20 その装備、勝負になりますか
週末、遠方で送別会がありました。
平日は遅くまで残業していました。
言い訳ですね。
今日は飲み会をギリギリ回避でした。
近日飲み会がまたあります。
係員に誘導されてコロシアムに登場した二つのパーティー。
勇者ランブルチームの3人と、勇者ダーリチームの2人。
観客から歓声が沸き上がる。
「おいおい、本当にあれで戦うつもりか」
「勇者たち、ドラゴンとでも戦うつもりか」
「あの親子無謀だろ」
「失敗した。やっぱり逆に賭けておくんだった」
「普通に賭けておいて助かった」
観客から、驚きと失望と安堵の声が上がる。
勇者ランブルパーティーは、全身フルメタルの重装備。
兜だけは脱いで、小脇に抱えている。
防御力の高そうな鎧が、日の光を反射して、勇者ランブルパーティーを際立たせている。
その鎧には、防御力強化や魔法無効の類の効果が掛かってあるだろう。
対する勇者ダーリパーティーは、皮鎧すら装着していない、普通の格好だ。
これから採取クエストに向かうんじゃないかと思うくらいの動きやすさ全開の装備だ。
武器についても、魔剣と思われるランブルとヴィクターの剣。
フィッターは、両手にガントレットを装着しているが、明らかに何かの魔法装備だ。
攻撃力強化だけでなく、軽量化の魔法が掛かっていると思われる。
ダーリは、冒険者ギルドで使っている訓練用の剣と、一人で振り回すには少し大きな戦鎚。
「そんな軽装で、負ける言い訳をしているくらいなら、土下座でもすれば許してやらんでもない」
フィッターが声を掛ける。
「負ける言い訳?そうかもな。あんたらのように、負けるために重装備するよりはましだと思うぞ」
ダーリが返す。
「謝るなら、もう今しかないぞ。始まってからじゃ遅い。その子、慰み者になるぞ」
ランブルが最後通牒をする。
「そんなことはない。俺は可愛がってやるぞ。ハハハ」
ヴィクターがいやらしい笑みを浮かべながら、嬉しそうに笑う。
「パパ、こいつキモいでしゅ」
「そうだな。話しているだけで虫唾が走る。もういいから早く始めてくれ」
ダーリがスターターに声を掛ける。
戦闘不能か降伏しか勝敗が付かないことから、審判はいない。
「最後のお願いの時間はくれてやったが、穏便に済ませる気はないようだな。こっちとしては有り難いがな」
ランブルが、残念そうに、そして嬉しそうに話す。
「ついでに最後の言葉だ。俺は、分を弁えた奴、反省することができる奴、俺の言葉を素直に聞く奴が好きだ。お前はどれも当てはまらない。負けたことに気が付いてから、自分の愚かさを反省するがよい」
「両チームとも宜しいですか。お互いに会場の端にあるセーフティースペースに移動して下さい。銅鑼を鳴らしたら開始となります」
両チームともセーフティースペースに向かう。
お互いが遠くで向かい合ったのを確認したスターターは合図をする。
「神の名の下に公平に、王の名の下に正々と、勇者の名を継ぐ者として『デュエル オブ ブレイブ』開始する」
『バーン!』
スターターが銅鑼を鳴らした。
コロシアムの中央に向かって、ダーリと聖騎士フィッターがゆっくりと進む。
何も約束はしていなかったが、自然と二人が決闘するように真ん中で構える。
フィッターにすれば、レストランでの不意打ちのお返しをしなければならず、ダーリにすれば、マイハに勝負させるわけにはいかないという事情があった。
身長180センチを超えるフィッターと対する身長172センチのダーリ。
鎧を着込み更に大きく見えるフィッターに対してダーリは何とも弱弱しく見える。
「後悔しろよ」
フィッターはそう言って、左手をまっすぐ伸ばし、右手を頬骨に置き、左足を前、右足を一足後ろにベタ足で構えた。
「地球ならストリートファイトのレベルだな」
ダーリは小さく独り言をつぶやく。
ダーリは薄い手袋をはめ、手を軽く広げた状態で、やや左前半身で構える。
フィッターの重い感じの構えとは対照的に軽い構えだ。
「舐められたものだ。お前が武器を使わなくても俺は手を抜くつもりはない」
フィッターはそう言って、素早い動きでダーリに突っ込んできた。
右手のガントレットをダーリに向けて放つ。
右手のガントレットから炎が1メートルほど飛ぶ。
ダーリは左後方に体を捌きながら、フィッターの攻撃をギリギリで避け、フィッターの右脇腹に右掌底を叩きつける。
「馬鹿だな。あの鎧の上から素手で攻撃しても効く訳ないだろ」
「フィッターの攻撃をいつまで躱せるかだな」
「1分持たないだろう」
ランブルとヴィクターが高みの見物をしながら二人の決闘を批評した。
この時点では、会場のほとんどの人間が、ランブル達の勝利を決まったものだと信じていた。
長くなりそうだったので分割しました。
前書き、後書きも慣れません。
スマートに書いてみたいものです。




