13 その娘、ハイテンション
今日中に、もう一つ二つ投稿するかもしれません。
「あれ、あそこにいるのはラムちゃんとクリスタじゃない?」
テンションの高いグループにいる女の子に見覚えがある。
「あ~、ここだったのね。実は、クリスタって、今日はデイツ国の勇者パーティーと合コンなんですって」
ピノワールが白々しく言った。
「ビッチなんか放っといて、早く注文するでしゅ」
ピノワールの腹黒さを一蹴するマイハの食欲。
「それじゃあ、早速注文しましょうか」
切り替えの早いピノワールは慣れた感じで注文する。
俺とマイハは初めての店なので、ピノワールに一任だ。
「この間、ストーンケトルの町でスタンピードの疑いがあるということで、B級以上の冒険者が集められたましけど、その時に、あそこにいる勇者パーティーも参加していたようなんです」
「それで、ついでにこの町に寄った訳ですか」
「まあそうなんですけど、寄った理由は、ダーリさんがオークロードを討伐したことで、この町に興味を持ったようなんです」
「それじゃあ、俺が倒したことを知っているって訳ですか」
「いえいえ、そこはギルドですから保秘はきちんとしています。なんでも他にオークロードか高レベルのモンスターが居ればいいかな、っていうくらいの気持ちで来たようですわよ」
ほっとした。
面倒ごとに巻き込まれるのは好きじゃない。
少なくともしばらくの間は、この町にいる予定だ。
家を購入する予定なので、長いしばらくになりそうだが。
「それでも、あちらさんは、ちょっとうるさいですわね」
眉を顰めるピノワール。
ハイテンションのまま合コンしている勇者パーティー×受付嬢混成チーム。
「若い人達ですから、仕方ないですけど」
一応フォローはするピノワール。
ふと気が付くと、俺たち以外にも勇者パーティーを注視している男がいた。
たった一人でホテルのレストランに来て、酒も飲まずに勇者パーティーを隠れて見ていた。
よくよく見ると、なんだか見たことがあるような気がする……。
「あれはもしかして……」
「パパは黙ってご飯食べていればいいの」
マイハに怒られる。
マイハは最初から気付いていたんだろう。
-------------------------------------
ラムは、クリスタの頼みとはいえ、勇者パーティーとの合コンに参加したことを少し後悔し始めていた。
「次なに飲む?」
「今日のおすすめ、なんだろう?」
「みんなで同じもの頼んでみようか」
勇者パーティーは、チームワークが良い。
「ウェイター!、今日のおすすめはなあに?」
「サングリアです」
「じゃあそれ6つ」
「ハイ分かりました」
有無を言わせず全員分注文する勇者ランブル。
「え~、アーリンお酒強くないの~」
工場勤務のアーリンが語尾を伸ばして、形だけ抗議をする。
「大丈夫大丈夫、サングリアはアルコール弱いから。フルーツとかいっぱい入って、美容に良いから」
慣れた感じで、勇者のランブルがアーリンをなだめる。
幹事のクリスタはともかく、アーリンがテンション上げてくれているため、ラムが引いていても、取りあえずは合コンが回っている。
「弱いとか言って、アーリンにいっぱい飲ませるつもりでしょ」
「そんなことないない。でもアーリンが酔ったところ見てみたいな」
「アーリン酔ったら、おうちに帰れない」
ラムやクリスタならともかく、アーリンが酔うとか、酔いつぶれるわけがない。
アーリンは、仕事が終われば毎晩金のフクロウ亭で、先輩ドワーフと酒盛りをしているのだから。
「ここに泊って行ったらいいじゃない」
ラムははっとした。
ここはホテルのレストラン。
酔いつぶれたら、即お持ち帰りされてしまう。
「アーリン一人で泊るの?」
「寂しいなら、俺も一緒に泊ってあげるよ」
「やだ~、エッチ~!」
アーリンは、隣の聖騎士フィッターの背中をバンバン叩く。
叩かれているフィッターは嬉しそうだ。
「お待たせしました」
ウェイターがサングリアをテーブルに置いた。
「それじゃあ、みんなに会えたことを祝して、もう一回乾杯!」
「「「かんぱい!」」」
ラムは警戒しながら飲むが、アルコール度数はそれほど高くない。
ブランデーがちょっと効いているものの、まあ普通の範囲内だ。
(ちょっと警戒しすぎかな?)
ラムは警戒心をワンランク下げて、クリスタの顔をつぶさない程度には会話に参加しようと思った。




