12 その料理人、職場放棄する
「「「カンパーイ!」」」
(チンチン、チンチン!)
ホテルノースリミットの1階レストラン、『ビッグトレット』。
勇者パーティーと受付嬢混成チームの合コンが始まった。
「それじゃあ、お互いに、イントロデュース始めよっか!、まず司会の私、聖騎士やってるヴィクターです。年は21歳、趣味は食べ歩きでーす!」
「司会から始めてどうすんだよ。でもこいつ、こんなノリだけど、聖騎士中級で、レベルは45の凄い奴なんで宜しくね。みんなが可愛いから、ちょっとテンション上げ目だったようなんで。続いて私、聖騎士のフィッターです。年はヴィクターと同じ21歳。趣味は筋トレ。モットーは、『筋肉は裏切らない』です」
「おいおい、俺たちまで脳筋って思われるじゃないか。こいつ、勇者の俺が言うのもなんだけど、こいつも聖騎士中級で、レベルは42もある奴なんだ。脳筋っぽく見られるけど、賢者スキルを持ってて、ただの筋肉馬鹿じゃないから安心して。それじゃあ僕の自己紹介だけど、勇者のランブルです。年は、こいつらと同じ21歳、趣味は舞台鑑賞、楽器演奏、特技は手相占いです」
「手相占いって、なんの役に立つんやねん。でも勇者はインドア装ってるけど、実力は大したものなんで。勇者になって半年しか経っていないのに、もうレベル37になってるんだから凄い奴なんだ。この町に来たのも、先日オークロードが出たって聞いたんで、狩り残しがいれば、討伐しようと思って来たんだよ」
「すご~い!」
女子チームの数合わせ、工場勤務のアーリンが過剰に反応する。
「次は女子チームどうぞ!」
「……」
受付嬢のクリスタ、看板娘のラムは、勇者パーティーと工場勤務のアーリンのテンションに引いてしまった。
勇者パーティーは、合コン慣れしてるっていうか、お互いの連携が取れていると言うか……。
クリスタのHPが、かなり削られたことも併せて、戦闘になれば、良い連携をしそうだとクリスタは思った。
しかし、勇者の接待を進めなければならないクリスタは、何とか言葉を発した。
「じゃあ、私から。冒険者ギルドで受付嬢をしています、クリスタです。(以下略)」
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金のフクロウ亭
「お~い、親父、ラムちゃん」
「誰もいないぞ」
「なんだこれは?」
冒険者3人組が、いつもより早く、金のフクロウ亭の入り口をくぐると、店内には誰もいなかった。
『今日の料理はセルフサービスです。代金は1人前10S。料金箱に入れておいてください。酒もセルフサービスです。』
大鍋の脇に、こんな張り紙があった。
「……」
3人組は目を合わせた。
「とりあえず、代金払って、飯食うか」
「ラムちゃんいないのは残念だが、料理の味は変わらんからな」
「こんな商売できる店って多分ここだけだよな」
「「そうだよな」」




