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14 その合コン、展開が早すぎる

 ダンゴーは、勇者パーティー×受付嬢混成チームに背中を向けて、食事をしていた。

 食事といっても、味わって食べているわけではない。

 娘のことが気になって仕方ないので、偵察に来ているのだ。

 娘を早く結婚させたい気持ちはあるが、相手の男が誰でもいいという訳ではない。

 ラムは、客である冒険者のあしらいは上手だと思うが、それ以外で男と話す機会がないことをダンゴーは気にしている。


 (変な男に騙されなければいいが。)

 (特に、あのバツイチ勇者には。)


 今日の合コン相手は、落ち着きはないものの、年齢が若いため仕方がないと思って我慢している。

 まあ、年を取れば自然と落ち着いてくるのではないかと思っている。

 ラムに監視しているのがばれたら、1週間は口をきいてもらえないだろう。



 さっきまで、やたらハイテンションだった勇者パーティー×受付嬢混成チームの声が、小さくなった。

 ダンゴーは、『そろそろお開きか』と思ったが、何か雰囲気が違うような気がしたので、こっそり顔を合コンチームに向けたところ、微かに違和感を感じた。


 (この匂いは?)

 ダンゴーは、娘の席に慌てて向かった。


「おいお前ら、何使った」

 女性三人をそれぞれ抱えようとしていた勇者パーティーを詰問するダンゴー。


「なんだよおっさん、こっちは酔っ払いの介護で忙しいからあっち行け」

「邪魔すんなよおっさん」

 聖騎士二人がダンゴーを追い払おうとする。

 聖騎士ヴィクターに抱えられそうになっていたラムは、何かしゃべろうとしていたが、言葉が出ない。


「俺が聞いているんだ。お前ら、マジシャンキラーを使っただろう」

 ダンゴーが声を張り上げる。


「おっさん、言いがかりつけるなよ。俺たちは、友達が酔ったから、介抱しているだけだっていうの。人の恋路を邪魔するな」

「関係のない、おっさんは帰れ。この娘達は俺たちの彼女だっていうの」

「俺はその子の父親だ!」

 そう言って、ダンゴーは、ラムを抱えようとしていたヴィクターに殴り掛かった。

 ヴィクターは、軽く後ろに下がって避けようとしたが、後ろにフィッターがいたため、ダンゴーのパンチを避け切れなかった。

 ゴン!

 ヴィクターの顔にダンゴーの拳がヒットした。

 鼻血が流れるヴィクター。


「ふざけんな!」

 ヴィクターが大ぶりのパンチをダンゴーに見舞う。

 大ぶりのパンチにしては、早いパンチだったが、大ぶりした分だけダンゴーに軌道を読まれ、ダンゴーに両腕をクロスしてガードされた。

 もっとも威力は大ぶり×スキルの分だけ大きく、ダンゴーは後ろのテーブルまで吹っ飛ばされてしまった。


「ヴィクター、熱くなって殴るからガードされるんだ。うちらに歯向かう奴はきっちり仕留めておかないといつまでも舐められるぞ」

 フィッターは、尻もちをついてテーブルの足を背もたれにして座りながら勇者パーティーをにらんでいるダンゴーに近づきながら、ヴィクターに注意した。

 そしてダンゴーの前で立ち止まると、両拳を軽く握り、左足を半歩前に出した構えを取った。


「こういう素人は、一撃できれいに決めないと、俺たちまで弱いって思われるからな」

 そう言って、フィッターは蹴りを放つ構えを取った。

 ダンゴーは、ヴィクターのパンチがガード越しに効いているのか、全く立ち上がる気配はない。


「おい、周りで覗いている奴、早く助けろ」

 ダンゴーが叫ぶ。

「無駄無駄。そもそも強い奴ほど、俺たちの強さが分かるってもんだぜ。この町で、俺たちより強い奴は誰もいないさ」

 フィッターは、体を軽く沈み込ませて力を溜めると、その力を開放しながら、体重の乗った蹴りをダンゴーの側頭部に放った。


 バン!ドン!

 派手な音を立てて、フィッターが大理石の床に叩きつけられた。


 蹴りを放とうとしたフィッターをダーリが足払いで空中に飛ばして、ダブルスレッジハンマーで床に叩きつけたのだ。


「遅いぞバツイチ勇者」

 ダンゴー。

「俺はバツイチじゃない」

 ダーリ。


 ダーリは、ヴィクターと勇者ランブルに正対した。


「お前たち、介抱する相手が違うんじゃないか」

「お前、後ろから卑怯だぞ」

 鼻血を出しているヴィクターがわめく。


「お前も俺に介抱されたいのか」

「なんだと」

 熱くなったヴィクターは、大ぶりのパンチを放つが、ダーリのカウンターを顎に貰って、あっけなく倒れた。


 ダーリは、一人残された勇者ランブルに向かって言った。

「おい勇者、その娘たちを置いて、早く仲間を早く持って行け」

「お前誰だ?」

「腐った勇者に名乗る名前はない。お前もこうなりたくなかったら、仲間を連れて行け」

 威圧しながらダーリは、勇者ランブルに告げる。


「……」

 勇者ランブルは、何か言いたげではあったが、唇を強く噛んで何も言えずに動けないでいた。


「見逃すのは今だけだ。早く行け」

 ダーリが告げると、勇者ランブルは、両手にフィッターとヴィクターを抱えてレストランを出て行った。



「おいダンゴー、大丈夫か」

「それより、あのウェイターを捕まえてくれ」

「何かあるのか」

「あいつが麻痺毒を持っているはずだ」


 捕まったウェイターはあっさり口を割った。

 勇者パーティーに頼まれて、全員分のおすすめに、マジシャンキラーと言われる麻痺毒を入れたことを。

 マジシャンキラーと言われる所以は、麻痺毒の一種であるが、麻痺症状の初期で声が出せなくなるため、詠唱ができなくなることからつけられたものだ。

 全員の飲み物に入れたということは、勇者パーティーは、合コンが始まる前に、解毒剤でも飲んでいたのだろう。

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