表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半妖の陰陽師と妖兎は、平成の地でアニオタ探偵となる  作者: 夢魔
半妖と妖兎、女子高生と出逢う
5/16

04

「土御門、まさかとは思うが……。この中に入るのか?」

「そうですよ? 私が住んでるマンションですから」

「満神? そんなものを祀っているのか?」

「へ?あ、ああ……そうですよ。マンションです」


 土御門は、一瞬、首をかしげたが、腑に落ちたのか頷いた。

 満神まんしんとは、なんだ。さては、俺達を神に捧げる贄にする気か? さっきから、中へ入っていく信者も多数と見てきた。儀式の準備が行われており、たった今、準備が整ったのか?


「二人共、外でいつまでも何をやってるんですか? ドア、閉まっちゃい──あ」


 だが、イチ陰陽師が彼等の術にハマるはずが無い。異教徒は、死罪。朱雀天皇に献上すれば、今回の失態すら水に流せるやもしれん。

 あーダメだ。笑が零れまくりまする。


「ぐへへへ、へぐしンッ!!」

「ふぎゃ!! キュゥ……ッ」

「な、なんだ!? 今、壁に当たった感覚が」


 だが、目の前に壁はない。土御門も眼前に捉えている。まさか、障壁の類か!? だが、俺も、顔面を強打し蹲る朧兎も見抜けぬはずが無い。


「ええい!! 俺を見くびるな! こんな障壁などに挫けぬわ!! ルト、構えろ」

「か、かしこまり申した!!」


 人差し指と中指を立てて、顔の目の前で十字を作る。障壁を裂くには、十字の形が効率が良い。咆哮に合わせて、霊力を込める為、三角形が無難なのだがあれだとくり抜く程度。故に、ルトは三角形で穴を開け重ねて俺が十字で裂くのだ。

 式服が踊り、霊力が集まってゆくのを感じる。


「「はぁぁぁあ!!」」

「あらあら、元気のいい子供ねぇ」

「「ぁぁぁあっっ!!」」

「あ、吉田さん。迷惑かけて、すいません」

「「るぁぁぁぁぁぁああ!!」」

「あら、晴ちゃんのお友達?」

「え、ああ……まあ……あはははは。ちょっと!! ちょっと! 二人共、早くこっちに来てよ」


 詠唱を始めようとした刹那、土御門は、顔を紅色に染めて手招きをしている。それに、さっきの女は障壁を通り抜けた。ここの奴らはやはり、奇術を操るのか。


 取り敢えずは、従うのが吉だろ。構えを止め、慎重に障壁があった場所に足を運んだ。


 足から先に──ッて!!


「お、おい!? 今、何かに挟まれたぞ!! な、何なんだクソッ!!」

「何って……。ドアが時間で閉まったんですよ。貴方達は本当、何者なんですか?」


 はあはあ……。危うく脚をもがれる所だったぜ。


「って、次はこの小さい箱に俺達を隔離する気か!」

「いや……あの、エレベーターであがらないと九階なので」


 土御門は、白眼視をしてくる。さては、順調に事が運んでいる事を感じ嘲笑っているんだ。

 恐ろしい女だ。だがな、俺が騙された振りをしていたと気がついた時。土御門、お前は驚愕した表情を余儀なくされるんだ。


「クックック……」

「さ、さては、あるじ様。何かいい作戦があるのですな? 流石でありまする」


 ルトは、短い尻尾を左右に動かし、俺の功績わ讃えてくれている。


「早くー、行きますよ」

「おーすまんすまん」


 小さい箱に入り、土御門が術を使うのを俺は見た。壁に触れると、淡く光を放つ。呪文を唱えずに、時間にして数秒足らずで扱うとは大した者。簡易的な呪術だとしても、年端のゆかぬ女性が扱うとなれば話が変わってくる。

 呪術で用いる呪文は、欠かせない詩がありそれ以外を省略し、初めて時間を短縮できるのだ。即ち、経験がものを言わす。

 しかも、光が放たれたと同時に、体には微かだが重さを感じる。上から押さえ込まれる嫌な感じだ。胸がムカムカすると言うかなんというか、馬に跨ったまま下を向いていた時のような……。


「あ、あの。何か付いていますか? ジロジロ見て。なゆたさん」

「いや、何でもない。なんか、具合が……ウップ」

「あ、あるじ様……。気持ちが悪ッ……ウップ」

「えーぇ!? まさかの、エレベーターで乗り物酔いですか!!」


 ハアハアハアハア……。くっそ、足に力が入らない。土御門を完璧に、嘗めきっていた。しかも、さっきまで下に居たのに、小さい箱に入った瞬間、一瞬の内に空の途中に──。

 俺ですら使えない、いや俺どころか安倍晴明ですら使えない呪術を使うのか。


「顔色悪いですが、もう少し我慢してください。突き当たりが、私の家なので」


 今、変に歯向かうのは分が悪いか。

 先導をゆく土御門を、蹌踉めきながら跡をつける。

 硬い物を踏み付ける感覚と、硬いものを叩いた音が静かに響く。


 突き当たりに到着するなり「ちょっと待っててください」と、言い残し扉の向こうに土御門は、姿を消した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ