表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半妖の陰陽師と妖兎は、平成の地でアニオタ探偵となる  作者: 夢魔
半妖と妖兎、女子高生と出逢う
2/16

01

「──う、うぅ……」


 外傷による痛みは無い……。頬や、腹から感じる冷たさ、背中で感じる日の熱さ。どうやら、うつ伏せで気を失っていたのか。

 オマケに頭痛はするし吐き気も止まらない。異様に感じる倦怠感で、瞼を持ち上げる事すら体が拒む。確か、赤鬼せっきの仕掛けた呪術に呑まれて──呑まれ……駄目だ、そこからの記憶が、無い。

 だが、まあ、そうか……。俺達は完膚無きまで負けたんだな。


「お、おい。きみ、きみッ!!」


 聞いた事の無い声だ。ただ一つ分かるのは、俺を憂いてくれる優しき声であり、正義心に満ちた声。半妖である俺に、警戒もせずに声をかける奴が居るなんて珍しいもんだ。


「す、すまん。スグにこの場を立ち去るゆえ、安心してくれ」


 重たい瞼を無理矢理に持ち上げ、光を取り込んだ。眩しく、ボヤけ淀む視界の中で、危惧してくれた御仁を捉え驚愕をした。

 上半身を、起こすと歳のいった男性とまだ若い青年が見つめている。正直、珍奇な者を見る目で見られるのは慣れない。が、今回は俺も相手側を珍奇な目で見ざるを得なかった。


「立ち去るって、君ねぇ……倒れていたんだよ? 病院に歩いて行けるかい?」


 青い衣装、胸元には変わった彫刻。何処かの貴族か? の、割には堅苦しさを感じるが、威厳足るモノを感じない。


「酒で酔ってたんですかね?」

「うーむ、少し確認してみようか」


 二人は、何やら小声で話している。俺を半妖だと気が付き蔑視しているのだろうか。

 そーいえば、此処はどこの神社なんだ。辺りを見渡すと、見た事も無い神社の敷地内だと言うのが分かり、やはり。と、赤鬼の呪術により飛ばされた事は、理解ができた。

 だが……。


「すまない。心配をかけたな。所でお聞きしたいのだが、武蔵国府むさしこくふに行きたいのだが──何処いずこにいけばよい?」


 青い服を着た男性二人は、眉間にシワを寄せしかめっ面を浮かべた。


「武蔵国府って……。武蔵野市とかですかね?」

「いや、それなら武蔵野市とか言うだろう──」

「武蔵野市? 違う。俺が戻りたいのは、帰りたいのは武蔵国府だ」


 否定をすると、より一層、驚いた表情をしている。

 二人は、何を話しているんだ。全くもって理解し難い。駄目だ、このままじゃ埒が明かないな。

 早く、策略を練り直し、赤鬼を討伐しなければ。


「すまない。あとは、自分で何とかしよう」


 立ち上がり、式服に付いた汚れを払う。

 社を使わせて貰ったお礼も兼ねて、神へ御礼をし二人にも頭を下げた。


「では、この辺で。ルト、行くぞ」


 賽銭箱の、後ろから見慣れた長く白い耳が覗く。

 ピクピクと動かすのは、声を聞き届けた合図。

 それから、数秒とかからず小さい顔が、強ばった表情で現れた。


「ここ、この度は、は、妾の、ああ、あるじ様を、おお救い頂きありありあり、がとうございま──ギャう」

「おい、大丈夫かよ。勢い良く頭下げて、賽銭箱に頭ぶつけてどーすんだよ」

「キュウッ……」


 極度の人見知り、治らないものかねぇ。

 ルトは、額を擦り、耳を垂らし顔を赤らめ恥ずかしげにしている。


「ハハハッ。大丈夫かい、お嬢ちゃん。それにしても、二人共良く出来た衣装だねぇ」

「まあ、此処はメイド喫茶とかあるぐらいですしね。コスプレをする人も珍しくないですよ」


 なんだ? メイドキッサ? コスプレ? 聞いたこともない言葉だ。


「すいませんが、ココの地名を教えて頂けませんでしょうか」


 二人は、顔色を互いに伺い、またもや不思議そうな表情を浮かべる。


「此処は、東京都にある秋葉原だよ? 君は此処に自ら来たんじゃないのかい?」

「トウキョウ? アキハバラ?」


おいおい、どうなってやがる。思わず、顎を指で撫でつけた。

聞いたこともない言葉に、思考は追いつかない。焦りにも似た不安感は募り、俺の脳裏にはあの鬼の形相が思い浮かぶ。


「カタコト? 外国の方なんでしょうかね。見た目は、アジア系ですが……」

「赤鬼は、赤鬼はどーなった!?」

「赤鬼? 記憶が混乱しているのか……あるいは、グループ名だとか……。吉田さん、もしかしたら事件かもしれませんよ」


 二人は、息ピッタリに頷いてから黒い塊に向けて話をし始めた。


『──こちら、神明神社で事件の可能性』

『かしこまりました。至急、応援を』


 黒い塊から、声が? 式神の類か? だが、こんなもの見たことがない。

 この二人は、神社で会ったことも考えると、名高い陰陽師なのだろうか。だが、今は話をしている暇はない。早く武蔵国府に帰らなければ。


「ルト、霧隠れだ」

「か、かしこまりました! あるじ様ッ」


 白いモヤが、ルトと俺を包んだ。ルトは、隠形おんぎょうに長けている。良くも悪くも、人見知りが長所となっているわけだが、些か人と接しなさ過ぎるのがたまに傷だ。


「あ、あれ? 二人は、何処へ消えた?」

「ハハハッ、何だよ。まさか、神様を見ていたとか? あるいは、神隠しとか」

「そんな訳、ある訳ないじゃないですかっ」


 一体何がどーなってやがるんだ。此処は日本じゃないのか?

 見たことも無い建物・物凄い速さで移動する箱・喋る建物。だが、妖気は感じない。人に関しちゃ、奇抜な服装に、見たことも無い髪色をしている。

 俺は、俺は一体、何処に来てしまったんだ。


「──のっ。あのっ、すいません! 道を退いて貰えませんかっ??」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ