小岩井遥加だ
身長は俺より頭一つほど小さく触れば折れるんじゃないかという程華奢で白い肌だが病弱などでは無く笑顔を相まってとても健康的な印象を受ける
サラサラの黒髪は肩につくほどの長さで目はぱっちりテレビに出ているアイドルにも劣らないほど可愛い
「ごめんごめんお待たせ小夜がいつも通り家から出てこなかったからさ」こちらを見つつ爽やかな微笑を浮かべ陸が答えた
「もぉーまたかーいつになったら小夜の寝坊助は治るんだろうね」いたずらっぽくこちらを見て微笑を浮かべる遥加
「俺の寝坊助はちっさい頃からだから仕方ないんだってほらさっさと行こうぜ」2人に悪びれることもなくいつも通りに答える俺
やれやれと言葉にも出さずニコッと微笑む2人と学校に向けて歩き始めた。
学校に着き下駄箱で靴を履き替え教室に向かう
ガラガラ
ありきたりな引き戸を開けるとガヤガヤと賑やかな話し声が聞こえる
おはようと数人のクラスメイトに挨拶を交わし自分の席に座っていると先生が入ってきた
今日も一日頑張るかと自分に言い聞かせ顔を上げる
キーンコーンカーンコーン
昼休み前最後の授業は体育だ
俺は陸と喋りながら着替える
するとある違和感に気づき陸に問いかける
「陸その腕どうした?」陸の腕に包帯が巻かれている
うっすら血が滲んでいてかなりの重症だと思わせる
「あーこれか昨日部屋の掃除しててさ棚が倒れてきたんだよまぁ大したことないし平気平気」転んで擦りむいたくらいのテンションで話す陸に俺は少し不安を感じたが心の内にそっとしまい込んだ
「陸でもそんなドジやらかすんだなー結構痛そうだし無理すんなよ」軽く心配する程度で済まし陸はニコッと微笑みうなづいた
キーンコーンカーンコーン
昼休みが始まり俺は遥加に陸の腕のことを話していた
「陸が腕めっちゃ怪我してたんだよ。けどあいつ平気そうにしてたから、それ以上何も聞かなかったんだけどさ…はるはなんか知ってるか?」
「えっ!?陸怪我してるの?全然知らなかったよ!そんなにひどい怪我なの?私陸に聞いてみるよ!」眉をひそめて心配そうな顔で陸のところに向かう
「陸ー!怪我大丈夫なの?すごいひどいって小夜が言ってたけど」心配そうな顔で陸に問いかける遥加
「あーこれ?全然平気だって昨日部屋の掃除してて棚が倒れてきただけだしさ」ニコッと微笑み遥加に答える俺はどこか違和感を感じるが答えが出ないまま放課後になった。
「遥加、小夜俺少し図書室に行ってから帰るから先に帰っててくれ」普段は待つのだが今日はなぜか待つ気になれずに黙ってうなづいて帰路につくことにした。
門を出た俺と遥加は少し遠回りしながら帰る事にした。
見慣れた景色見慣れた風景のはずなのに今日は何故か不安を掻き立てられる。
でも俺はまっすぐに帰る気にはなれずトロトロと遥加と2人歩いていく。
高い塀と工事中のビルその側の道を2人会話もなく歩いていると…
何かの軋む音ギシッ…ミシッ…ギシッ…ギシッ…
不安と焦りが掻き立てられる
「なんの音かな…?」不安そうな顔でか細い声で俺に問う遥加の肩が震えている。
「工事してるし足場が風で揺れてるんだろ?けっこう高いしさ…風だって」無理やり笑いかけるがその顔は引きつっているだろう