Trust
闇に囚われた者は 許されないのだろうか
もう二度と蒼い空を 仰げないのだろうか
終わらぬ闇の帳が 今日もまた
今日もまた 終わらぬ 黒いカーテンをくぐり
君は何処へ行くのだろう
そして誰に 許しを請うのだろう?
今は暗き深い 闇の中
until the midnight
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「……さん!……さん!」
「ん…?」
誰かの呼ぶ声が聞こえる。
「起きてください!にいさん!」
「なんだ、フィーメルか。おはよう」
「おはようございます。
…なんだじゃありません。もう皆さん支度を始めていますよ?」
「頼む、あと五分くらい寝かせてくれ」
「ああっ!また寝ようとしてる!
だ、ダメですよ!今日は、記念すべき日なんですからね!」
今うるさく捲し立てているのは妹のフィーメル。精霊術師だ。
そして眠い目を擦っているのが現段階では剣士である俺。
現段階では、と言うのはこの先の試練に打ち勝ち、
聖剣を手に入れることで正式に勇者へとクラスアップするのだという。
それから同行する事になった、魔術師のロジャーと槍使いのプルミエール。
この二人は流れの冒険者ではあるが、確かな腕を持っている。
――俺達四人は国王から直々に魔王討伐の勅命を受け、晴れて出立の日を迎えていた。
***
「トドメだっ!」
術の補助を受けての、剣と槍でのコンビネーション攻撃。
完璧に決まった。魔物は確認するまでもなく両断、息絶えていた。
「ふう、この程度余裕だったな!」
「さいっこ~だったよ~皆~」「…造作もない事」「皆さんお疲れ様でした」
旅を開始して二ヶ月ほどが経過しただろうか。
俺達パーティーはこれといったトラブルもなく進んでいる。
ただ一つ、心配事があるとすれば…
「にいさん!ほら、寝グセがついていますよ!
もう、私が居ないとダメダメなんですから!」
フィーメルの事だ。
旅への同行は絶対にさせたくなかったのだが、妹は無理を通してついてきた。
危険だと言ってもまったく聞いてくれない。本当に頑固者だ。
「危ないと思ったら真っ先に逃げろ。俺達の事は構わなくていい」
「またですか。にいさんは本当に心配性なんですから。
何度も言っていますけど、
自分の身くらいは守れますのでご心配なく、ですよ」
彼女は口に手を当ててクスクスと笑う。
確かに、この遣り取りは何度目になるだろう。
まあそれほどに心配だという事でもあるのだが。
「剣士ちゃんの不安もわかるけどね~
あたし達のコト、もうちょっと信頼してくれてもいいんじゃないの~?」
「同意。…我々が居ります故、そうそう大事にはなりますまいよ」
二人がスッと間に割って入ってきた。
確かに、短い間ではあるがこの二人を近くで見てきた。
その実力は思っていた以上のものだ。
「そうだな。
すまない、少々弱気になりすぎていたかもしれないな」
見透かされていたという事か。
俺は頭を掻きながらニコっと笑って答えた。